
全国には、その土地ごとのローカル・シーンがある。大阪、名古屋、福岡などの都市部はもちろん、山口や広島などにも、その土地ならではのシーンが存在している。しかし、関東近県の音楽に目を向けてみるとどうだろう。意外と東京という括りで一括りにされていることが多いのではないだろうか。ものごとはそんなに単純ではない。例えば、柏にはハードコアが根付いていたり、横浜や湘南にもそれぞれヒップ・ホップやバンドのシーンが存在している。東京近郊といっても、場所によってローカルな音楽は息づいているのだ。
今回対談していただいたのは、北埼玉を中心に活動をしている2人である。1人は、群馬県高崎市を拠点に活動している3ピース・バンド、秀吉のギター、ヴォーカル、柿澤秀吉氏。もう1人は、埼玉県熊谷市でレコード・ショップ、モルタルレコードを経営している山崎やすひろ氏だ。対談が行われたのは、東京から鈍行電車で約2時間、高崎のライヴ・ハウス近くの喫茶店で行われた。
北埼玉と群馬の音楽事情、秀吉の新作『くだらないうた』について、存分に話してもらった。
インタビュー & 文 : 西澤裕郎
現ドラマー内田正式加入後の初作品は全7曲入りミニ・アルバム
秀吉 / くだらないうた
前作の1stフル・アルバム『むだい』で、ギター・ロックの枠にとどまらず、幅広いリスナー層から支持を得た秀吉のニュー・ミニ・アルバムが完成。全楽曲の作詞・作曲を手がけたのは、この群馬出身の3ピース・バンドでヴォーカル、ギターを務める柿澤秀吉。『むだい』以降に書き下ろされた楽曲たちは柿澤の世界観が爆発し、これでもか、というぐらいに聴くものに訴えかける力強さがある。ミニ・アルバムながら前作以上に色とりどりのバラエティに富んだ楽曲が並ぶ。疾走感溢れる心地よいビートに乗って、人懐っこいメロディがどこまでも心地良い作品!
【Track List】01. 花かざぐるま / 02. 新しい靴 / 03. 僕の名前 / 04. くだらない話 /05. あお / 06. その声で / 07. 夜のうた
INTERVIEW -柿澤秀吉 × 山崎やすひろ(モルタルレコード) in 高崎-
——秀吉さんと山崎さんは、いつ頃からの付き合いなんですか。
山崎やすひろ(以下山崎) : ちゃんと付き合い出したのは、秀吉が活動し始めてからですね。初めて自主でCDを出したときに、うちのお店でも売って、ツアーでも売って、って感じで一緒にやっていたんです。ツアーを周り終わって帰ってきたときに、何枚CDが売れたかっていう話をしたら、200枚くらい残ってますってことだったので、知り合いの流通会社を紹介するよみたいな感じで、今のレーベルLASTRUMを紹介したんです。
柿澤秀吉(以下柿澤) : 山さんと話して流通してみようってなったんです。
山崎 : 残っている200枚が売れて、ちょっとでもプラスになればいいかなって思って言ったんだけど、それが結構売れて追加プレスまでしたんだよね。
秀吉 : そうですね。
——ホーム・ページのプロフィールを見ると、秀吉は群馬を中心に活動されているとのことですよね。今の群馬の音楽シーンってどういう状況なんですか。
山崎 : 若いバンドがすごく多いですね。例えば、back numberであったり、ちょっとジャンルは違うけどRicoltっていうバンドとか勢いありますね。
秀吉 : その辺が僕と同世代なんですよ。

秀吉の音楽には埼玉感がある(山崎)
——ちなみに秀吉は群馬で活動をしていますが、出身は埼玉なんですよね。
秀吉 : 生まれも育ちも埼玉です。
——埼玉のどの辺りですか。
秀吉 : 児玉郡美里町っていう、本当に微妙なところなんです。音楽をやるとしたらライヴ・ハウスがあるのが熊谷か高崎なんですよ。そこでどっちに出向くかって話になるんですけど、僕たちは高校の時から高崎のライヴ・ハウスに出ていたので、その流れで今も群馬を拠点にしています。
——北埼玉といえば、映画『SR サイタマノラッパー』の舞台もあの辺ですよね。
山崎 : あれ完全に僕の地元フカヤですよ。監督の入江悠さんは僕の後輩みたいですし。まさにあの映画の感じです。
——でっかいことをしたいっていう願望を持っているけど、田舎でくすぶっているみたいな感じですか。
山崎 : 僕たちがやっているのは、あの映画の続編だと思ってもらえば分かりやすいかもしれないです。ラッパーではないけど、バンドを辞めた先に僕みたいに裏方になった人がいて、芽を出そうと頑張っている後輩がいる。街に音楽を奏でている人がいて、ライヴ・ハウスがある状況っていうのが、少しずつ市民権を得て伝わっていかないと、あの映画のような感じの終わり方をしちゃうと思うんです。本当に今迄は映画の通りだったんですよ。メジャーに行けるなんてこと夢みたいな話で考えたことなかったし、自主でもCDを出せれることなんて考えられなかった時代に僕は音楽をやってきたから。秀吉はちゃんとCDを出したので応援したかったんです。変な話、ワン・チャンスしかないじゃないですか。もう1回CDを出そうってなっても、ストックが500枚もあったら、次のCDを出すのに3年位かかっちゃう。それで流通に乗せたら、世間一般に評価されて、次の作品も作れるっていう流れが出来たんです。その後出してもらったCD『へそのお』凄く大好きで聴いているんですけど、すごい埼玉感が出ているんですよね。
(一同笑)

——埼玉感ですか(笑)?
