BACK-ONのKENJI03が、Hi-yunkとしてソロ活動をスタート──盟友、IKEとともに作り上げた、別れと再出発のうた
Hi-yunkはなぜ、IKEと共に楽曲を作ることを選んだのか。ロックバンド、BACK-ONのフロントマン、KENJI03のソロ名義でのプロジェクト、Hi-yunk。5月発売予定のアルバムからの先行配信シングルの第1弾としてリリースされたのが、盟友IKEとともに作り上げた楽曲「Good Bye Forever feat.IKE」だ。今回OTOTOYでは、Hi-yunkにインタヴューを行い、ふたりの出会いの話や、楽曲の制作秘話について話を訊いた。記事の後半には、彼が影響を受けたカルチャーの話もたっぷりとお届けします。
Hi-yunk、盟友、IKEとともに作り上げた、別れと再出発のうた
INTERVIEW : Hi-yunk
BACK-ON のヴォーカル・ギター、作詞作曲編曲を務めるKENJI03が、Hi-yunkとしてソロ・プロジェクトをスタートさせた。これまでも著名アーティストへの楽曲提供、プロデュースのみならず、CM曲、アニメや特撮ドラマのタイアップソング等々、数えきれないほどの音楽を世に送り出してきた彼が、バンド活動と並行してソロ・アーティストとして今鳴らしたい音とはどんなものなのか?5月発売予定の1stアルバムからの先行配信シングル第1弾として、盟友IKEをゲストボーカルに迎えて制作された「Good Bye Forever feat.IKE」からは、シンプルにありのままの自分を表現しようという意思が伝わってきた。今回のインタビューでは、IKEとの関係や楽曲制作の経緯などソロ活動について訊くと共に、後半ではアーティスト・Hi-yunkを形成したカルチャー、特に海外のビッグマッチにまで足を伸ばすほどの大ファンとして知られる、プロレスが自らに与えた影響について語ってもらった。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 宇佐美亮
僕もソロとしてのスタートを切るなら彼とやりたかった
──今回、ソロアーティストHi-yunk名義で初めてリリースとなりますが、このプロジェクトはどんなきっかけで始まったのでしょうか。
Hi-yunk:前々からソロ活動をやってみたいという願望はあったんですけど、なかなか自分も思いっきり踏み込めずにいたんです。そんな中で、BACK-ONが4人から2人体制になって(2017年)、今までのサウンドに加えて新しいレールを作って、発信していくものは全部BACK-ONに落とし込もうと思っていたんですけど、去年ぐらいから、自分が音楽を作る振り幅の中で「ちゃんと棲み分けしなきゃな」っていう考えになってきたんです。BACK-ONのレールの上に乗せた自分が思うサウンド感と、楽曲提供とかプロデュース業での自分の作り方っていうのもある意味で棲み分けですし。それと、あとは自分が自分の声を使っていろいろやってみたい音楽を今回のソロで発信していきたいなっていう思いで、去年ぐらいからスタートしました。
──BACK-ONとしての曲はもちろん、常に他のアーティストへの楽曲提供もされていて、本当に多作ですよね。
Hi-yunk:そう言っていただくとありがたいですね。自分には7歳離れた兄がいるので、その影響もあって物心ついた子どもの頃から、テレビから流れてくるJ-POPのヒット曲とか、流行っていた洋楽とか、アニメの主題歌とか、いろんな音楽を知らないうちに耳にしていたんです。そういう音楽は共通してサビがキャッチーだったり、イントロがキャッチーだったりするので、楽曲提供をする上で子供の頃に聴いたそういう音楽の影響を発揮できているのかなって思います。
──最近は、WACK所属アーティストへの楽曲提供が目立ちますけど、都内某所の「COTTON CANDY STORY」(作詞作曲編曲)なんかを聴くと、ここまでキャッチーでポップな曲はBACK-ONではやらないだろうなって。
Hi-yunk:そうですね。さっきの話にも繋がりますけど、子供の頃に聴いていたアニメのオープニング曲、例えば『ちびまる子ちゃん』の曲のクレジットをよく見たら大瀧詠一さんが作っていたりするのを見てると、「自分のキャラクターだからこれをやる」っていうんじゃなくて、単純に自分の中にその音があるんだったら、それを楽しんで昇華した方が、結果的に自分もまたワンランク成長できるんじゃないかと思うんです。その中の一環として、WACKのアイドルもやらせてもらってる感じですね。
──そうしたご自分の中にある様々な音楽要素の中から、ソロ第1弾リリースとなるのが「Good Bye Forever feat.IKE」です。IKEさんとは同い年とのことですが、もともとどうやって出会ったんですか?
