OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.203
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
青春はエモすぎない
2022年の冬は、アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」にハマっていた。
この「ぼっち・ざ・ろっく!」(通称、ぼざろ) は高校生がライブハウスを中心に活動するバンドをテーマにしたアニメ。僕も高校時代はコピーバンドをやっていて、学校を越えた対バンもやってきたので、「こんなに上手くいかんやろ」とツッコミを入れながらも、自分のあの頃を思い出してグッとくることもあった。しかも、舞台は僕が以前住んでいた下北沢。何度も通ったあの道がアニメになっていることへの感慨もあった。
また、バンドをテーマにした作品ということもあり、主題歌はもちろん、劇中歌にも気合が入っているのだけど、その制作陣には、数多くのアニソンを手掛けてきた草野華余子やZAQのほか、谷口鮪 (KANA-BOON)、中嶋イッキュウ (tricot)、北澤ゆうほ (the peggies)、ヒグチアイといった邦楽ロック好きならば、がっつり刺さる名前が並ぶ。先日リリースされた劇中バンド、結束バンドのフル・アルバムは、下北沢発のバンドらしさ全開の作品に仕上がっていた。
アラサーの音楽好きサブカルマンの心をこれだけでも打ち続ける「ぼざろ」だが、僕が思う今作の魅力は、「エモすぎない」ことにあると思う。確かに、重度の人見知りながらもバンドを通して成長していく主人公、後藤ひとりの姿には本当にグッとくるし、彼女を取り巻く環境も理想的だと思う。しかし、そういうものを単純に「エモ」や「感動」にしすぎない演出の塩梅が本当に絶妙だと思う。人によってはカラッとしすぎだとか、もっと泣かせてくれ!と思う人もいるかもしれない。青春ってエモいだけじゃないし、エモいだけが青春でもない。そういう「エモすぎない」ところが僕の心を掴んで離さないのだ。