山崎 : そう。“埼玉のバンド”って独特の空気が流れていて落ち着くんですよ。
秀吉 : それはありがたいですね(笑)。
——秀吉さんは曲作りの際、埼玉っていう土地を意識しますか。
秀吉 : 何回か意識して作ろうとしたことはありますね。
山崎 : でも意識して出せるもんじゃないからね。哀しくも埼玉感が出ちゃったというか(笑)。埼玉といっても、県南の辺りと熊谷の辺りでは全然違うんですよ。北埼玉って、半ば群馬と同じ扱いみたいな感じあるからね。
——北埼玉の人たちは遊びに出るとしたら、どこまで出るんですか。
山崎 : まさに、それが熊谷か高崎なんですよ。
秀吉 : 僕たちの住んでいるところが熊谷と高崎の中間で、多少電車代が高崎のほうが安いし、車も渋滞ないし楽。そういう面で群馬に行っていたんですよ。
この仲間だったら何かできるっていう自信がある(秀吉)
——秀吉さんは、高校の頃から群馬で活動しているということもあって、地元の音楽シーンを盛り上げていきたいという気持ちはありますか。
秀吉 : もちろんありますね。自分たちが育ってきた場所だし、熊谷だったらワンダース、群馬だったらG-FREAK FACTORYとか、先輩バンドがいて、いろいろ教わってきたんです。そこで出会った仲間もいっぱいいるし、この仲間だったら何かできるっていう自信もあるので、盛り上げたい気持ちはありますね。
山崎 : そのバンドの中で、秀吉が先陣を切っていくって感じはありますね。全国のライヴ・ハウスにちゃんと行き渡っているって意味で、群馬代表としても北埼玉代表としても他を引っ張っていく存在であってほしいですね。
秀吉 : ぜひ、やっていきたいですね。
山崎 : それに関してはすごく男らしいよね。だって秀吉の歌を聴いても、そういう感じに思われないと思うんだよね。ちょっとナヨ系かと思ったら芯がある。

——例えば千葉には柏のハードコア・シーンがあったり、地域によって音楽性ってあると思うんですね。さっきも少し話に出ましたけど、埼玉感ってどういうものなんですか。
山崎 : 先輩でもあるLOST IN TIMEとかWONDERS(現codomotona)を聴くと、ここら辺の若い男の子が日常どう考えてるか、内省的な性格がわかると思うんですよ。どこか切なかったり、2人称な感じというか。みんなっていうよりは、僕とあなたの世界観。周りの環境やデカイ世界を歌うっていうより、どこにでもあるような小さな街の話を描いている。
秀吉 : そうですね。それはワンダースやLOST IN TIMEに共通している部分があると思います。
山崎 : 都会じゃないので、みんな同じところで悩んでいたりするんです。電話で連絡がとれなくなると「あいつ落ち込んでいるんじゃないか」とか思ったりする部分だったり、そういう日常の些細な部分が共通してますよね。
秀吉 : 確かにそれはありますね。この間も海北さん(LOST IN TIME)と、北埼玉と群馬には何か通ずるものあるね、って話をしていたんです。
山崎 : どっちも海がないからね。悩んだりしても星を見るしか術がないっていうか(笑)。
——僕も長野県出身なので、その感覚ってすごくわかります(笑)。ちなみに田舎だと、バンドを始める人って不良っぽい人たちが多いイメージがあったんですね。その点、秀吉さんは不良って感じがしないですよね。
秀吉 : 僕が通っていた美里中学は、先輩にワンダースがいたり、S-EXPLODEがいたんですけど、どっちもヤンキーじゃないんですよ(笑)。だから自然とバンドを始めたというか、先輩の影響が大きかったと思いますね。
山崎 : そういう環境があったってことなんだね。
秀吉 : そうですね。
自分たちが辞めるって言い出さなきゃ続けられるんだ(秀吉)
——昨年末、ドラムの濱野(昌浩)さんが脱退されたんですよね。そこから今作『くだらないうた』を作るまでは大変な道のりだったんじゃないですか。
秀吉 : 辞めたいって言われたときは、前のアルバム『むだい』を作っている途中だったので、どうしようかと思いましたね。とりあえずアルバムを作って、ツアーを回りきって、キリのいいところで辞めようって話に落ち着いたんですけど、もしかしたらツアーを回っているうちに「やっぱりやりたい」って言い出すんじゃないかって期待もしていたんです。でも、意思が固かったので脱退という形になりました。そのときはめっちゃ悩んでいて、山さんにも相談したりしていました。
