Guiba、歌ものポップス拡張中──スケール・アップを目指したセカンド・アルバム『こわれもの』完成

Vo./Gt.アカツカの「歌ものをやりたい」という呼びかけに共鳴した熊谷太起(Gt.)、シェイク ソフィアン(Ba.)、礒部拓見(Dr.)が集まり2022年に結成されたバンド、Guiba。その後2023年にファースト・アルバム『ギバ』を発表し、2024年に入ってからもコンスタントに新曲をリリース。先日7月には〈Billboard Live YOKOHAMA〉でのライヴも成功に収めた。そんななか完成したセカンド・アルバム『こわれもの』。今作ではホーンやクラリネット、パーカッションなどさまざまな楽器をフィーチャーし、ポップスにおける幅の広がりをみせている。今回のインタヴューは、『こわれもの』のダウンロード特典の歌詞を追いながら一聴したのちに読んでいただきたい。作詞作曲を担当するアカツカが歌詞で描いているのは、甘酸っぱい恋心やゆらめく淡い記憶の断片──かと思いきや、話が進むうちに思いもよらない突飛なエピソードが露わになっていく。
【歌詞ブックレット特典】ポップス要素を盛り入れた最新の“Guibaサウンド”
INTERVIEW : Guiba

Guibaの魅力をひとことで表すのは難しい。あることを表現しようとする時に目新しさや技術を武器としない場合、何を選び取るかというセンスが大きく問われるように思う。Guibaには大まかにいうとその“センス”がある。それはメンバーがそれぞれにSouth Penguin、Helsinki Lambda Club、Group2、odolといったバンドで活動してきた経験値によるものかもしれない。どこか余裕さえも感じ、それが色気となって彼らを纏う。かと思えば、取材時には隙あらば怒濤のユーモアを仕掛けあうメンバーの姿も垣間見た。拾っても拾いきれない、Guibaの魅力がまだまだあるようだ。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 石川幸穂
写真 : 斎藤大嗣
目指さなくても結果的にGuibaの個性が出ている
──ファースト・アルバム『ギバ』から約1年、心境の変化や周りからの評判など、どのように感じていますか?
熊谷太起(Gt.):サブスクでの再生数が増えたり、聴いてもらえている実感はありますね。ライヴがあまりできていない分、制作に注力できています。
シェイク ソフィアン(Ba.):今年に入ってからはアカツカさんの曲作りのペースがより早くなった印象があります。現時点でもうストックがめっちゃありますもんね。
アカツカ(Vo./Gt.):サード・アルバムのデモも大体できてます。
──どんどん曲が生まれてくるのはどうしてでしょう?
アカツカ:もっともっとGuibaを大きくしていきたいんですよ。ライヴの需要を高めるためにも、いい曲作ってライヴに行ってみたいと思わせるしかないという思いに駆られているところはあります。

──〈Billboard Live YOKOHAMA〉でライヴをやったり、着実に力を上げてきていますよね。それでもまだ足りないとは思いますか?
アカツカ:全然足りないですね。僕のビジョンでは、去年の紅白歌合戦に出ていたはずだったので。
礒部拓見(Dr.):そうだった(笑)。
──Guibaのオリジナリティが徐々に確立してきたと思うんですが、皆さんはどんなところにオリジナリティを見出していますか?
アカツカ:うーん、なんでしょう(笑)。メロディは僕の癖が反映されているので僕の好みのものにはなっていると思います。その中でもGuibaの歌ものができてきたのかなという印象です。それは僕の歌ものでもあり……。言語化は難しいですが。
シェイク:この前〈Billboard Live YOKOHAMA〉でライヴしたときに初めて両親に来てもらったんですよ。そのときに母が言っていたのは、「メンバー1人1人が個性的で楽しかった」というのと、「熊谷さんのギターがサイケでかっこよかった」ということで。僕たちとしては熊谷さんのサイケっぷりを立てようとしているわけではないんですが、垣間見える要素がそういった感触につながっているというのは、結果的にメンバーそれぞれがやっていることがGuibaになってるんだと思います。意識してGuibaっぽいサウンドを目指しているのではなくて、結果的にGuibaらしさが出ているというか。

アカツカ:僕らは別に上手いバンドではないので、上手いバックバンドをしたがえた人たちとは違うアプローチで勝負しないといけなくて。基本的に技術面をどうカバーするかを考えているから、それぞれのパートに個性が出てくるのかもしれないです。
熊谷:僕たちがめちゃうまだったら逆につまらないものになってたかもしれない。
──上手いと自覚していないからこそ、個性が生まれてくるというのは面白い話です。礒部さんはGuibaらしさをどう感じていますか?
礒部:アカツカさんの歌詞って、どこか古めかしいラヴソングみたいな印象があって。昔の歌謡曲っぽさをドラムで出していきたいという思いがあります。シティポップよりも骨のあるようなドラムを意識してますね。なので柔らかいポップスの枠にとらわれない、少しパルスがあるようなノリを出していきたいんですが、セカンドでは上手く出し切れなかったので、サードで……(笑)。
アカツカ:セカンドが発展途上みたいな(笑)。
──なるほど。7月15日に行われた〈Guiba at Billboard Live YOKOHAMA 2024〉はどうでしたか?
アカツカ:ビルボードさんからお声がけをいただいて、ファーストのリリース発表と初ライヴから約1年を記念して開催しました。それまでの集大成ですね。
──皆さん初めてのビルボードですもんね。
アカツカ:そうです。オリジナルカクテルも作ってくださって。“栃木”って曲のMV撮影で〈岩下の新生姜ミュージアム〉というところにも行ったので、その新生姜を使ったカクテルだったんです。でもライヴ中に調子に乗ってそのカクテルを紹介しながら生姜を齧ったら、めちゃくちゃ喉にきてしまって。その後の歌はズタボロという辛い思い出が……。
──(笑)。
熊谷:ビルボードのライヴでバンドのクオリティが一段上がった感覚があったので、いい機会でした。
──ファースト以降、アレンジをする上での変化はありましたか?
熊谷:僕らが目指しているものは、もっと幅があってスケールが大きいものなんですよね。そこにどんどん近づくように意識してます。セカンドをリリースしたタイミングですけど、サード・アルバムでやっと僕らがやりたいことができてくるのかなと。いまは拡張してる最中です。

シェイク:僕もそれを感じていて、いろんな楽器を入れてバンド・サウンドに拡張するような音楽にしたいという意識があったんです。そういう実践をしながら出来上がったセカンド・アルバムなので、サードはそれを前提とした曲作りになるんじゃないかなと。なのでサードめっちゃ期待しておいてくださいという気持ちですね。
──もうサード・アルバムを見据えてるんですね! その実感があるのはすごいです。きっと皆さんが他にもバンドを経験しているからこその視点ですね。
礒部:1作目のときは歌を大事にしてできるだけナチュラルなところに重きを置いてたんですけど、今作ではもう少しポップス的なエッセンスを足していきたいなっていうのを各々感じたところで。特に“写真集”はポップスらしい転調も盛り込んだので、聴かれ方も変わっていったらいいなと思います。
