「Vector」は今のT.M.Pのことを表している
——7月3日には初のフルアルバム「Vector」がリリースされます。どんなコンセプトで制作を進めたんですか?
Taochy:ライヴハウスのイベントだと1アーティストの持ち時間は30分くらいに設定されることが多いですが、本当はアーティストそれぞれに一番魅力が発揮される持ち時間があると思っています。T.M.Pはアッパーな曲が多くオーディエンスの体力も消費させるので、フロアの盛り上がりを最大限維持したままライヴを終えるには20分が最適だと考えていて、主催者から30分セットを頼まれてもあえて20分に縮めてもらっていました。でも今後のためには、ワンマンやツーマンを想定した40分以上のセットも必要だと感じていて。だからアッパーだけど、ミドルテンポの曲を作ろうと思ってアルバムを制作しました。
——本作は『Scalar』と『Vector』という2つの概念が大きく関わってくるそうですが、どういう思いを込めたんですか?
Taochy:『Scalar』と『Vector』は物理学の概念の言葉なんです。『Scalar』はモノのもつ「質量」、『Vector』は物体が質量をもってどう運動しているかを示す概念です。それを人間の性質と行動に振り分けて考えて、「Scalar」がその人の性格や身体、アイデンティティ、「Vector」がそれらをもってどうしたいのかに当てはめました。
——なるほど。
Taochy:「Vector」は今のT.M.Pのことを表しています。T.M.Pはいろんな人に聴いてもらいたいし、ライヴに来てもらいたい。その目標に向かって僕たちは動いているんですけど、世の中にはなんとなく生活している人もいる。そういういろんな人の生き方を歌詞のテーマにしていきました。
——1曲目の“Scalar”は最後の“Vector“と対になる楽曲だと思いますが、どう作っていったんですか?
Deewa:“Scalar”のアウトロは最後の曲“Vector“のメロディで、“Scalar”のメロディは“Vector”のアウトロになっています。表裏一体みたいな感じですね。
Taochy:本当はもっと長い曲だったんですよ。途中でイントロ曲に方向転換しました。
——そこから先行配信もされていた“7th World In The Computer”につながります。
Taochy:僕は人類がバーチャルの世界で生活するようになったら、新たに第7感が芽生えるかもしれないと思うんです。歌詞はそういうイメージで作りました。
Deewa:この曲には Taochyの好きな「Undertale」というゲームの世界を歌詞に落としこんでいます。「Undertale」はモンスターの世界に人間が迷い込んでしまって、その世界を冒険していくゲームですね。ちょっと暗い設定なんですけど、そこを少しサンプリングしました。
——3曲目の“Land of Promise”はどんな曲になりましたか?
Taochy:ギターから始まる勢いのある曲が1つはあった方がいいだろうと思って作りました。「俺らは自由だから踊りまくってやるぜ」という強い意志が感じられる曲です。
——4曲目の“HyperDream”はどう作っていったんですか?
Deewa:“HyperDream”という名前の通り、ここには2人の夢を詰め込みましたね。
——歌詞にはヒーローというワードが出てきますよね。
Taochy:ヒーローって実際にはなかなかなれないから、これもひとつの「夢」だなと思って、ヒーローについて書いた自分につっこむ形で歌詞を完成させました。「エレメンタルヒーロー」は遊戯王に出てくるキャラクターですね。
——「J.A.R.V.I.S」は映画「アイアンマン」に登場するサポートAIのことですよね。
Deewa:そうです。ジャーヴィスを作ったトニー・スタークは、戦争で使う武器を作ることにうんざりして、そのノウハウを、人を守る方向にシフトさせたんです。バックグラウンドのあるヒーローのイメージです。また、ヒーロー像を表現するためだけじゃなくて、「夢」が繋がっていくイメージを表現するためにもマーベル作品の名詞を取り入れています。僕は、みんな誰かが夢をもって作ったものを使って、夢を見ていると思うんです。例えば、僕が持っているギターも、このギターを作ることを夢に見ていた人がいて、今そのギターを使って僕は夢を見ている。マーベル作品にもそういうニュアンスがあるので、その世界観を取り入れてみました。
——5曲目の“Ghost”はどういうイメージですか。
Deewa:「Scalar」と「Vector」という概念に沿って歌詞を書くときに、「Ghost」という身体性がないけど、1人の人を守るという「Vector」だけがあるような主人公をイメージしました。
Taochy:楽曲はアンダーワールドの「Two Months Off」をリファレンスにしました。T.M.Pは淡々とグルーヴが持続する曲がなかったので、ライヴセットを40分に膨らませるときに必要だと思い作りましたね。