山崎 : でも悩みながらもライヴは入れていたよね。いい意味でも次を入れておかないと、止まっちゃうからね。
秀吉 : そうですね。初めてのフル・アルバムを出して、これからってときだったから絶対に止めたくなかったんです。サポートでも何でもドラムを入れると仮定して、東名阪のツアーを組んだんですよね。ツアーに向けてドラムを探したんだけど全然みつからなくて、(内田)裕士にその話をしたときに「俺はドラム/ヴォーカルだけど、ドラムに専念したらすげえぞ」みたいなことを言っていて。
山崎 : 俺の前ではそんなこと言わないけどね(笑)。
秀吉 : 俺らの前では結構言うんですよ(笑)。でも彼自身のバンドの活動が止まるのは嫌だったから、やってくれとは言わなかったんです。それで探し続けていたんですけど、本当にいい人がいなくて、そしたら裕士から「前のアルバム買ったよ」、「とりあえず曲は覚えているから」って電話がかかってきて、こいつやる気だなって思ったんです(笑)。とりあえず一回スタジオに入ってみるかってなって入ったんですけど、めちゃめちゃ緊張していて全然叩けなくて(笑)「もう一回だけ!」とか言いながら何回かスタジオに入っていたら息があってきて、一緒にやることになったんです。
山崎 : いいね、そのオーディションな感じが(笑)。
秀吉 : ずっとこのメンバーでやっていくんだと思っていたメンバーが辞めてしまって、自分が予想しないようなことも起こるんだって思ったし、それでも自分たちが辞めるって言い出さなきゃ続けられるんだってことも分かったんです。その「また始められるんだ」って感じを出すべきかなってことは意識しましたね。

——続けることって、シンプルに見えて実は一番難しいことですからね。
山崎 : そういう状況になったら、一回時間を空けてみようかみたいになってしまいがちなんですけど、時間が出来たからっていい使い方をする人がいないんですよ。その点秀吉は、時間を空けることなくライヴを決めて、そこからサポートが決まって、いつの間にか彼がメンバーになっていった。さっきの経緯を聞いていたら、自然な流れだったんだなと思って、改めてこの3人でよかったなって思いました。バンド以上に、聴いてくれている人たちがそこに対して一番敏感になると思うんですよ。だから、アーティストが嘘をついてやるってのは嫌なんです。今作は本当にいいものが出来た感じがして、3人全員の頑張りがすごく伝わってくる。1st感みたいなものがすごくあるんだよね。
秀吉 : 確かにそうですね。
山崎 : 逆に1st感がないとCDってダメで、本人たちにとっては2nd、3rdみたいなノリがあっても、お客さんにしてみればこの1枚が出会いかもしれない。今まで聴いてきてくれた人に対しても、これまでとは違う感じで入り込んでもらえないと、最終的に作品として残らないと思うんだよね。昔の曲をやったほうが盛り上がるってなったらイヤだよね。でも、このアルバムには1stに負けない力のある曲が入っている。
秀吉 : ありがとうございます。
——秀吉さんもこのアルバムに1st感を感じますか。
秀吉 : メンバーが変わって、ドラムが変わったことに対する不安がすごくあったんですけど、裕士はヴォーカルをやっていたってこともあって、歌よりのドラムだったり、いろんなことが出来たんです。新しいことを始めるって雰囲気はスタジオに入った時点であったので、無理矢理1st感を出そうってことはなく、自然に出てきたんだと思います。
山崎 : 想像していたよりいい形で進んでいったよね。だから1st感はあるんだけど、もう少し膨らんでいい感じになったのかなって。いい意味でつき抜けた感があるというか。
若いやつが新しい音楽を作っていかなきゃいけない(山崎)
——モルタルレコードは今年で10周年を迎えました。店舗での営業を縮小するという発表をして、いまはWEBショップとしても動き始めていますが、そうした動きは秀吉さんも聞いていたんですか。
秀吉 : 前々から冗談まじりに「俺は今年までだから」みたいなことを言っているのは聞いていましたね(笑)。
