ハイレゾは本当にちがうの?――ハイレゾ・アニソンをリリースした榊原ゆい&山森篤の音質聴き比べ対談

多数の人気アニメを輩出するKADOKAWAメディアファクトリーが、ついにアニソンをハイレゾ化…!!! これは嬉しい知らせということでその立役者となったおふたりとハイレゾ・アニソンの普及に努めたい! ということで実現したのが今回。純粋な疑問として感じる「ハイレゾは本当にちがうの?」という言葉にお応えする音質聴き比べ対談です。
そのおふたりとは、声優から振り付け、ダンサーまでマルチな活動を行いつつも数々のアニメ / ゲーム主題歌を手掛けてきたシンガー・ソングライター"ゆいにゃん"こと榊原ゆいさんと、KADOKAWAメディアファクトリーで音楽プロデューサーを務める山森篤さん。このふたりがタッグを組み、24bit/96kHzのハイレゾ音源で『LOVE×CoverSongs』と『 TVアニメ「星刻の竜騎士」オープニングテーマ「聖剣なんていらない」』を今春リリースしました。
「なぜ聴き比べ? ふたりにとっては今更でしょう」と思うかもしれませんが、実は制作しているときは"良い音"で聴いているのが当たり前で、あらためて聴き比べ、しかも配信ではまだまだ主流であるmp3とハイレゾの差を聴く、なんてことはないものなのです。感覚的だけれどもだからこそ一般的にもわかりやすいゆいにゃんの感想と、専門的な言葉も交えつつずばりの解説を加えてくれる山森さんの言葉で、ハイレゾ・アニソンの魅力、そして本2作の魅力を存分にお伝えします!!
そもそも"ハイレゾ"とは…?
High-Resolution(=高解像度)を縮めてハイレゾ。一般的なCDの規格である16bit/44.1kHz、もしくは16bit/48kHzを超える情報量を持つ音源をこう呼びます。文字通り高い解像度を誇る音源であり、音の波形をより滑らかにデジタル化しているのが魅力です。
ハイレゾ音源の例 : 24bit/48kHz、24bit/96kHz、24bit/192kHz
榊原ゆい×山森篤のハイレゾ・アニソン2作!!
榊原ゆい / TVアニメ「星刻の竜騎士」オープニングテーマ「聖剣なんていらない」
【配信価格】
alac / flac / wav(24bit/96kHz) : 単曲 540円 / まとめ購入 1,296円
【Track List】
01. 聖剣なんていらない
02. シュトルーフェ
03. 聖剣なんていらない(Off Vocal)
04. シュトルーフェ(Off Vocal)
2014年4月〜6月に放送していた、美少女ドラゴンが歴史を刻む本格・異世界物語、TVアニメ「星刻の竜騎士」でナヴィー役を演じた榊原ゆいがオープニング・テーマも担当! 数多くのゲーム・アニメ主題歌を歌ってきた彼女が、オープニング・テーマ「聖剣なんていらない」を歌い上げる。作詞作曲は水樹奈々や榊原ゆい、飛蘭など多くのヴォーカリストに楽曲を提供し続ける、Elements Gardenの代表・上松範康!!
榊原ゆい / LOVE×CoverSongs
【配信価格】
alac / flac / wav(24bit/96kHz) : 単曲 540円 / まとめ購入 3,240円
【Track List】
01. 輪舞-revolution(TVアニメ「少女革命ウテナ」OPテーマ)
02. “らしく"いきましょ(TVアニメ「美少女戦士セーラームーンSuperS」EDテーマ)
03. 空色デイズ(TVアニメ「天元突破グレンラガン」OPテーマ)
04. ロマンティックあげるよ(TVアニメ「ドラゴンボール」EDテーマ)
05. ラムのラブソング(TVアニメ「うる星やつら」OPテーマ)
06. Naked arms(PS3/Wii用ゲームソフト「戦国BASARA3」OPテーマ)
07. 恋獄(PCゲーム「カルタグラ」OPテーマ)
08. 原罪のレクイエム(PCゲーム「プリズムアーク」OPテーマ)
09. ハローグッバイ(PCゲーム「グリーングリーン3ハローグッバイ」OPテーマ)
10. 青い記憶(PCゲーム「“Hello,world."」OPテーマ)
榊原ゆいがヒロインを演じたPCゲーム「プリズムアーク」のOP主題歌『原罪のレクイエム』を始め、1980年代アニメを代表する「うる星やつら」のOP主題歌『ラムのラブソング』、大人気ゲーム戦国BASARAシリーズからは「戦国BASARA3」の『Naked arms』等、全10曲を収録。さらにリリース後も長くファンに愛され続ける「Chu×Chuアイドる!」シリーズや「暁の護衛」シリーズなど、ゆいにゃんが歌う人気楽曲を数多く手がける音楽集団"Angel Note"が完全リアレンジ! 様々なジャンルの名曲たちが… ゆいにゃん&Angel Noteカラーに染まる!
