歌詞から読み解く彼女の“細胞”ーー女性SSW玉手初美、2ndミニ・アルバムを先行ハイレゾ配信

椎名林檎、大森靖子、BiS、後藤まり子のやばさを全部持ち合わせた、東京都江戸川区出身の女性シンガー・ソングライター、ロックンローラー、玉手初美。ドラマーのオータコージ(曽我部恵一BAND、L.E.D. etc…) とともに作り上げた1stミニ・アルバム『遺書』以来、約1年ぶりとなる待望の新作『細胞』が完成。前作に引き続き、サウンド・プロデュースはオータコージ。ジャケットはFlying Lotus 『You’re Dead』も手がけた漫画家・駕籠真太郎が描き下ろしている。フェンダー・ムスタングをマーシャルに直結してドライヴさせながら絶唱する鋭い才能を、7月15日の全国発売に先駆けてハイレゾ配信する。また玉手初美へのロング・インタヴューも掲載。さらに「7月7日」をフリー・ダウンロード配信!! いまこの才能に触れずにいつ触れる?!
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待望の2ndミニ・アルバムをハイレゾ配信開始
玉手初美 / 細胞
【配信価格】
24bit/48kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / mp3
単曲 216円(税込) / まとめ購入 1,296円(税込)
1. 7月7日
2. 野外授業
3. ARGT
4. j-pop
5. ゆだちゃん
-BONUS TRACK-
6. 仮歌1
7. 仮歌2
ハイレゾについてはこちらから
INTERVIEW : 玉手初美
1年ぶりにあった彼女は、少し大人になって、少し喋るようになっていた。でも、発する狂気は何も変わっていなかった。今回は、彼女の歌詞の世界を訊いてみた。おもしろかった。全部、実体験だった。取材後思ったこと。「彼女は天才かもしれないな…」。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 鶯巣大介
※本インタヴューを読む前に、歌詞を一読いただくと、より玉手初美について理解が深まります。下記よりダウンロードください。

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早く大人になりたくて、学校とかも通いたくなくて
ーー前回(2014年6月)からちょうど1年ぶりのインタヴューになります。この1年間は、ずっと2ndアルバムの制作期間に充てていたんですか。
玉手初美(以下、玉手) : そういうわけではないです。一応予定では2014年のうちに作ろうっていう話で、10月か11月あたりに1回レコーデイングをするつもりだったんです。でも自転車でコケたのが原因で、右肩を骨折しちゃって(笑)。それで予定通りには進まなくなってしまったんですけど、12月頃には治ったので、今年の1月あたりにレコーディングを始めました。
ーー玉手さんは、すぐ曲を書けるのでしょうか?
玉手 : 時期によりますね。いっぱい曲ができるのは結構冬が多いです。寒いときはたくさん作れるけど、暖かくなってくるとあまり出てこないというか(笑)。
ーーそれはおもしろいですね。今回この『細胞』は歌詞がすごく気になったんです。全体的に玉手さんの歌詞っていうのは負の感情をエネルギーとして書き殴られているものだと思うのですが、なぜそういったものに突き動かされるんでしょう?
玉手 : 元々はいまみたいな歌詞だったり、暗い気持ちって書いちゃいけないと思っていたんですよ。書いちゃいけないし、明るくなくちゃいけない。でも実際あたしはそんなに明るくもないし、むしろ暗いっていうほうが自分に合っているんですよね。でも昔は、普通のJ-POPのような明るい歌だったり、思ってもなかったことを書いたりしていて。そういう歌を歌っていた時期もあったんですけど、それに疲れてしまって。だからいまみたいに本当に思ってることを歌詞に書いているんだと思います。どうして暗くなっちゃうのかは正直分からないんですけど。
ーーでは各曲の背景について教えてもらいたいです。七夕について歌った「7月7日」では、キーワードは〈あいつ〉になるのかな。〈あの頃の懐かし切なさ 思い出そうとしてる〉っていう、その人は誰なんですか?
玉手 : 〈あいつ〉は自分です。去年の7月7日に、ちょうど七夕の日に、小学生くらいのときの自分とか、昔の七夕ってどんなんだったかなと思い返してたんです。この曲はその頃に戻りたいなっていう気持ちがあって書いたんだと思います。
ーー〈ただ逃げたかった 羽が欲しかった〉ともありますけど、当時はどこからか逃げたかった?
