fhánaは既に新たな冒険へ走りだしている──意欲作『Beautiful Dreamer』に込めた、これまでとこれから

デビュー10周年というメモリアルな年を、全力で走り続けているfhána。今回新たにリリースされる最新EP『Beautiful Dreamer』には、アドベンチャーゲーム『ONE.』のオープニングテーマ「永遠という光」、そしてエンディングテーマ「Last Pages」を含む全6曲を収録。どの曲もfhánaらしさを存分に感じさせながらも、どこか新しいfhánaを感じさせる素敵な作品に仕上がっている。今回OTOTOYでは、メンバー全員にインタヴューを実施。今作に込めた想いや、楽曲制作の裏側、そしてこれからのfhánaについて語ってもらった。
デビュー10周年イヤーを締めくくる、最新EP
INTERVIEW :fhána
2023年12月20日(水)にfhánaのメジャーデビュー後初となるEP『Beautiful Dreamer』がリリースとなった。fhánaにとって、まさに激動の1年となった2023年を締めくくる1枚として、完全新録の6曲が用意された。本作はタイトルの通り、”夢”と”冬”が大きなテーマとなっており、時に儚く、そしてアグレッシブに、リーダーの佐藤も「音楽的にも手応えあり」と語る意欲作が完成した。サウンド面はもちろん、アジアツアーという新たな挑戦を目前に控えた彼らの決意や覚悟を、今回インタヴューした。fhánaは新たなる冒険の第一歩を、もう踏み出している。
インタヴュー・文:前田勇介
”「fhánaの夢の始まり、そして念願の夢」
──fhánaにとって2023年はまさに激動の1年だったと思いますが、先日の10周年記念のライブを終えて、割とすぐのリリースとなった本作の発売を目前に控えた皆さんの今の心境からお伺いしたいと思います。
佐藤純一(以下:佐藤) : 「いや~、間に合ってよかった」というのが1番素直な感想ですね(笑)。
towana : ホント、よく出来たなって感じ(笑)。
kevin mitsunaga(以下:kevin) : でも、シンプルに自信作になりましたよね。この詳しい話もリーダーからあると思うんですけど、早く聞いてほしいです。
佐藤 : 先に挙げて頂いたライブで初披露した「永遠という光」と「Last Pages」はゲームの主題歌として制作したので、既に公開もされているのでアレなんですが、その他の4曲はライブ後に制作を開始したので、本当に先日完成したばかりの出来立てホヤホヤの曲で、スケジュール的にもかなりタイトでした。
──本作についてですが、事前にリーダーもSNSでおっしゃっていた通り、プリミティブかつ初期衝動的で、ドリームポップっぽいような曲もあったり、めちゃくちゃアグレッシブなサウンドの曲もあったり、これまでにないfhánaを感じられる部分もあり、個人的にはとてもワクワクする1枚となっていました。早速、1曲ずつ詳しい話を伺えたらと思うんですけど、まず自分がお聞きしたいのが、5曲目に収録されている「光舞う冬の日に」についてです。この曲はfhánaの”始まりの歌”でもあると思うんですけど、そもそもこの曲は、どんなイメージとか、どんなインスピレーションを受けて作られた曲なのかな?というのは1番最初に聞いておくべきかと思いまして。
佐藤 : この曲は、もう言ってしまえば、アニメ「CLANNAD ~AFTER STORY~」の18話ですね(笑)。あの、ひまわり畑の「もう我慢しなくていいんだよ」の感動がそのまま、この曲に凝縮されていますよね。fhána結成初期のインタヴューでよく語ってたように、CLANNAD好きという共通点から生まれたバンドなので、その象徴みたいな曲でもあります。
──今回のEPって、キーワードを挙げるとすると、”冬”であったり、あと”夢”っていうのが出てくると思うんですけど、そういう意味では、今おっしゃられてた通り、美少女ゲーム好きというか、CLANNAD好きが集まって、そして今回、恋愛アドベンチャーゲーム『ONE.』の主題歌を担当するみたいな部分で、ある意味ひとつ夢を叶えたみたいな捉え方もできるのかなと思うし。そんなEPにfhánaという”夢”の出発点みたいな曲が収録されてるのも、すごく素敵だなっていう風に個人的には思いまして、曲順的には前後しますけど、この曲について先に伺いました。
佐藤 : 裏事情的な話をすると、まさにそういう風に自分たちを納得させた部分もあるんですよね。「永遠という光」と「Last Pages」はゲームの主題歌なので、もうちょっと手前に完成していましたし、ゲームのオープニング映像とかも既にYouTubeで公開されてて、ありがたいことに評判も良くて、そして10周年ライブが10月7日にあって、初披露した訳なんですけど、とにかく10月7日までは、もうそこに全集中で、新しく曲を作ってる余裕なんて無くて。10周年ライブが終わって、この1ヶ月ぐらいで、一気に残りの4曲を……という中で、ちょっと流石に全曲完全新曲ってのは難しいかなと。
──なるほど。でもただ単に時間がないからという苦し紛れには感じないほど本作のテーマにもすごい合っています。towanaさんとしてもずっと歌ってきた曲を今回改めて新録という事になりましたが、改めて何か感じた事などありましたか?