対談 : 榊原ゆい×山森篤
――KADOKAWAメディアファクトリーで初のハイレゾ・アニソンをリリースした歌手の榊原ゆいさんと、音楽プロデューサーの山森篤さんに、Timelordの「SHOWROOM 遊 by Timelord」に来ていただきました。ふたりのタッグでハイレゾ化された『聖剣なんていらない』と『LOVE×CoverSongs』をリリースしたこの機会に、「mp3からハイレゾまで、音質を聴き比べると実際どれだけ違うのか!?」を体感してもらいながら、ハイレゾや作品のことをお訊きできればと思います。
榊原ゆい(以下、榊原)&山森篤(以下、山森) : よろしくお願いします。
――試聴する前に山森さんに質問なんですが、ずっとKADOKAWAメディアファクトリーの音楽プロデューサーとして音楽制作に関わられている中で、いち早くハイレゾでリリースしたいとおっしゃっていたのは山森さんだと伺いました。その山森さんにとってハイレゾへの興味は、どこからはじまったのでしょうか?
山森 : 16〜17年前に、DVDオーディオに変わるんじゃないかっていう時代があったんですよ。実現しませんでしたが…。
――ありましたね。
山森 : そのころ、各所のマスタリング・スタジオさんが、メーカーのディレクターとかを呼んで試聴させてくれたんです。「これが次世代の音質です」って。そのときのDVDオーディオのフォーマットっていうのが192kHzの24bitとか32bitってとんでもない領域にまで突っ込んだ音だったんですね。そのときにあまりにも衝撃を受けて。「わあ、こんな時代が来るんだ」っていうのがはじまりですね。
――なるほど。それから時間は要しましたが、遂に配信というかたちで、ハイレゾが話題になりはじめました。そして24bit/96kHzでハイレゾ化された『聖剣なんていらない』と『LOVE×CoverSongs』は、非常に売れ行きがよく、高い評価も得たと伺いました。それについて感想はいかがですか?
山森 : その報告を聞いてびっくりと同時に「受け入れられたんだ!」という気持ちはすごくあります。それと同時に弊社のプロデューサーの幾人かは、ハイレゾをはじめてみたいと言ってくれたので、いい起爆剤になったのかなと。

――今回榊原さんのもとには「ハイレゾで出してくれてありがとう」みたいなファンの声はありましたか?
榊原 : 独自に調べてみたら(笑)、ハイレゾで購入された方、盤もハイレゾも買って、しかも聴き比べてレポートを書いてくださる方までいて。配信ではハイレゾで、盤では頑張って作ってるブックレットも楽しんでもらえると思うので、選ぶ幅が広がってより楽しんでもらえるのはすごく嬉しいですね。
音質が上がるごとに空間の広さが違うなと思いました
――それぞれに価値がちゃんと付いてるからこそですよね。では実際に今からmp3音質(320kbps)、CD音質(16bit/44.1kHz)、ハイレゾ(24bit/96kHz)で聴き比べていただこうと思うのですが、せっかくなのでこの試聴環境について、Timelordの村上(遼)さんに説明をお願いできれば。
村上 : はい。よく家電量販店で、スピーカーがバーって並んで、好きなオーディオを選んで下さいという聴き方があると思うのですが、弊社の試聴室は基本的にワン・ルーム/ワン・スピーカーをコンセプトに、予約いただいたお客様の希望に沿って、その都度セットアップしています。我々はブラック・ルームと呼んでいまして、見てのとおり、壁一面黒いです。吸音材なども張ってありますので、暗くすると世界が広がるような感じで、リラックスして試聴することができます。

今回用意したスピーカーはFOCALというフランスのブランドです。フランスのブランドはシャンソンがルーツにあるため、歌をよく聴かせてくれる仕様になっています。歌のサ行は普通に聴くと耳に痛い部分なのですが、このスピーカーではすっと入ってくる。そして繋げているDAコンバーターは、イギリス製のCHORD Hugoです。


――では聴いてみましょうか。たくさんは聴けないので、まずはTVアニメ「星刻の竜騎士」のOPテーマ「聖剣なんていらない」から。mp3、CD、ハイレゾの順でお願いします。
再生中 1曲目「星刻の竜騎士」(OTOTOYでの試聴はmp3音質です)
――……はい。榊原さん、どうでしたか?