玉手 : 小学生と中学生のときのことが混ざっているんですけど、逃げたかったというのは、早く大人になりたくて、学校とかも通いたくなくて。でもいま思い返すと、なにも考える必要がないのですごくよかったなっていう思いもありますね。ただなんの目的もないというか、なにかをしなくちゃいけないとかがない。お金を稼がなくちゃいけないから仕事をするだとか、ライヴでも良く見られなくちゃいけないから化粧をするだとか、いい曲を書くだとか、勉強をするだとか。そういうことじゃなくて、ただ楽しいからこれをやるとか。そういう純粋になにかを楽しむ気持ちが昔はあったなって思います。
ーーつまり逆にいまは色々なことに囚われてしまっているのに、それでも当時は大人になりたかったと。この曲はアレンジもおもしろいですね。いきなりオータさん(オータコージ)の叫び声から始まるし、途中からいきなりサウンドが荒くなったり。
玉手 : 2つとも特に意味はなくて偶然出来たものなんです。叫び声から曲が始まるのは、スタジオにオータさんがサンプラーを持って来てくれたことがきっかけで。そのときにオータさんが試しで「おーい、おーい ハッ ハッ」って入れてたんですよ。ちょうどそれが流れたときに、その声が曲のリズムに上手い感じで当てはまりそうだなと思ってふざけて試したら、ちょうどうまく噛み合ったんです。音が変わるのも、たまたまデモを録音するときが、肩を骨折していた時期だったんですね。だから一部分ギターで弾けないところがあったので、ライヴの音源をそのまま当てはめたんです。それが結構聴いてみたら良くて。
あたしはこの歌詞の〈お金〉の部分を、本当は全部〈愛情〉にしたい
ーー2曲目「野外授業」はかなり疾走感がありますね。これはどんな曲ですか?
玉手 : この曲は作ったのが1stの時期で、一昨年の夏あたりからありました。作った当時あたしは失恋をしまして。恋愛ってなんだろうなと思って、そういう気持ちで書きました。
ーー途中の〈あたしのパパとママは 8年前 紙切れ一つ 一生バイバイ〉だったり〈親を憎んでいます〉っていう歌詞も、そのまま玉手さんの実体験に基づくもの?
玉手 : そうですね。うちは3人兄弟なんですけど、あたしの上のお兄ちゃんとお姉ちゃんは両親が離婚するってことを知ってて。あたしだけ知らされないまま「お母さんいなくない? いつ帰ってくるんだろうなぁ」みたいな毎日だったんです。でもあるとき、ついついお兄ちゃんの話を聞いて「あ、離婚したんだ」ということに気がついて。だから子供も含めての家族なのに、なんで子供になにも言わないで離婚するんだろう、勝手にいなくなっちゃうんだろうって思ってました。
ーーちなみにお父さん、お母さんについては、どう思っていますか?
玉手 : お父さんは、お父さんとしては正直好きかどうかわからないですけど、人としてはいいのではないかなと思います。お母さんは前まではちょいちょい会ってたんですけど、最近はまったく。
ーーじゃあ、お母さんも別に嫌いっていうわけではないんですね。
玉手 : うーん。ただ接し方がわからない。
ーーなるほど… でもこの曲は、最後の4行のフレーズ〈悲しいことは分け合って 嬉しいことは倍にして そんな夢を魅て何が悪いのですか 夢を魅るよ ずっと〉があることで、すごく前向きな印象を受けるんですね。玉手さんはいつか幸せについて歌ってみたい気持ちはありますか?
玉手 : 歌ってみたいです。明るい歌も。歌ってみたいですけど、幸せだなぁって思うとなんか悲しくなっちゃうんですよね。不安というか。いつか絶対なくなっちゃうんだろうなっていう気持ちが多分あって。その幸せがなくなっちゃうのが怖いんだと思います。
ーーでもこの曲の最後の歌詞は、前作と比べてポジティヴな変化を感じましたよ。でも一転して3曲目「ARGT」は、ギターを爪弾きながらも狂気に満ちた曲だなと(笑)。
玉手 : これは去年の夏頃に書いた曲です。サマソニかなぁ、それに出演できるオーディションに応募することになって。応募はしたくなかったんですけど、でもそうしなくちゃ出演はできない。しかも結局何百票か入らないと審査員に聴いてもらえないんですね、それで結果落ちて。こんな身分なんでこういうこと言っちゃいけないのかもしれないですけど、すごく悔しかったんですよ。審査員の人にも聴いてもらえないし。だから、すごく悔しくて書きました。

ーーそういうことなんだ! このストーリーを聞くことで、この曲の解釈や印象が全然違いますね。続く4曲目「j-pop」は1番歌詞が強烈だなと。それになぜこのタイトルなのかも気になります。
玉手 : これはうちの家庭のことを書いているんです。あたし高校を中退しているので、それから家にお金を入れるようになったんですよ。でも、ちょうど去年のいまくらいなんですけど、一時期払えなくなったときがあって。そのときにお父さんが彼女を作って、家に連れてきて、結局いまでも一緒に暮らしているんですよ。なんかそれを見たときに「出てけ」って言われてるような気持ちになってしまって、この曲を書きましたね。やっぱり“お父さん”っていう一面を信じたかったというか、まぁ甘えてるだけだと思うんですけど。
ーーそれは彼女を作ったってことが許せなかった?
