多様性とも違った「人間らしさ」を
——そして既発曲の“YOU KNOW ME”を挟んで、“豚HAVE THE POWER”に続きます。歌詞はかなりコミカルですね。
Ryan.B:タイトルは、パティ・スミスの“People Have The Power”という曲のオマージュですね。これは人間に限らず飯は食わないと生きていけないので、「飯を喰らうこと」をテーマに作りました。漫画「刃牙」に出てくる範馬勇次郎的なイメージです。英語っぽく仮歌を入れていたので、そこに肉料理を入れてみましたね。牛角にある「梅とんタン」というメニューを「うめとったん?」という歌詞で入れてみたり、「ほーい転がる石」は「回鍋肉」です。
プー・ルイ:歌詞を見ながら聞くと、いろいろ発見があるんじゃないかな。この曲は元気が出ますね。音楽としては激しいけど、歌詞を見るとハッピーになります。
KINCHAN:聴いたときからライヴでお客さんと一緒に踊っている光景が想像できて、すごく楽しみです。歌詞に料理の名前がいっぱい入っていておもしろいです。
Ryan.B:鬱々となっているときでもご飯を食べると楽しいじゃないですか。飯は食わないといけないので、飯を食うときくらいは明るくいようよというメッセージを込めました。
——7曲目は“リバーサイド・モーテル”です。タイトルは井上陽水の“リバーサイド・ホテル”のオマージュですか?
Ryan.B:そうです! この曲は『JUICYY』のときにはもうあったんですけど、テーマが合わずに収録を見送ったんです。 この曲はかなり大人に向けたメッセージを書いていて、「9割9分嫌われてもキミに刺され」とか、嫌われることへの恐怖心を、エロティックな隠喩も使って描いています。
——そして、次は“スプートニク1号”です。
Ryan.B:この曲とラストに収録されている“人間すぎる”はアルバムのメッセージを伝えることにおいて大事な曲ですね。こどもの頃は、大人になったらもっと精神的にも大人になっていると思っていたんです。でも面倒臭いことは本当に面倒臭いし、ずっと寝ていたいときもある。社会的に「大人」という役割を演じているだけで10代の頃から悩みは変わらないんだなと思ったんです。僕も30歳を超えましたけど、人生の初心者という気持ちはずっと続いていくと思うし、そこに向き合わないといけないなと思っています。
——タイトルの「スプートニク1号」はソ連で打ち上げられた世界初の人工衛星ですね。
Ryan.B:そうです。いまスプートニク1号は宇宙ごみになっているんですね。残骸だけどずっと残っていることが、死んでも作品が残り続ける音楽みたいだなと思ったんです。初心者のまま生きて、最後は宇宙ごみになってもいいから、スプートニク1号のようなグループになっていきたいという願いを込めました。同世代のアーティストでも、1回成功したけど今は苦しんでいる人もいるし、今が全盛期の人もいるんですよ。ひとつのことを愚直にやり続けている人って、長い目で見たときにかっこいいんですよ。自分は焦り過ぎて、その結果誇れるものが作れなかった経験があったので、今は素直な気持ちで生きたいと思い、この曲を作りました。
BAN-BAN:“スプートニク1号”はすごく印象に残っています。歌詞を見る前に初めて曲を聴いたんですけど、なんか涙が出ちゃったんです。内側でモゾモゾしているものが出る感じがしました。
BIBI:私も“スプートニク1号”はすごく好きな曲ですね。私はまだ人生の初心者だし、アイドルの初心者だから「僕は初心者の旅人だから」という歌詞と重ね合わせてしまいます。
——続いては松隈ケンタさんとの共同制作の楽曲“Route91665”です。Ryan.Bさんは実際に生配信で松隈さんと共同制作をしてみていかがでしたか?
