もっと大人に向けた曲を作りたい
——ここからは各楽曲についてお伺いしたいと思います。メンバーのみなさんも印象に残っている楽曲があれば教えてください。まず1曲目“ピラニア型人造人間”はどんな世界を描いたんですか?
Ryan.B:ピラニアは共食いをする魚じゃないですか。人間誰しも社会で生きる中で搾取したりされたり、逆に搾取しないといけない苦しさがあると思うんです。この曲はそういう息苦しさから人間に疲れて、改造手術を受けて「ピラニア型人造人間」になった、という設定になっています。人造人間になることによって、共食いしないといけない悲哀になんとか耐えていく主人公を描きました。
——なるほど。
Ryan.B:最近自分もPIGGSチームの中でバランスをとって、なんとなくピラニアのように生きていたと気づいたんです。だからこの曲で、そういう自分を爆発させて生まれ変わりたいなと思って、1曲目にしました。そして生まれ変わって「フリチン(Fleeting)」になって2曲目につながるわけです(笑)。
——そして最終的に“人間すぎる“に繋がるということですか?
Ryan.B:そうです、そうです!
——アルバムを通して大きなテーマがあるんですね。2曲目の“Fleeting“はどのように制作を進めたんですか?
Ryan.B:曲をつくりはじめた10代の頃から、もっと大人に向けた曲を作りたいと思っていたんです。“NAKED BORN NAKED DIE”でも大人のしがらみをテーマにしたんですが、今回はより一層その部分を明確にして制作しました。この曲の歌い出しのように「つるつる」から「ボサボサ」になってくると、いろんなことを考えてバランスを取るようになってくると思うんです。なので、その大人のルールを取っ払って、原点に立ち返って作った曲ですね。
——“Fleeting”のサウンドは、かなりグランジ感があります。今の時代のアイドルの楽曲で、ここまでストレートにグランジを取り入れた曲はなかなかないと思います。
Ryan.B:76歳になったイギー・ポップの新作アルバムがすごく良かったんですよ。1曲目の冒頭から「I got a dick and two balls」というすごい歌詞からはじまるんですけど、それがめちゃくちゃカッコよくて。“Fleeting”のグランジのサウンドは、その源流のイギー・ポップに影響を受けたかもしれないですね。
——メジャーで出すファースト・アルバムで「フリチン」というワードが聴こえてくるのが、すごいなと思っていました。
METTY:正直「フリチン」と言う部分は少し気になっていたんです。でもそれを今このタイミングで言うことに意味があるなと思ったので採用したんです。
Ryan.B:メジャーで出すとなると丸くなって「フリチン」みたいな言葉は避けると思うんですよ。でも「ティン」ではなく、あえて「チン」と言うことでメジャーに対する決意表明をしました。でもメジャーのファーストで「フリチン」と言うのは、WACKイズムを継承しているわけではなくて、どちらかというと、さっき言ったイギー・ポップから影響を受けているんです。
SHELLME:私はこの“Fleeting”は最強だと思います(笑)。今日気分上がらないなという人はこれ聴いたらぶち上がるので、マジで聴いてほしい。明日だるいなと思ったらこれ聴いて寝てほしいですね。対バンライヴのリハで練習していたときに、共演するアイドルさんが見てくれていたんですよ。踊りながら「この曲やばいでしょ? めっちゃかっこよくない?」と思っていましたね(笑)。
プー・ルイ:Pimm'sさんと対バンしたときだよね。Pimm'sさんがPIGGSのことを好きだと言ってくれて、リハーサルもみてくれたんです。そのときに“Fleeting”をやったんですけど全員の雰囲気が変わりました。「これが新しいPIGGSです」とドヤ顔でリハしたら、SHELLMEも同じこと思っていたらしいです(笑)。
——3曲目の“INSOMNIA”はどういう曲ですか?
Ryan.B:文字通り「不眠症」の曲です。このアルバムの全体のテーマが、普段幸せな人ではなくて、日頃苦しんでいる人に向けたものなので、そのまま不眠症で悩んでいる人へ書きました。誰しも嫌なことがフラッシュバックして寝られない経験があると思うんです。最初に流れるガヤガヤとした部分には、特にPIGGSのメンバーが言われたくないワードを並べてみました。
プー・ルイ:私だったら「いつになったら売れるんだよ」とか。
BAN-BAN:私は「社会不適合者って本当にいるんだな」ですね。
Ryan.B:そこも注目して聴いてみてほしいです。
