“秋刀魚“は間違いなくキラーチューン
──きのホ。は、2025年2月26日に「秋刀魚 / 新パラドックス」を、そして3月5日には「傾いてる / そして今日」を2曲ずつリリースします。今回新曲4曲を2回に分けた理由ってなぜなんでしょう。
ポテト : 前作のアルバム『都スカイハイ』の時もそうだったんですけど、僕は曲順をすごく迷うんですよ。今回新曲が4曲できたんですけど、曲順に意味を考えた時に結局まとまらなかったんです。でも4曲のなかの1曲だったら埋もれてしまいそうな曲も、2曲ずつだったらしっかり聴いてもらえるかなと思って、分けることにしました。イメージとしては“秋刀魚“、”傾いてる“がA面です。SMAPの“オレンジ“(シングル『らいおんハート』のカップリングとして収録)みたいな、B面だけどすごく名曲ってあるじゃないですか。“そして今日“はそんな感じかなという気がしています。
──今回この4曲はどういうイメージで作ったんですか?
ケンヤ : 今回出た4曲は、わかりやすく耳に入りやすい言葉を選ぶことを意識しました。あとメロディーもできるだけキャッチーにしています。そしたら繰り返し聴きやすいから、解釈もしやすいかなと思って。
──確かに、きのホ。のメンバーも“秋刀魚“の「百均で変わる暮らしを大事にして」のところが好きだと言っていましたよ。
ケンヤ : お金に余裕が出てきて良い家具とかを揃え出す未来を想像したら、百均の商品にワクワクしたり一喜一憂したりする、今のリアルな生活って大事だなと思ったんですよね。
──そこと「秋刀魚」というワードがどう結びついたんですか?
ケンヤ : 僕は常にメモ帳を用意していて、引っかかったことを書いていくんです。だから秋刀魚が繋がったというより、そのメモが近くにあっただけなんですよ。思考の流れって不思議で、これを考えていたはずなのにあれを考えているみたいなことってあるじゃないですか。「百均で変わる暮らしを」って考えたあとに「自分に嘘をつかずに」と考えて、そのあと「海が見たいな」と想像しているうちに「海を泳ぐ秋刀魚が出てくる」みたいな、あんまり意味のない思考の繋がりですね。
ポテト : 「秋刀魚」は、居酒屋やってるウチのマネージャーのお父さんが「今年の秋刀魚はほっそいで〜」と言っていたのをメモったんだよね。
──ロック調のメロディックなサウンドに仕上がったのはなぜですか?
ポテト : 2024年にリリースした『都スカイハイ』は色んな音を入れてみたり、チャレンジングなこともやってみたんですけど、今回は骨太なドラム、ギター、ベースで成り立っているようなバンド感のあるものにしたかったんです。きのホ。自体の勢いも出てきているから、その勢いをバンドサウンドの荒々しさで出したいなと。
ケンヤ : デモ段階でも割とロックだったんですけど、秋刀魚はもっと分かりやすくギターロックにしたいという意志があったと思うんですよね。
ポテト : デモでは、メロディとか歌詞はこのままなんですけど、リフは全然違ったんです。でも僕が爆発させたいからもっと激しいのにしようってことで、エンジニアさんと一緒にリフを色々入れてみて、その中から一番爆発していたのを今回のリフにしました。
ケンヤ : エンジニアさんがたまたまギターを弾ける人で、目の前で弾いたリフを採用したんです。“秋刀魚“は間違いなくキラーチューンだし、きのホ。の節目になる曲になりましたね。
──“新パラドックス“はケンヤさんの歌詞の難しさが爆発した曲だなと思っています。
ケンヤ : 歌詞を書いてる時って、部屋にいるときの手の届く範囲内のことはできるだけ歌わないようにしているんですけど、結局書いちゃいましたね。自分の部屋の窓から外が見えていて、落ち着いた部屋の中からみてるけど、「ここは世界の果てなんだな」とか思ったり。“新パラドックス“はそこから作詞がスタートしました。
──ケンヤさんのお家から広がっていく感じなんですね。
ケンヤ : そうですね。この曲に出てくる「メトロライン」は造語なんです。この曲を作った日に、きのホ。が〈京都METRO〉でライヴをしていて、すごく清々しい日だったので、その言葉が浮かんだんですよ。僕のイメージではあのライヴハウスの地下が無限に広がっていくようなイメージです。Bメロは美術館のイメージですね。名前も知らない絵だけど、惹き込まれていって、でも結局最後は違う誰かのことを考えちゃっていたり。
──この曲のポイントはどのあたりにありますか?
ケンヤ : 自分のなかで、イントロとAメロの歌い出しのコードとメロディがスマッシュヒットしたんですよ。ここに京都が持つ温故知新みたいなところがあるように思いました。
ポテト : 僕もこの曲はAメロがサビだと思っているくらい好きですね。あとはバンドっぽいグルーヴかな。僕は、アイドル曲としてやる以上は、ある程度リズムがあってノリが良くあるべきだと思っているんです。だから初見で聞いてもノレるようなリズムにアレンジしました。最初は、最終形態を想像できていないままドラムを叩いていたんですけど、ちゃんと収まった感じがします。