玉手 : いや彼女とかは全然いいんですけど(笑)、わざわざ一緒に暮らさなくてもいいんじゃないかなって。やっぱりお父さんとして見れないというか、2人で話すのもすごく気を遣うし。いまはもう慣れちゃったんですけどね。でも前はご飯も作ってくれてたんですけど、彼女さんが来てからは全部別になっちゃって。だから結局はあたしが家に入れるお金のために育ててたのかなと思って。だからいままで育ててくれてた愛情っていうのはあったのか、なかったのか正直わからないっていう気持ちでした。あたしはこの歌詞の〈お金〉の部分を、本当は全部〈愛情〉にしたいんですよ。
ーー〈お金に育てられて お金で唄をうたう お金であなた方と出会った〉この部分?
玉手 : はい。そもそもが愛情から来てればいいのにって思いたいんですけど、思えなくて。タイトルの「j-pop」に関しては、単純にメロディ的にJ-POPっぽいなという思いからですね。
ずっと思ってるのは聴いてほしいし、そのときの出来る限りの力を出したい
ーーなるほど。最後の「ゆだちゃん」ですが、これはだれですか?
玉手 : 高校に通ってた頃の友達のことです。歌詞を読んでもらえれば分かると思うんですけど、別にこの曲はゆだちゃんに贈りたくて作った歌とかじゃないんです。あたしが中退してからも、ゆだちゃんとは毎晩電話をしたり、ずっと連絡を取り合っていて。それでその子はいろいろ家庭の環境だとか、学校で問題を抱えていたりだとか、そういう悩みがあったんです。その相談をずっと受けていたんですけど、それを聞いてもあたしはなにもできないなぁと思いながら書いたものです。何日立っても状況は変わんないし、なんにもできない。そういう思いです。
ーーこの曲は自分の無力感が現れてるってことですよね。でもゆだちゃんは、玉手さんのことが救いだったと思いますよ。
玉手 : 感謝してくれてるのかな? その子はすごくありがとうって言ってくれるし、いまでも仲良くしてくれてます。
ーー全曲の解説ありがとうございました。玉手さんは、ライヴはもうだいぶ慣れましたか?
玉手 : リラックスしてできるときもあるけど、でもやっぱり緊張します。リハからすごくナイーブになっちゃったりとか。
ーー玉手さんの曲は、ヴォーカルの強烈なフレーズの数々だったり、いきなりシャウトが入ってたりと、すごい爆発力があるじゃないですか。これをライヴで披露するときは、怒りなどが原動力になったりするんでしょうか。
玉手 : いや、そうとは言えないと思います。ずっと思ってるのは聴いてほしいし、そのときの出来る限りの力を出したいっていうことです。そしたら聴いてくれるっていう確証も何もないんですけど、でもただ頑張ることしかできないというか。そういう気持ちだと思います。
ーーではその聴いてもらった先にあるもの、つまりミュージシャンとして目標はどんなものですか?
玉手 : あたしはずっと変わってないのは、武道館でライヴがしたいって思いですね。昔からあれだけの広さを埋められるアーティストさんになりたいなとずっと思ってたんで。
ーーこの音楽性で武道館行けたら、それは素敵なことですよね!
玉手 : 多分みんな思ってると思います。
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玉手初美 : 作詞、作曲、歌唱、ギター演奏
オータコージ : サウンドプロデュース、ドラム演奏
松江潤 : ギター演奏(M-6,8)
横山裕章 : キーボード演奏(M-5)
池内亮 : 録音、ミックス
鎌田裕明(aLIVE) : 録音
中村宗一郎(ピースミュージック) : マスタリング
>>玉手初美の初インタヴューはこちら
狂気の新人のシングル限定バージョンを独占配信
玉手初美 / 狂(SINGLE VER.)
【配信価格】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/48kHz) / 単曲のみ 162円
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PROFILE
玉手初美(タマテハツミ)
1996年6月生まれ19歳
地元での路上ライブや東東京エリアでの弾き語りライブ活動を行っていた中、ドラマーのオータコージ(曽我部恵一BAND、L.E.D.、OishiiOishii、空気公団のサポート、□□□(クチロロ)のサポートetc.) と出会い、意気投合。2人でのリハーサル、ライブを重ね、1st MINI ALBUM『遺書』を完成させ、2014年6月にリリース。全曲、玉手初美による作詞作曲、また前作同様ドラム演奏及びプロデュースをオータコージが手掛けている。フェンダームスタングをマーシャルに直結してドライヴさせながら絶唱する突き抜け感のなかにも、メロディー・メーカーとしての才能も光る、いまの音楽シーンでは希有なグルーヴ感を持った最注目のアーティスト。