Ryan.B:2人のスタイルが自然に絡み合ったなと思いましたね。この日だけの奇跡ではなく、無理せずいつも通りの感覚で作れたのがよかったですね。今年福岡に行ったときにガッツリ屋台で松隈さんと飲んだんですけど、そこでパーソナルな話をしたのが活きたのかもしれないです。
プー・ルイ:実はその噂を聞いていたので、声をかけたところもあります。実はPIGGSが始動するときも、松隈さんから色々アドバイスをもらっていたんです。
Ryan.B:僕はプーちゃんほど松隈さんとの関係性はないし、そもそも同業者なのであまり音楽プロデューサー同士で絡み合うことはないんです。今回隠さずに見せていただいたので刺激をもらいました。
SU-RING:この曲は制作していく段階から見ていたので、メロディーができて歌詞が生まれていく過程が衝撃的でした。2番に「No Give Up ダサくて反吐でたけれど 今じゃ座右の銘だね」という歌詞があるんです。私はこれまでの人生で「諦めないで」と言われたら腹立つタイプだったんですよ。でも自分が憧れていたアイドルになって、諦めないことが1番大事なんだなと思えるようになったんです。だからこの歌詞を歌えるのがすごく嬉しいです。
——タイトルの「91665」はどういう意味なんですか?
METTY:これは「PIGGS」ですね。突然Ryan.Bが「91665」が「PIGGS」に見えるから何かの曲で使いたいって言ってきたんですよ。
Ryan.B:海外の標識みたいな感じです。9だけ反転しているんですけど、他の数字はアルファベットに見立てて読めるかなと。
プー・ルイ:最初全然わからなくて首傾げたけどね(笑)。
——最後の曲“人間すぎる”についてお伺いしたいです。
Ryan.B:僕は悩んでいるときは感情が欠けてるより1つ余ってる感覚になるんです。人間らしすぎる感受性が強まったときに、すごく息苦しくなるんですよ。そういう余計な感情を言い訳にしたくないし、人間らしすぎる部分に目を背けたくないなと思って作りました。それが実は“ピラニア型人造人間”に繋がってきて。皮をかぶってアンドロイドみたいに生きていかないといけない世の中で、多様性とも違った「人間らしさ」を、PIGGSでは認めていきたいなと思っています。その部分をしっかり言葉にして、「人間としての自我」を歌にしました。
——最後の歌詞の「I know続いてく 受け売りのサーカス」にはどういう意味を込めたんですか? Ryan.B:我々はサーカス団として見られていることはあるかもしれないですけど、自分はサーカス団ではなく、人間らしく生きていきたいと思ったんです。でも結局社会は社会なので、ある程度余地を残して終わりました。綺麗に終えたら綺麗ごとになると思っていたんです。変えたいという気持ちはあるけど、簡単には変わらないという気持ちを込めてこれで終わりました。それは全部わかっているということでI knowなんです。
プー・ルイ:この曲は振り付けもすごいんですよ。私最近悩んでいたんですけど、人間すぎたから悩んでいたのかなと思いましたね。ライヴでも披露しはじめたばかりなんですけど、クオリティを上げて自分たちのものにできたときに変化が生まれるんじゃないかと思います。ぜひライヴにきてそういう部分も含めてみてほしいなと思います。

編集 : 西田健,草鹿立
メジャー1stアルバム『RAWPIG』
LIVE SCHEDULE
〈SUCK OF FULL MONTY TOUR〉

10月29日(日) Zepp Haneda
開場15:30 開演 16:30
【詳しいライブ情報はこちら】
https://piggs.tokyo
PIGGSディスコグラフィー
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PROFILE:PIGGS
プー·ルイ、BAN-BAN、SHELLME、KINCHAN、BIBI、SU-RINGからなる “全身全霊アイドル” PIGGS。ピグスハウスで共同生活中。
2020年4月19日始動。元BiSのプー・ルイが会社を立ち上げ社長兼プロデューサー兼メンバーとして自らオーディションで選んだメンバーと共にトップアイドルを目指す。1,000km以上歩きライブハウスを回った「WALK or PORK TOUR」、ノンストップで109回歌って踊るMV撮影、100kmマラソン、激辛料理早食いなど夢を叶えるため何事にも全身全霊で挑戦し逞しく成長中。
【公式HP】
https://piggs.tokyo/
【公式X】
https://twitter.com/PIGGS_idol
【公式YouTubeチャンネル】
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