山崎 : みんなにふっかけないとって意味で最初は言っていたんだよね(笑)。やっぱり、若いやつが作っていかなきゃいけないからさ。おっさんはおっさんで早く引退してもらって趣味の店でもやっていればいい(笑) それに若い子が知らないバンドをどんどん連れてきてくれたほうが、こっちはわくわくするんだよ。今ってすごい名前のバンドがいっぱいいるじゃないですか。秀吉もそうだけど(笑)。

——確かに(笑)。実際に若い人たちが増えている実感はありますか。
山崎 : そうですね。最近のライヴ・ハウスには10代の子たちが増えていますね。そういう意味でも、秀吉にもいい意味で後輩からのプレッシャーがかかってくる。
秀吉 : でもプレッシャーって感じとは違うかな。プレッシャーを感じて自分が焦っちゃうと、このバンドはやばい気がする。それは昔から思っているんで、着実にやりたいですね。
——秀吉の音楽からは、流行に左右されないで自分たちの出来ることをやる、っていう感じが伝わってきます。だから、「今回の作品はどんなアーティストの作品に影響されましたか?」みたいな質問は酷というか答えるのが難しいですよね。
山崎 : そうそう。話は少し変わって今となっては笑い話なんですけど、震災の2日後くらいに秀吉がYouTubeに曲をアップしたんですよ(http://www.youtube.com/watch?v=_7PNggrFFmU)。それを聴いて速攻電話で、「あの曲ってAMEMIYAの『冷やし中華始めました』の曲にどことなく似てない?」ってこっそり訊いたんです(笑)。そしたら「えっ、なんでそんなこと思ったんですか! ? 」って言われて(笑) なんだっけタイトル?
秀吉 : 「うたうことにしました」です(苦笑)。サビの最後とかにそのフレーズを入れているから、冷やし中華の歌みたいだなと自分でも少し心配だったんですけど… 。大丈夫だろうと思っていたら山さんから電話がきたんです(笑)。
山崎 : 電話したあとで聴いてみたら、そんなことやっぱないやって思って、また電話したんだよね(笑) いや、俺も時期が時期だけに勝手に心配になっちゃってさ(笑)。すごくいいタイミングでいい曲が出来たのに、変なこといってごめんね(笑)。曲もいいけど、あの瞬発力もよかったよね。あの時って、その瞬発力がプラスにもマイナスにもどっちにも転がっちゃう可能性があった。みんなすごく機敏になっちゃっていて、あの曲に関して俺も客観的に聴けなくなっちゃったんだよね。だから、そういうふうに冗談っぽく捉えてくれるならそれはそれでいいよねって電話で話してたよね。
——そんな状況下で、すぐ行動に移そうって思ったのは勇気のいることだったんじゃないですか。
秀吉 : 僕としては、そんなに瞬発力があったイメージはないですね。震災の次の日にライヴの予定が入っていたんですけど中止になってしまって、1、2日家の中でテレビをつけていたら、どんどん気持ちが落ちてきてしまったんです。みんなそういう感じだったと思うんですけど、そんな状況で歌ったらどうなんだってことは考えました。twitterとかを見ると、曲をあげていることに対して賞賛している人もいれば、絶対そんなの許さないって人もいたから。被災地の人に音楽が必要な時期じゃないかもしれないとも思ったし、どうしようかってことはすごく悩みました。
山崎 : その歌って、被災地の人たちだけではなくて、震災後の映像を見続けて落ち込んでしまったり、生きる気持ちが失せてしまった人とかにも向けられていると思ったんだよね。
秀吉 : 実際、自分も落ち込みすぎていましたからね。軽い鬱になるんじゃないかってくらいのときに、もしかしたら自分だけでなくみんなそうなんじゃないかって思ったんです。その息のつまったものをプスーって出来るくらいは音楽に出来るんじゃないかって作ってYouTubeにあげたんです。その曲を聴いてくれて、「ちょっと気が楽になりました」って言ってくれる人がいたから、やってよかったなと思うけど、実際やってよかったのかはちょっとわからないです。
山崎 : よかったと思うけどね。やったことに対してよくないことはなからね。

——あの時期はアーティスト側も慎重になりがちでしたからね。
