私、気合い部分を担当しすぎていたんですよ
──新曲「iD」はメンバー全員で作詞されたそうですが、mayuさん自身はどんなテーマを意識して歌詞を書いたんでしょう?
mayu:私の中では、「ゲームがまた始まった」っていう感覚がすごく強かったんです。前の記憶を持ったまま、もう一度ゲームのステージが始まったみたいな。サウンドの感じも、すごくクールというか、冷たくて快適な印象があったので、ゲームっぽいワードをいろいろ集めたりもしました。
──ゲームのワードは、たとえばどんなものを集めていたんですか?
mayu:たとえば「コンティニュー」とか、そういうゲームの中でよく使われる言葉ってあるじゃないですか。プレイヤーが使うような独特な用語を拾って、韻を踏めないかな〜とか、それが実際に歌詞で使われたかというと全然使われてないんですけど(笑)。でも、私の中ではゲームがまた始まるというイメージがずっとあって、それをもとに考えていました。
──mayuさんの書いた歌詞の中で、使われている部分はどのあたりですか?
mayu:<We still alive 何を見せる? はじめようNEW GAME>っていうフレーズですね。
──そう考えると、mikinaさんの<画面の上に正解はない>っていう歌詞も、ゲームと紐づくようにも感じられますね。
mayu:たしかに(笑)!
──他のメンバーの歌詞と組み合わさって、ひとつの曲として完成した音源を受け取ったとき、どう感じましたか?
mayu:「パンチラインばっかじゃん!」「誰がどこ書いたの!?」ってなりました。ExWHYZのメンバーって、わりと飄々としているというか、あまり泥臭い部分とか見せるタイプじゃないと思うんです。そんなメンバーたちが、<まだ倒れるまで 踊れてないでしょう?>みたいな言葉を書いていたのを見て、誰が書いたんだろう、って(笑)。
──mikinaさんが書いたパートですね。<生きて来た濃度が違う>っていうラインもめちゃめちゃ気合いが入っていますよね。
mayu:うん、そう。みんなが、「iD」っていう曲に向けて、めちゃめちゃ気合を入れて全力で書いているのが伝わってきましたね。

──いつもは、どちらかというと気合担当はmayuさんっていうイメージありますよね。
mayu:私、気合い部分を担当しすぎていたんですよ(笑)。もちろん、それ自体は大事にしている部分なんですけど、それが自分ばっかりになってしまうのも違うよなって。だから最近は、自分の気合いを入れるポイントを限定的にしているんです。今までは、全部に対して「がんばらなきゃ」って思っていたし、正直、それができるならそれがベストだと思っていて。だから、「ほどほどでいいよ」とか「無理しなくていいよ」っていう言葉は正直全然ピンとこなくて。そんなわけないじゃん、頑張れるなら頑張った方がいいでしょって。今でも基本的にはそう思っているタイプなんですけど、現実の自分に、全部をがんばれるほどの体力がないっていう自覚もあって。だから今は、ここだけは頑張るっていうところを明確に決めて、そこに集中する精度を高めていて。だからライブや歌ってる時間はすごく生き生きしているけど、それ以外の時間はもう……泣いています(笑)。
──今までは全部に全力を注いでいたけど、力を集中して入れるポイントがわかったと。
mayu:今は、「ここだけはこだわる」っていう部分はすごくこだわって、それ以外は人に任せるとか、そういう姿勢になりました。昔は「わからない」って言うことがすごく怖かったんですよ。「自分で考えてないと思われるかも」とか、「その程度の人間だと思われるんじゃないか」とか。だから、聞けば済むことも聞けなかった。周りの人たちが優しいっていうのもあると思うんですけど、いまは「わからないです、それってどういう意味ですか?」って素直に聞けるようになりました。ライブがすごく好きだし、それをもっとよくしていきたいと強く思っているから、PAさんに聞きに行ったり、照明さんと話してみたり。純粋に「よくするため」の質問ができるようになったのが、すごく大きな変化ですね。
──「iD」のMVはフリースタイルで撮影されたそうですが、mayuさんはどんなことを考えながら撮影に臨んだんでしょうか?
mayu:「iD」のMVの構想が届いた時、ひとつの部屋の中で完結するビデオになると聞いて、自分の中ですごくしっくりくるものがあって。私は普段から、自分の部屋でひとりでいることが多くて、悩んだり考え込んだりしていることが本当に多いんです。自分のことを探っているし、変わりたいって気持ちもすごく強く持っていて。そういう自分自身の感覚や思いを、このMVに落とし込んでみようと思ったんです。なので、このMVでは、誰かに向けて何かを見せようとか、カメラにかっこよく映ろうみたいな意識はほとんど持たなくて。他のメンバーが、かっこよさは表現してくれるだろうと思ったので、私は壁をただ見つめるとか、そこにあるものを使って、自分の反骨精神をどうやってにじませようかってことを考えていましたね。
──以前のインタビューでも、活動休止期間中の家でのエピソードを話してくれましたよね。部屋とmayuさんの関係性って、すごく繋がっている感じはすごくわかります。
mayu:私はけっこう部屋の中の人なんですよ。自分の部屋の中で起きる葛藤だったり、覚悟決めてやるぞ!ってなっている瞬間だったり、心がぐちゃぐちゃしている状態だったり。そういう自分の内側を表現しようって。セットはすごくかっこよく組まれていたし、カメラマンさんもかっこよく撮ってくれるだろうし、ヘアメイクもスタイリングも、部屋セットの雰囲気に合わせてすごく綺麗に仕上げてくれたんです。かっこいい部分はみんながやってくれると思えたから、私は私としてやろうって思えたから、すごく楽しくできました。
──それは、メンバーやスタッフへの信頼があってこそできることですね。
mayu:そうだと思います。私は私でいいやって思えているのが、すごく大きいかもしれない。このかっこいいMVの中で、どうやって自分をかっこよく見せればいいんだろうって昔だったら考えていたと思うんですよ。こういう自分が求められているんじゃないかって。でも今は、そういう部分はみんながやってくれるから、私は自分のままでいいやって。私はそんなにかっこいい人間ではないから、泥臭くやろうって。