榊原 : 思った感じで言っていいですか?
――はい。ぜひ思った感じで言ってください。
榊原 : mp3はこじんまりまとまっているというか、ぺたっとしてると言ったらアレですけど、皆がちっちゃく固まっている感じ。
――ぺたっとしていますよね。
榊原 : 音質が上がるごとに空間の広さが違うなと思いました。だんだん空間が広がって、オーケストラがいるとしたら、それぞれの位置も広がっていくというか…。やっぱりハイレゾはみんなどっしり構えているような感じがします。ごめんなさい、テキストにしづらい(笑)。
――いやいや。音なので感覚的なことを言っていただけるのが1番です。山森さんはスタジオでも聴いていると思いますが、あらためてこういう環境で聴いてみたときに、どう思われましたか?
山森 : スピーカーの小ささからすると想像以上に、ハイレゾは低域がぐんぐん出ていてびっくりしています。スタジオではラージ・スピーカー、スモール・スピーカー、ラジカセのだいたい3パターンは聴き比べているんですよね。ラージで聴いてる部分は何かというと、低域がどこまで出てるんだろうという部分が大きいんです。ラージで聴くと髪の毛が揺れるくらいもわっと出ます。それでいうと、ここのスピーカーはスモールなのに、スタジオのラージ環境と同じくらい、低域が聴こえました。
――なるほど。山森さんにとって、みなさんに聴いてほしい表現というのは、やはりハイレゾで聴こえる表現を目指してつくっているんでしょうか?
山森 : はい。mp3よりもCDクオリティよりももっと高域が出ているなかで、低域が実は重要だったことがハイレゾをやりはじめて気付きました。先にハイレゾMIXを作るのですが、エンジニアさんやアレンジャーさんと「気持ち悪いほどに低域が出てくるね」ってよく言っていて。あ、表現がナーヴァスに聞こえるかもしれませんが、良い意味で言ってるんですヨ。24bit/96kHzで作るがゆえに、こんな音出てたんだっていうぐらいの低域成分が聴こえて。そうすると、その後、単純に44.1kHzへトラックダウンすると低音が出てこないと言うか、これは24bit/96kHzとは44.1kHzのMIXは変えたほうがいいねという話もしていて。そういう意味でも“ハイレゾ恐るべし"な時代なのかもしれないですね。
――なるほど。これはハイレゾに特化していなくても構わないのですが、今聴いた「聖剣なんていらない」に関して、山森さんのこだわりはなんですか?
山森 : 「より低域を出したい」とはエンジニアさんにも言っていて、まさに榊原さんがどっしりって言ってくれたのは「ああそうなんだよ」っていう。実はベードラがすごくドン、ズドン、っていってるんですね。実はベードラは出せば出すほど、高域も出てきて、ペシペシって言っちゃうんですよ。高域を出過ぎないように、且つ低域を出すことに、エンジニアさんはかなり苦労されてますよ。でも今回いい塩梅に低域を出せたのはハイレゾならではだなって、ますますここで聴いて思いました。
『LOVE×CoverSongs』はCDのマスタリング・パターンとハイレゾのマスタリング・パターンが違っています
――じゃあ、もう1曲聴きましょうか。続いては『LOVE×CoverSongs』のなかから「輪舞-revolution」にしましょう。
村上 : あ、もしよかったらど真ん中で聴いてください。そうすると、おっしゃっていたヴォーカルの低域がどこの辺りにいるかっていうのがより分かると思います。
再生中 1曲目「輪舞-revolution」(OTOTOYでの試聴はmp3音質です)
山森 : 真ん中で聴くべきでしたね。最初から(笑)。
――やはり違いますね。榊原さんどうでしたか?
榊原 : この曲だと、より鮮明に空間がイメージできました。mp3は狭い場所で演奏していて、なんか… 「ぶつかる! 邪魔!」って感じで(笑)。CDはライヴ・ハウスかな。ハイレゾはホールです。ハイレゾの方がCDよりもヴォーカルやコーラス等も含め全部の楽器に動きがあったような気がします。音に余裕がありました。自分の持ち場所をちゃんと広く持ってパフォーマンスをしている音になってた気がします。人を気にせずっていうか、ガツガツぶつかることがない。
――山森さんはいかがですか?