山崎 : 会社が決めたというより、本人がどうにかしなきゃと思ってやったことだから、すごくピュアというか。俺もあの曲を聞いて、ケツを叩かれた想いで、いろいろと考えらるようになったりしたし、あれはすごくよかったですね。メンバーが抜けてってとこから考えたら、秀吉自身本当に男らしくなったよね。
秀吉 : そうかもしれないですね。今までだったら、やろうかどうか悩んだまま、やらなかったんですよ。でも、それがメンバーの脱退と加入を経て、ここでやらなかったら自分も変われないな、後悔するな、と思ったから、やるしかないと言い聞かせて自分でやるようになりました。
何でも新しく始められるって気持ちを出せると思った(秀吉)
——それはメンバーの脱退もそうですし、震災の影響もあるんじゃないですか。
秀吉 : 絶対にあると思いますね。
山崎 : そうだよね。震災があって、これからも音楽をやれる状況でいられるのかって絶対に考えたもんね。それでも音楽をやりたいって思ったり、聴いてくれる人たちを支えてあげられるかもってことを考えられたから、秀吉の音にしても本人にしても奥行きが出てきたんじゃないかな。
——前作『むだい』は「自分の内にあるものを吐き出したアルバム」だったけれど、今作『くだらないうた』は「外に向けた部分が出てきた」と他のインタビューで読んだのですが、なぜ外に向かうようになったのでしょう。
秀吉 : 前作が自分の中のいろんな部分を吐き出すことで共感を得るというか、繋がっていく部分のある作品だったんです。それはそれでやりきった感じがあって、その先をどうしようって考えたときに、ドラムが辞めて絶望くらいの気持ちになったんです。そんなボロボロな状態でも、裕士が入ってバンドを始められるようになって広がった部分があったんです。どんな状況になっても、新しく始められるんだって気持ちを、メンバーが変わったことで出せるんじゃないかと思って、外に向かうことを意識したアルバムになったのかなって思います。
——では最後に一言ずつ。まずは、山崎さんから秀吉に期待することを教えてもらえますか。
山崎 : 秀吉は“歌を届けられる”バンドだと思うから、大きいハコ、小さいハコに限らず、47都道府県を回って多くの人を励まし、希望に導いて欲しいですね。
秀吉 : やってみたいですね。全国をめちゃめちゃ回るライヴ・ツアーとか。
山崎 : 東名阪とかも着実にやりつつ、地道に実現できたらいいよね。だって、会えていない人たちまだまだいっぱいいるもんね。せっかくきっかけをもらったCDなので、聴いてくれている人には更にライヴも見て長く付き合っていってほしいなって思います。バンド活動を続けていくうえで、考えなきゃいけないこともローカルにいると沢山あると思うので、パンクしないでそのままでいてほしいですね。
——では、秀吉さんの抱負をお願いします。
秀吉 : もっといろんな場所でやっていきたいですね。小さな会場も大きな会場も知らない土地も含めて、いろんな場所で歌っていきたいですね。いま住んでいる場所から東京に出る気持ちは特にないので、相変わらずな埼玉感をなくさないでやっていけたらと思います(笑)。もちろん、音楽性とか歌うことの題材とかはどんどん広がってきていると思うんです。それでも1stの頃から変わらない部分はあって、この場所にいればその芯は変わらないだろうから、それを持ちながらもいろんな角度から歌っていきたいですね。これからも地道にやっていければいいなと思います。

ローカル・シーンに根付く音楽
空中ループ / Walk across the universe EP
関西圏で最もネクスト・ブレイクの呼び声高いバンド=空中ループ。鉄壁の布陣で作成されたエポック・メイキングな作品が、遂に登場! メンバーに3人のソング・ライターを擁し、女性も含む重厚なコーラスワークとアレンジメントの完成度の高さは特筆すべき特徴! 全4曲がシングル・カット・クオリティ !ここには、驚愕が、ある。
PLASTIC GIRL IN CLOSET / cocoro
岩手県在住で、先の東日本大震災を経験しながらもOTOTOY東日本震災救済支援コンピレーション『Play for Japan vol.7』に参加したPLASTIC GIRL IN CLOSETがセカンド・アルバムをリリース。『Play for Japan』に提供した「Collage Flowers」を含む全12曲。シューゲイザーのノイズ・アプローチを取り入れつつ、美しく透き通った泣きのメロディーを男女ツイン・ボーカルが歌う、次世代を担う最重要バンド。必聴です。
