MUCC、新章の幕開けを告げるのは「愛の唄」──いまのヴィジュアル系シーンへの想いを語る

結成27年目のヴィジュアル系バンド、MUCC。唯一無二の歌詞世界を提示してきたこのベテランバンドは、徳間ジャパンコミュニケーションズより3度目のメジャーデビューすることを発表した。なぜ、このタイミングで再々メジャーデビューを果たすのか。今回はベースのYUKKEに、再々メジャーデビューに至った経緯に加え、移籍後初シングル“愛の唄”、“Violet”の制作背景や世界観が惜しみなく反映されたMVについて、さらには6月9日からスタートするリリースツアー〈MUCC TOUR 2024 Love Together〉への意気込みについて語ってもらった。
3度目のメジャー復活作となる、最新シングル
INTERVIEW : YUKKE(MUCC)
MUCC、3度目のメジャーデビュー。その第一報がSNSに出たのは、エイプリルフールの4月1日の6時9分。その日のうちに正式発表され、メンバーの3人(逹瑯(Vo) 、ミヤ(Gt)、YUKKE(Ba))がそれぞれユーモアを交えたコメントで歓喜を表していた。そんな彼らの新章を告げる第1弾シングル「愛の唄」の2曲は、時代に迎合するどころか、全力で逆走していくような破壊力満点の美学と遊び心が清々しい。“愛の唄”、“Violet”それぞれの対照的なMVを見ても、MUCCが所謂ヴィジュアル系バンドの枠に囚われない自由な精神を持ったバンドであることがわかる。今回のメジャーデビューによって、その個性的な音楽性とメンバーのキャラクターが、改めて多くの人に知られることになるはずだ。結成27年目にして新たなスタート地点に立ったバンドの現在について、YUKKEに語ってもらった。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
ライヴ写真 : 冨田 味我
僕が知ってる“愛の唄”っていう曲でいちばん暗い
――ニューシングル「愛の唄」が徳間ジャパンコミュニケーションズよりリリースされることが発表された際に、YUKKEさんは「盛大にお祝いして下さい!ここから始まるオレ達の新しいSTORY、一緒に最高の景色探しに行こうゼ!」とコメントしていました。3度目のメジャーデビューというのは率直にどのように感じていますか?
YUKKE:前回のメジャーレーベルとの契約が終わってから自分たちで活動していたんですけど、その中でいろんなツアーやリリースもしてきて、やっぱりもう1回メジャーと契約して、また多くの人に聴いてもらいたい、たくさんの人の前に出てみたいなっていう気持ちももちろんありました。あとは徳間ジャパンの方々とも話を進めていく中で、一緒に楽しいことやバカなことができそうな感じがして、「一緒に作っていけたら面白いな」っていう未来を感じたので、またメジャーでやってみることにしました。
――バンドのテンション、モチベーションもかなり上がっている?
YUKKE:そうですね。制作の現場にスタッフの方が来てくれたり、そこでいろんな話やアイディアを語り合ったりすると、自分たちだけでやってるときよりもいろんなアイディアが出てくるので、そこは面白くやれています。

――メジャー、インディーズでメリット、デメリットもやっぱり大きく違うのでしょうか?
YUKKE:最初のメジャーデビューのときは、例えば表現の部分とか、気にすることは多少ある中で、MUCCはずっと、割と自由にやらせてもらってきたんですよ。なので、「メジャーに行くことでこれができなくなった」みたいなことはそんなには感じてないです。むしろ自分たちでは手の届かなかった活動範囲に届くっていうところのメリット、それと先ほども言ったように自分たち以外のアイディアですよね。そういうところでタッグを組めるっていうのが心強いし、個人的にもいろんなことを加速できる気がします。
――メジャー第1弾として、シングル「愛の唄」が発売されますが、表題曲の“愛の唄”はどんなコンセプトで作った曲なんですか?
YUKKE:自分たちの一番の青春時代であった90年代の匂いのするものを作りたいねっていうことだけは、メンバー間で共有していて、各々がそこに向かって作曲に入って行ったんです。その中でリーダーから出てきたのが“愛の唄”なんですけど、メンバー一同、徳間ジャパンの方とかみんなの総意で「この曲でいこう」ということになりました。わかりやすくてみんなで歌えるキャッチーなものでもありだとは思うんですけど、やっぱり少しバンドの体質がひねくれてるところもあるというか(笑)。メジャー第1弾で “愛の唄” っていうタイトルなのにこの曲調っていうのが面白い気もしていて。他のアーティストの“愛の唄”っていう曲はだいたいバラードであったり、めっちゃ爽やかな歌える曲なんですけど、僕が知ってる“愛の唄”っていう曲で一番暗いなって思います(笑)。

――BPMが速い曲が多い世の中で、こういうミディアムテンポで重たいサウンドをシングルでリリースすることはあんまりないですよね。
YUKKE:そうですね。すごく重心の低いサウンドというか、淡々と進んでいくんですけどその中に狂気が見えるという曲なので。むしろこういう曲をメジャー移籍第1弾で出したら面白いなという気持ちはありました。
――歌詞についてはどのような印象をお持ちでしょうか。
YUKKE:歌詞に出てくる言葉が、この曲調から感じるちょっとドロッとした部分をさらに濃密に深く聴こえるような表現になっていて、より曲の持っている色をすごく濃いものにしてくれたと思います。あと、お客さんがこの曲を初聴きしたときの感想を見てみると、「MUCCがさらに大人になった」とか、「色気がある」みたいなことも言われていて。良い感じで大人のドロドロさというか、そういう愛の形が出せたなっていう印象でしたね。