Hi-yunk:彼が前にやっていたバンドのデビュー前に、渋谷のライブハウスで対バンしたのがきっかけでした。当時僕らの方が先にメジャーデビューしていて、彼らはまだインディーズだったんですけど、最初は自分も、同い年で同じボーカリストなんでちょっとライバル視していたというか、「俺らの方が上だぞ」みたいにメラメラな感じで、向こうは向こうで「どんなもんじゃい!」みたいな感じで、あんまり第一印象は良くなかったんですよ(笑)。でもそれから何年かして彼らのメジャーデビューが決まって一発目の曲を聞いた瞬間に、素直に「かっこいいな」って思ったんです。そこから僕らのツアーにも呼んで出てくれたりして交流がまた始まって、そのときはもう単純にお互いリスペクトし合えるような、すごく良い関係になったんです。そこからは表立った交流はないんですけど、じつはプライベートで飲み行ったりとかもしていて、気心が知れた仲間だし、相談し合ったりとかする関係だったんですよね。そこから彼もいろいろあって、1人で再スタートするっていう話を聞いていたので、このタイミングで何か一緒にやりたいなっていう気持ちで連絡したら快くOKしてくれて、この曲を作ることになったわけです。
──IKEさんは1人になってから、これまで音楽活動はしていなかったですよね。
Hi-yunk:ちょうど彼が前のバンドを離れた直後に会ってお茶したんですけど、その当時は音楽からも離れるみたいなことを言っていて。僕としてはやっぱり彼のボーカルはすごくかっこいいからもったいないし、続けて欲しいなという思いもあったんです。だから少しでも後押しするきっかけを僕が作れるなら、何かやりたいなと思っていたのもあって、今回お誘いしたというか。彼もいろんなアーティストからリスペクトされてるし、いろいろフィーチャリングの話とかも来たみたいで、よかったなっていう感じですね。僕もソロとしてのスタートを切るなら彼とやりたかったので、お互いにこの楽曲にいろんな思いを込めて、いいスタートを切れたらいいなって思いながら作りました。
──曲自体は、以前からデモがあったそうですね。
Hi-yunk:そうなんです。デモ自体はもう2年ぐらい前に、「とりあえずノリで作ろうよ」っていう話になって、一緒に作った曲がこれなんです。今でも印象に残ってるんですけど、特にすごく話し合って作ったわけじゃなくて、単純にギターを鳴らして、トラックができて、その上から一緒にメロディーを重ねて作ったんですよ。だから別に何のトピックもなかったんですけど、IKEの口からそのときに出たのが〈Good Bye Forever 悲しみはきっと通り過ぎていく〉っていう歌い出しの部分で。その1フレーズだけがバコンッて、言ってみればフリースタイルな感じで出てきたんです。そこから2年間、この曲は眠っていたんですけど、僕の中ではずっとメロディーが頭に残っていて「いつかこれやりたいな」っていう気持ちもあって。そんな中、去年の6月に僕の中学時代の友人が癌で亡くなってしまったんです。それで、友人への思いを何か残したいなと思ったときにこの曲が浮かんだんです。それをIKEに「自分はこういう思いがあるから一緒に作ってくれないか」って伝えたら、IKEは彼なりの〈Good Bye Forever〉というトピックを作って、始まりはそれぞれ違う思いで書いているかもしれないですけど、最終的にお互いにとっての別れと再出発っていう気持ちを歌詞に込めたんです。
──Hi-yunkさんにとって、古いご友人との別れを歌詞にするのって、気持ちを整理することが必要だったのではないですか。
Hi-yunk:そうですね。やっぱり長い付き合いなので、曲、歌詞をどれだけコンパクトにしてリスナーに届けるかっていう意味で、その辺の言葉選びは悩みました。でも本当にシンプルに、やっぱり人って簡単な言葉が一番伝わるし、やっぱり「ありがとう」「愛してる」とか、そういう言葉が一番伝わるっていうのもわかっていたので、なるべくシンプルにシンプルにっていうところで、最終的にこういう歌詞になりました。