インスト・ロック・バンドとしての矜持を積み重ねた20年─強固で柔軟なLITEの更なる未来

インスト・ロック・バンド、LITEのニュー・アルバム『STRATA』は、収録曲の半分にヴォーカルが入っていた。前作をリリースしてから、約4年半。この間にLITEのスタンスに変化が訪れたのだろうか? そんな疑問を抱きつつ、武田信幸(Gt / Vo)のバリエーション豊かなヴォーカルに確かな興味も持ちながら挑んだ今回の取材。リリースまでの4年半を振り返りながら、いまのLITEに徐々に近づいていくと、そこにあったのは変わることのない音楽への探究心と長い時間をかけて培ってきたメンバーへの信頼感だった。2月17日(土)に控える、LIQUIDROOMワンマンのリハーサル前の彼らにスタジオで話をきいた。
LITE『STRATA』をハイレゾで!
INTERVIEW : LITE

取材:飯田 仁一郎
文:梶野有希
写真:斎藤大嗣
20年活動をしていてもまだやっていないことってわりとある
──前作から今作『STRATA』をリリースするまでの約4年半はどのような時間でしたか?
武田信幸(Gt / Vo):コロナ禍で海外へ行けなかったので、その分近くてコアな人たちへ向けた活動が多かった印象です。だからこそ、いままでは海外ベースで考えていたところを、今作ではあまり意識せずにフラットに考えることができました。海外でどう受け入れられるか、どうやったらライヴで沸かせられるかっていうパフォーマンスを意識して活動してきましたけど、音源寄りになりましたね。
井澤惇(Ba):海外へ行けない、しかも日本でもライヴができなかったので、その分作品をずっと作り続けていました。前作『Multiple』(2019年)を出してからは、ありがたいことに映画『騙し絵の⽛』やNetflixオリジナルアニメーション映画『ブライト:サムライソウル』など、サウンド・トラックのオファーをいただいたり、さらにDÉ DÉ MOUSEさんとのプロジェクト、Fake Creatorsがはじまったこともあって、新しい挑戦を作品に落とし込むことをずっと数珠つなぎにやっていた感覚ですね。
──なるほど。コロナ禍での作品作りはいかがでしたか?
楠本構造(Gt / Syth):基本的にデータのやり取りでした。誰かが作ったデモに合わせて、そこからどんどん乗っけていく、みたいな。ただFake Creatorsでもそうですし、LITEはコロナ禍よりも前の段階からこのスタイルなんですよね。
──コロナ禍でのLITEの動きは、みなさんの技術力と楠本さんがエンジニアもできるという総合力が大きかったのかなと。
武田: そうですね。(楠本)構造が機械にいちばん強いと思うので、ステイホームしながら生演奏する企画〈Stay Home Session〉(2021年1月開催)でも、僕はサポートをしている形で進めることができました。
山本晃紀(Dr):でもOBS Studioや配信の設定は武田が主体でやったよね。
武田:そうそう。それでその後も何回かこの企画を続けることになったので、音をパソコンに取り込む用の機材をより良い音で録れるものに変えたら、レコーディングもいい音で録れるようになったんです。そのあとミックスのやり取りを構造と(山本)晃紀でしてなかったっけ?
山本: そうだね。ドラムのエディットやテイクの選定をZoomでやり取りしたね。LITEの音ってめちゃくちゃ細かいから、「この音!」っていうやりとりもオンラインでリアルタイムでできたのはよかった。
楠本:そういうツールを使うのが得意なバンドなんだろうね。
──約4年半の期間の動きは、今作にどのようにつながっていますか?
井澤:僕はLITEとして活動ができない期間も動きを止めたくなくて、JunIzawa名義でソロ作品を制作していたんです。それを経たことによって今作は、自分がイニシアチブを取るわけではなく、"4人のなかでのベーシスト"としての役割をすごく考えて制作することができました。
山本:映画『騙し絵の⽛』のサントラ制作のときに、監督さんから「もうちょっとキャッチーにしてほしい」というオーダーをもらったり、自分たちではやらないような客観的な意見を言ってもらえたのはすごく刺激的でした。いままで自分たちがやらなかった領域を他の人が拡張してくれたという経験は、今作に良い影響を与えていると思います。
武田:サントラ制作やFake Creatorsなど、20年活動をしていてもまだやっていないことってわりとあると思ったし、まだやれることはありそうだとも思ったんです。それで歌を入れてみることも本格的にはやったことがなかったけど、挑戦した結果、今作のバラエティに繋がりましたね。
──そもそも「活動20周年」は、いまの皆さんにとってキーワード?
武田:というより、バンドが続くことを最近よく考えるんです。この状態ってあと10年20年続くのかと思ったときに、なにかをやらないで後悔するのは嫌だなと思っていて。ただそれは「活動20年だから」が理由ではなくて、あとバンドが何年続くのかって考えるからこそやりきろうというニュアンスで。20年続くって奇跡みたいに長い時間ですよね。
井澤:20周年を迎えた思いを今作に詰め込んだつもりは全くないんです。そもそも今作をリリースする前に20周年を迎えていますし、そのタイミングでなにかやりたいねって話は2年前ぐらいからしていて、周年はあくまでも作品作りのきっかけのひとつというか。

