nonocが「モノローグ」で綴る、夢を追いかける日々──海外公演を経て成長した、「イマ」を語る

アニソンシーンの枠を超えて活躍するシンガー、nonocが東京進出後2作目となる新曲「モノローグ」をリリースした。今作は、fhánaの佐藤純一が作曲・プロデュースを担当。編曲には、TEMPLIMEとしても活躍するKBSNK、ベースにクレナズムのまこと、ギターにYusho Sunagawaが参加し、エレクトロとオルタナティヴ・ロックが融合した疾走感溢れるポップ・チューンに仕上がっている。日本のみならず、インドやカナダでのライヴを開催し、さらに成長を続けるnonocに話を訊いた。
東京進出後、2作目になるシングル
INTERVIEW : nonoc

2024年2月より、 fhánaの中心メンバーであり、作編曲家・音楽プロデューサーとしても幅広く活動する、佐藤純一が設立した事務所「NEW WORLD LINE」へ、数多くのアニメ主題歌などを担当してきたnonocが加わった事は記憶に新しい。そんな彼女が移籍後2作目となる新曲「モノローグ」をリリースした。本楽曲は、昨年11月のワンマンライブで初披露され、その制作秘話から会場を驚かせたが、前作「ドアの向こう」に引き続き、約半年ぶりのインタヴューという事で、楽曲制作のみならず、この半年間での活動も振り返り、改めて急成長を遂げるアーティスト・nonocを実感してほしい。
インタヴュー&文 : 前田勇介
とりとめもない独り言も愛してほしい
──半年ぶりの新曲「モノローグ」についてのインタヴューですが、やはりこの曲と言えば、まずは昨年11月30日に行われたワンマンライブ「nonoc 5th Anniversary SPECIAL LIVE ”N”ew Phase」の話題は欠かせないと思います。改めて、どんな想いが込められた楽曲になるのでしょうか?
nonoc:モノローグという言葉自体がそうなんですけど、独り言というか"つぶやき”のように、”日記”みたいにちゃんとした文章でもなくて、毎日の暮らしの中で積み重なってきた気持ち、みたいなものがイメージの中心にあります。
──前述のワンマンライブは私も拝見しておりまして、あの場で初披露されましたけど、ライブ当日の朝になんとか完成して、ステージ上でも歌詞ノート片手に歌われてた姿がすごい印象的で、やっぱりサプライズ的に披露する予定で制作されたのでしょうか?
nonoc:そうですね。もちろんそのつもりで、だからこそ制作秘話って聞かれると「ヤバい!ライブに間に合わせなきゃ」みたいな焦りの感情ばかり思い出してしまうんですけど(笑)。
「nonoc 5th Anniversary SPECIAL LIVE ”N”ew Phase」レポート
──ある意味では、あの形での「モノローグ」を聞けたのは非常に有意義だったというか、こうして改めてリリースされた「モノローグ」と聴き比べた時に、いい意味で個人的にはかなり印象が変わったように感じました。
nonoc:その点でいうと実は私もそうでして、この曲を作り上げてく最中は、少し物悲しいイメージもあったんですけど、編曲を経てかなり爽やかで前向きな印象が強くなったように感じています。