towana : そうですね……、この曲はもうライブで10年以上歌ってるので、いつものそのままって感じですごくレコーディングもスムーズに終わったんですけど、逆に普段のハンドマイクで歌ってないのがなんか違和感というか、ハンドマイクで歌いたいって感じでしたね(笑)。
──ありがとうございます。では、ここからは順々で、1曲目の「夢」からお話を伺えればと思います。アルバム全体通した自分の感想にもなってしまうんですけど、ひとえに”夢”と言ってもいろんな側面があると思っていて、単純に願望みたいなどこか他人事のようにフワッとした夢っていうのもあると思うし、その一方で「絶対に叶えたい」みたいな、自発的な夢というんですかね、もあると思っていて。この曲に関しては前者というか、まだおぼろげな”夢”というイメージなのかなと感じていますが、いかがでしょうか。
佐藤 : そうですね、まず「なんで今回、Beautiful Dreamerというタイトルになったか?」というのを先にお話しすべきかと思うんですが、経緯としては10周年ライブもやって、ひとつの区切りを終えて、次の新しいビジョンというか、新しい目標みたいな意味で”みんなで共有する夢”が欲しいみたいな所からスタートしました。
──まさしく、fhánaの新たな一面を感じることができました。
佐藤 : この「夢」を作っていて、作詞の林くんと話していたのが「今の世の中、現実世界に現実味がないっていうか、むしろ夢とかファンタジーの中にこそ本当の事があるんじゃないか?」みたいなところから、この曲やEPのテーマに繋がっていくんですよね。ファンタジーだからこそ描けるリアリティみたいなのがあって、現実世界がどんどん窮屈になっていて、すごく制限されて、なかなか現実で、現実を表現しにくいという。ファンタジーの中にこそ、真実があるんじゃないか?みたいな発想ですよね。
──確かに、言われてみると”おぼろげな夢”と”より現実的な夢”を行き来している印象を受けます。あとは単純にポエトリーで始まるっていうインパクトも1曲目としていいのかなと思いました。
佐藤 : この「夢」の元となる曲は、実は新体制になって1発目の京都と渋谷でやった『Looking for the New World Tour 2023』の出囃子が元になっていて。これに歌詞をつけて、ちゃんと曲にしたいなっていうのは当時からぼんやりと思っていたんですよね。ライブの登場で使う曲なので、前半は静かな感じでメンバーが出てきて、ポロポロ弾き始めて、ジャーン!って盛り上がったら、towanaがバーンと出てきて、そのまま本編の1曲目に繋がる、みたいな構成だったんですけど、この静かな部分でポエトリーをやったら、良いものになるんじゃないのかなっていうのは、なんとなくその当時から思っていて、やってみたという感じですかね。
──元々は出囃子だった曲が、このように仕上がってきて、おふたりの印象としてはどうでしたか?
kevin : さっき佐藤さんから話があったように、元々SEとして作ってた曲なんですけど、そのSEの段階で佐藤さんから明確に「こういう音で欲しい」ってリクエストがあって、もう僕としてはライブの最初に入場する時のイメージで作っているので、EPの導入としてもハマっているし、少しシリアスなテーマと、いわゆるドリーミーな、ふわふわした感じのちょうどいいバランスで。
towana : うんうん。確かに。この曲、ライブでやるとなるとちょっと大変かなって思うので、今から練習しておかないと(笑)。