TWO FOUR / BABY BLUES&BABY GROOVES
日本のセントラルシティー、名古屋ストリート発、Vo.Gt、Ba、Drのスリー・ピース・ジャム・バンド、TWO FOUR。幾多のストリート・セッションから生まれた独自のラップとも語りとも言える歌と、愛嬌のあるミニマルな生音グルーブは全国のアルコール片手のパーティー・ピープル達をシンガロングでピースフルな空気に酔わせている。ブルース、ヒップ・ホップ、カントリー、サーフなどを独自に昇華した彼らのグルーブは必踊の価値あり! LIVE会場限定で販売されていた音源が配信スタート。
INFORMATION
『くだらないうた』リリース ツアー 2011
- 2011/09/03(土) @高崎 Club FLEEZ 〜ツアー初日ワンマン・ライブ〜
- 2011/09/09(金) @さいたま新都心 HEAVEN'S ROCK VJ-3
- 2011/09/17(土) @イオン高崎 インストア・ライブ
- 2011/09/18(日) @長野 J
- 2011/09/19(月・祝) @名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
- 2011/09/23(金・祝) @秋田 LIVE SPOT 2000
- 2011/09/24(土) @八戸 ROXX
- 2011/09/25(日) @仙台 PARK SQUARE
- 2011/09/30(金) @宇都宮 HELLO DOLLY
- 2011/10/01(土) @熊谷 BLUE FOREST
- 2011/10/05(水) @水戸 LIGHT HOUSE
- 2011/10/08(土) @大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
- 2011/10/11(火) @岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
- 2011/10/13(木) @広島 CAVE BE
- 2011/10/15(土) @福岡 SPILAL FACTORY
- 2011/10/22(土) @新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2011/11/18(日) @渋谷 O-WEST 〜ツアーファイナル・ワンマン・ライヴ〜
PROFILE
秀吉
群馬出身の3ピース・ロック・バンド。バンド名はVo./Gt.の柿澤秀吉の本名から。 卓越したメロディー・センスと透明感と柔らかさを併せ持つ歌声、それを支え力強くしなやかに躍動するリズム。時に優しく、時にエモーショナルに、静と動を織り交ぜつつ展開する楽曲は、所謂ギター・ロックと呼ばれる範疇に収まりきらない魅力と可能性が溢れている。2008年11月、デビュー・アルバム『へそのお』をリリース。TOWER RECORDSのレコメンド・アイテム「タワ レコメン」に選出され、全国20カ所のツアーを敢行。大盛況の内に幕を閉じる。2009年に2ndミニ・アルバム『コンサート』をリリース。その後も活発なライヴ活動を続ける。2010年、宮崎あおい主演映画『ソラニン』の挿入歌に大抜擢され、8月には店舗限定シングル『夕の魔法 /歩こう』、そして10月には1stフル・アルバム『むだい』をリリース。2010年末に前ドラマーが脱退。2011年からサポート・ドラマーとして内田裕士を迎えて新作のレコーディングを開始。また「むだいの音楽会」と題した自主企画をスタートさせ、精力的にライヴ活動を行う。 6月にドラマーの内田が正式メンバーとなって、9月から全国ツアーが控えている。
モルタルレコード
埼玉県熊谷市にあるインディーズCD専門ストア。今年の1月に10周年を迎え、熊谷の音楽シーンを文字通り牽引している存在である。店主である山崎やすひろ氏は店舗も運営する傍ら、様々な音楽イベントも企画している。熱い音楽愛と人柄にミュージシャンからの信望も厚い。