──今回も前作に引き続き、作詞はnonocさん、作曲は佐藤さんが担当されていますが、編曲にKBSNKさんも加わっているのが、かなりその辺りの鍵を握っていそうな気がします。
佐藤純一(以下:佐藤): KBSNKさんはLimer(ライマー)というバンドをやっていて、一方でTEMPLIME名義でトラックメイカーとしても活躍されていて、前作の「ドアの向こう」が結構バンドサウンドだったので、もうちょっとデジタルっぽいキラキラ感を出したくて。その両方に理解のある人選として、声をかけさせていただいたんです。
nonoc:結局キーは半音上げたんでしたっけ?そういうのもあって少しポジティブな印象になったのかな。歌詞も少しだけ調整しましたけど、ほとんど変えてないんです。でも当初は、最終的にポジティブな歌詞へ持ってくけど、物悲しい印象があったので、モノローグの意味通りな、独り言感、独りぼっち感が強かったんですけど、編曲とかギターとか、もう皆さんの作ったものが合わさったら、かなり晴れやかな感じになりましたね。
──ギターには、Yusho Sunagawaさんが、ベースにはクレナズムのまことさんが加わっていますよね。
佐藤:Yushoさんはfhánaのアルバムにも参加して頂いていて、その時はたまたまインスタグラムで彼の事を見かけて、DMからオファーするっていう流れがあったんです。クレナズムのまことくんも、元々SNSで交流があって、fhánaとクレナズムのツーマンもやりましたし、その流れで加わってもらいましたね。
──「モノローグ」という名前の曲でありながら、nonocさんと佐藤さんの、まさにマンツーマンで作り上げた前作とは違って、色んな仲間が増えているのも印象的ですよね。
佐藤:この曲は本当にライブ前日から当日の朝にかけてギリギリで作ったので、ライブまでに過ごした直近の数ヶ月間が、歌詞や曲に詰め込まれてるんですよね。だから”その時じゃなきゃできない”曲だったし、ドキュメンタリー感があって良かったと思います。そこから実際リリースするまでの間に、色んなプロセスを経ているんですよね。それこそアレンジもそうですけど、今回nonocは絵も描いてみたり。あと面白い話をすると、今回はコーラス録りの時に配信してたりとか(笑)。
nonoc:ありましたね(笑)。ボーカルレコーディングの日に、そのレコーディング終わりにYoutubeの配信も、そのまま同じスタジオでやる予定だったんです。主メロを録り終えて、まだハモリパートがたくさん残ってるな〜……、そのままYoutubeで配信しちゃえ!みたいな(笑)。
──ハモリ配信、めっちゃ気になります(笑)。
nonoc:っていうこぼれ話もあったりで、リアルタイムで作っていった感じが新しかったですね。今回は「あれいいね!これいいね」みたいな感じでやれたのが、楽しかった。「ここ、こういう感じが欲しい」とか言って一緒に作った部分もあったし。ライブを意識して曲が作れるようになってきてるのが、やりやすいです。
──前作「ドアの向こう」も、新しい世界へ飛び出そう!みたいな話でありつつ、自分の心のドアの内側も大切にしよう。みたいなメッセージも込められていたと思うのですが、この曲も「モノローグ」と言いつつ、そこまで内向的でもなかったり、共通したメッセージ性を感じました。
nonoc:確かに、同じ並行世界の時系列違いというか。なんかそういうイメージは持っていて。この曲は「いつか書き上げた リストはまだ 半分も埋まらないな」って歌詞から始まるんですけど、埋めようって思ってるだけまだ良くて。よくある「やりたい事リスト、100個書いてみよう!」みたいなのって、大概は100個も書けないじゃないですか。
意外とやりたいことってそんなに無かったかもしれないけど、やらなきゃいけないことは100個ぐらいある。自分の中から何かを生み出すことってすごい苦しかったりする中で、最初に何かを始めた時って、もっと自由だったんじゃないかな?とか、少しずつ自分に向き合えて、今となっては、それはそれで大事だよね。100個とデカいこと言わずに「とりあえず1つだけでも、気づいたら叶っていました」が、実は1番素敵じゃないかと。
──千里の道も一歩から、じゃないですけど、この1が100に繋がっていると信じて進むしかないですからね。
nonoc:あと全然余談なんですけど、1番のサビで「あぁもう大変だな熱が出そう!」って部分があるんですけど、それは本当に「ガチで熱が出てんじゃねえか!」と思いながらライブ前日に書いてますね(笑)。
──その感情から、まさかこんなに爽やかな曲になるとは(笑)。
nonoc:そうなんですよ(笑)。だから本当に編曲が入って、元気なイメージが後からついてきたというか、空元気を元気にしようみたいな曲に仕上がって、曲に引っ張られた部分もありましたね。「あぁもう大変だ!」みたいな独り言も、こうして何かに残してたらすごいポジティブに変換されましたし、だからこそ皆にもそんなとりとめもない独り言も愛してほしいし、この曲がそんなポジティブになれる一助になれたらいいなと思っています。
あとはお気に入りのポイントでいうとサビの終わりに「ゴールはないだろう」って歌ってるんですが、1番とラスサビで全く意味合いが変わってくるのも良いですよね。
──絶望的な意味での「ゴールはない」と、無限の可能性的な意味での「ゴールはない」ですよね。
nonoc:文字としては一緒だけど、違う過程を経ることで反対の意味になるのは、作詞家的にも綺麗に作れたな!と思うし、良い事言ってるじゃんって自分にも刺さってます(笑)。