山森 : mp3、CDクオリティ、ハイレゾでどんどん高域が出てきて、なおかつ、高域と低域の振れ具合が全然違っていましたね。特にハイレゾは低域が締まっていて、躍動感が出ているので、そういう意味でホール感という表現はすごく合ってるのかなって思います。
――低域の気持ち良さがすごいですよね。この『LOVE×CoverSongs』はどういった経緯で制作することになったのでしょうか?
榊原 : もともとカヴァー・ソング集を作ろうという考えはまったくなかったんです。「なにかリリースしよう」というタイミングで、オリジナル曲が400曲以上あるなか、次にお客さんが求めているのは何か、何をしたら楽しいかとスタッフと話していたんですね。そのなかで、アニソン・ゲーソンのカヴァー・アルバムはどうだっていうのが企画に上がって。確かにファンのみなさんからカヴァーを聴いてみたいという声はあったので、このタイミングかなと思って。

――逆に、オリジナルが400曲もあって、これまでカヴァー・アルバムがないのが不思議なぐらいですよね。
榊原 : そうかもしれないですね(笑)。私はアニソン・ゲーソンで育ってきたので、やはりご本人が歌うオリジナルが神曲なんです。だから自分が歌っても良いのかという気持ちもありつつ、みんなに後押ししてもらって、ゆいにゃんなりのカヴァーを作ってみたいと思ったんです。これまで私の大人気曲を手がけていただいたりでお世話になっているAngel Noteさんにも協力していただいて選曲・リアレンジをして。好きな曲ばっかり選んでしまったのでレコーディングがすぐ終わりました(笑)。
――曲を再現する上で1番気をつけたことはありますか?
榊原 : アレンジの方向性には、そのまま歌いたい曲と、がらっと変えて歌いたい曲とはっきり自分の中にあったので、それをお伝えしながら納得のいくアレンジにしました。あ、あと今聴いた「輪舞-revolution」はご縁あって、奥井雅美さんご本人がコーラスを入れて下さるという神がかり的な機会に恵まれました。そういうのも、こだわりがあったからこそ、というか、好きだからこういう良い形になったのかなと思っています。
――山森さんのこだわりはありますか?
山森 : 『LOVE×CoverSongs』はCDのマスタリング・パターンとハイレゾのマスタリング・パターンが違っています。おそらく波形編集ソフトとかで見られると一目瞭然に分かるようになっています。ハイレゾでは、いわゆるダイナミックレンジを大事にするためにあまりコンプレッサーやリミッターをあえてかけすぎないようにしました。いわゆる、音圧を突っ込み過ぎていないと言うことです。そうすることで、より小さい音は小さく、大きい音はより大きく体感してもらえるように心がけて全曲をマスタリング・エンジニアさんにお願いしてます。メディアファクトリーとしてはフル・アルバムで初めてのハイレゾ配信だったので、ここからスタートする上ではどう聴いてもらうのがいいのかって考えた結果、そうなりました。
――では、ハイレゾでは気持ちいつもよりヴォリュームを上げて聴いてもらえると、より表現の違いがわかるということですね。
山森 : そういうことですね。
サビの〈あぁ〜〉っていくところのワッっていう広がり方がめっちゃ気持ち良かったです!
――わかりました。では最後にもう1曲聴きましょうか。『LOVE×CoverSongs』のなかでも人気が高いという「ラムのラブソンク」にしてみましょう。
再生中 5曲目「ラムのラブソンク」(OTOTOYでの試聴はmp3音質です)
――どうでした?
榊原 : 歌が歌なので、mp3だとヴォーカルが独りよがりな雰囲気になってしまって、ちょっと恥ずかしかったです(笑)。どうしても変にヴォーカルが浮き出てちゃって、ひとりでやってる感じがしました。CDはちゃんと粒立っているというか、特にこの曲はSEっぽいのが多いので、そのSEが粒立って聴こえる。音ゲーに向いてそうな感じですね。ハイレゾは、良いバランスでみんないるので、サビの〈あぁ〜〉っていくところのワッっていう広がり方がめっちゃ気持ち良かったです!
――山森さんはどうですか?
山森 : SE感のあるサウンドというのは、イコール高域成分が多く混じっている、ということなので、mp3ではどうしてもカットされてる感がありますね。逆にCDクオリティになったとたんに「あぁ、こんな音出てたんだ」ってなります。ハイレゾにいくと、榊原さんがすごくかわいく作ってくれた声に、よりツヤ感が出て、「こういう世界観だったんだ!」というのが感じ取れましたね。ここまで聴き比べないので、スタジオでは。
榊原 : 聴き比べないですよね〜。
――こんなにも違いがでることをあらためて実感していただけたかと思うのですが、総括として山森さんは今後、ハイレゾ、ないし音質に関しては、どうなっていくと思いますか?
山森 : 今後、色んな意味でプロデューサーとしての味が出るのはハイレゾ化だと、僕は思っています。そして、今回僕がこだわったのが、マスタリング時、意図してアナログ機器を使うという方法をとったんですね。「なにそれ、デジタルでせっかくいい音なのに、アナログにしてるの」って皆さんビックリされるかも知れないんですけど、そこに介在しているアナログ機器はやっぱりプロ仕様なので、とても素晴らしい音がします。そしてその過程で使用するケーブルにも徹底的にこだわりました。中には1mが50万円するようなものをLRで使っていたりするんです。代表格で、クリスタル・ケーブル、銀製や、銅製、白金、金が入っていたりとか、色んなケーブルがスタジオに置かれていているので、エンジニアさんと共に、取り込みのとき、色々と聴き比べるんですよ。曲によって相性があって、銀系が良いのもあれば、銅系が良いのもある。そうそう、他作品でしたが、ハーフインチ・テープを回して、テープコンプをかけて取り込む、ということもしたことがあります。それで、単純にアナログ化することは悪ではないのかもしれないなっていうのも我々、送り出す側としては実際やってみてそう思ったんです。なので、そういった持ち味を生かしたハイレゾ作業が今後、担当プロデューサーにとって、やっていくのが当然になるのではなかろうか。僕ごときがやってるんならば、絶対そうだろう、と思ってるので、そういうところもぜひ期待していただきたいです。かつ、先ほどもお話に出ましたが、音圧を出すことが果たして良いのか迷ったりもしているので、やっぱり小さい音と大きい音を聴いてもらうことも実は良いことかもしれない。もちろん、それぞれのサウンドの持ち味なので、そればっかりやるんじゃないとは思うんですけども、そういったところも含めて、メーカー・プロデューサーはハイレゾ化を試みていくのではないかと、少なくとも僕はしていきたいし、そう思っています。

――ありがとうございます。そして榊原さんは今年活動が10周年目ということですが、音質も色々変化があってこういう時代を迎えていますが、榊原さんがこの10年で大きく変わったと1番に感じることはありますか?
榊原 : 業界的なことで言うと、アニソン・ゲーソンってこの10年で成長したというか、歌としてちゃんと認識されるようになったと思うんです。昔から携わってきた身からすると、名曲がなかなか日の目を見ず、表に出ていけないところもあったりしたなかで、今は音楽にたくさん興味を持って下さって、作品と共に歌も重要視してくださってるなって感じます。昔よりライヴに足を運んでくれる人が増えたので、生で聴く方はもちろん、日常で聴いていただける回数も昔より増えたと思うんですね。なので、音質のこだわりだったり、音に対するみなさんの感心の持ち方がすごく嬉しいです。
――ハイレゾという新たな価値も増えたことで、よりいっそう関心が高まると思いますね。まだ聴いてない方や、ハイレゾでの購入を迷ってる方に届いたらと思うと、非常に楽しいです。本日はありがとうございました。
榊原&山森 : ありがとうございました。
(インタヴュー : 飯田仁一郎)
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PROFILE
榊原ゆい
TVアニメ「乙女はお姉さまに恋してる」の梶浦緋紗子役、TVアニメ「スーパーロボット大戦OG -ディバイン・ウォーズ-」レオナ・ガーシュタイン役、「カオス;ヘッド -CHAOS;HEAD-」岸本あやせ役など声優活動をはじめ、TVアニメやゲーム主題歌を多数担当するシンガー・ソングライター。2014年8月27日に9枚目のアルバム『Amazing』をリリース。その他、振り付け、ダンサーやナレーターなど、マルチな活動を展開。
>>榊原ゆい Official HP
>>榊原ゆい Official BLOG
山森篤
KADOKAWAメディアファクトリーに所属する音楽プロデューサー。メディアミックス・プロジェクト「アンジュ・ヴィエルジュ」の声優ユニット"L.I.N.K.s(リンクス)"や、TVアニメ「クイーンズブレイド」の第1期「流浪の戦士」、第2期「王座を継ぐ者」やOVA「クイーンズブレイド 美しき闘士たち」などを手掛ける。