CYNHNがバンドセットワンマンで示した、彼女たちなりの「解答」──〈アウフヘーベンツアー〉ツアーファイナル

CYNHNの全国ツアー〈アウフヘーベンツアー〉。そのファイナル公演が横浜1000CLUBで開催された。初のバンド編成で、大迫力のパフォーマンスを見せつけたCYNHN。その大熱狂のライヴの模様をレポートでお届けします。
CYNHNの4曲入りEP「アウフヘーベン」
REPORT : CYNHN〈アウフヘーベンツアー〉at 横浜1000CLUB
取材&文 : 西田健
撮影 : 真島洸
CYNHNの船はまだまだ大きくなれる。そんな可能性を感じるライヴだった。
冬の訪れを告げるような強い風が港町に吹き荒れた、2023年11月18日。横浜1000CLUBにて、青色をコンセプトに活動するヴォーカル・ユニット、CYNHNの〈アウフヘーベンツアー〉、そのファイナル公演が開催された。
2枚目のEP「アウフヘーベン」を引っ提げて行われた今回のツアー。今年9月3日に初期メンバーの百瀬怜が卒業し、その後も歩みを止めず活動を続けてきたCYNHN。彼女たちはそれぞれが悩みながらも様々な考えを巡らせ、このツアーに臨んできた。このファイナルは、「アウフヘーベン」という作品を通して探してきた、彼女たちなりの「解答」を提示するようなものになるだろう。
会場へと向かうと、1000人近くの人々が横浜1000CLUBの客席を埋めつくしていた。この日はCYNHNにとって、はじめての生のバンドセットでのライヴ。楽曲の素晴らしさに定評のある彼女たちだけに、メンバーもファンも、このスタイルでのライヴを心待ちにしていたはず。今宵、彼女たちの楽曲がどのように紡がれていくのか、期待に胸が高まっていく。

開演予定時刻を過ぎ、SEが鳴り響く。そしてバンドメンバーに続いて、綾瀬志希、月雲ねる、青柳透、広瀬みのりの4人がステージに姿を現した。セットリストの1曲目は、アカシックが手がけた楽曲“ジンテーゼ”。 そのパフォーマンスは、バンドチームの演奏に後押しされて、明らかに迫力が増していた。そこからさらに、“イナフイナス”、“アンサンぶる”、“wire”と、序盤から間髪入れずに畳み掛けていく。
CYNHNの楽曲はどれも、演奏にかなり高度なテクニックを要するものばかりである。この日のためにバンド陣は、ライヴに真剣に向き合い、楽曲の魅力を引き出していた。もちろんメンバーもバンドの音圧に負けない、力強いヴォーカルと的確なパフォーマンスでそれに応える。そういうことができるのもメンバーそれぞれに実力があるからこそ。いつもと違う環境であっても、いつもより感情のこもった歌とダンスで魅せる4人の姿がそこにあった。


MCでは、バンドメンバーの紹介を挟み、意気込みを語っていく。時折、客席とのコミュニケーションを取っていくのだが、これが抜群に上手い。楽曲やパフォーマンスが注目されることが多いCYNHNだが、こういったパーソナルな部分のおもしろさも魅力のひとつなのだと、声を大にして言いたい。
“キリグニア”でスタートした、続いてのブロックでは、“リサイズ”、“サファイア”といった、EP「アウフヘーベン」収録曲を立て続けに披露。“サファイア”では、曲の中でポエトリーリーディングという新しい表現にチャレンジし、新たなCYNHNの魅力を打ち出していく。
CYNHNにとって、はじめての全国ツアーとなった今回の〈アウフヘーベンツアー〉。北海道、名古屋、大阪、福岡と巡りながら、様々な人々と出会ってきた4人。この横浜でのツアーファイナルに来ていたCYNHNふぁんずの中には、関東圏以外からの遠征組も多く見られ、その魅力が広がっているのを感じた。


後半戦は、バンド編成ならではのバージョンで“夜間飛行”、“氷菓”を披露。音源とは異なり、しっとりと聴かせるアレンジに仕上がった2曲。シンプルな編成だからこそ、美しいハーモニーが浮かび上がり、うっとりと魅了されてしまった。ライヴはそこから、朗読の形で次の言葉を紡いでいく。
一筋の光が天体の軌道のように弧を描いて
私たちを飛び越えていく
私たちはそれをただ横目で見ながら
流されないようにふんばっていた
陽炎のように淡く儚く揺れる
破片をひとつひとつたぐりよせ
今、私たちは前を向く
正しくなくてもいい、安牌な回答でもいい
大丈夫、今日も笑えるから
そして歌われたのは“AOAWASE”。まるで物語の世界に導くかのような演出だ。さらに、それまでの空気を一変させるように、“楽の上塗り”では大きな笑顔を見せる。このライヴのための特別な演出に、彼女たちの想いがしっかりと詰まっていた。

“楽の上塗り”でハッピーな空気を充満させた後はコール&レスポンスの時間。会場を2つに分け、上手をクラップ、下手をコーラス担当に指定し盛り上げていく。この時間のメンバーの煽りがしっかり堂に入っており、観客も乗りやすい雰囲気ができていたのが見事だった。そこから「鼓動をもっと聞かせて!」と“タキサイキア”になだれ込み、さらに“ベイビーブルー”、“ごく平凡な青は、”へとシームレスに繋ぐ。
終盤は、バンド陣の圧巻の演奏から代表曲“水生”をパフォーマンス。そして本編最後は、EP「アウフヘーベン」に収録された、クレナズム謹製の“スターレット”で締める。どんなに深い暗闇の中でも諦めない、 CYNHN4人の希望の歌が響いていた。
アンコールでは“2時のパレード”を披露。その後のMCでは、青柳透がこれからの目標として「二つやりたいことがある。もっと大きい箱でライブをしたい。そして絶対にアニメのタイアップをやりたい」と宣言。言葉にすれば、願いは叶う。実際、このバンドセットでのライヴも、その言葉が形になったものだ。想いのこもった宣言に呼応するように、客席からは大きな歓声が上がり、最後は“はりぼて”で大団円を飾った。
CYNHNがたどり着いた「解答」とは、いったいなんだったのか。それは、きっと悩みや苦しいことがあっても、先を見据えて進んでいくということだったのだと思う。この日のライヴの一体感や、パフォーマンス、そして笑顔、その全てが彼女たちの想いを物語っていた。
コロナ禍での活動やメンバーの卒業を経ながらも、初の全国ツアーを大成功に収めたCYNHN。彼女たちの乗る船は、これからどんどん大きくなっていくだろう。もうどんな嵐が来ても大丈夫だなと思わせるパワーもある。きっとアニソンタイアップだって、夢じゃない。CYNHNは間違いなく、いま観ておくべきグループだ。

CYNHN〈アウフヘーベンツアー〉at 横浜1000CLUB セットリスト
M1 ジンテーゼ
M2 イナフイナス
M3 アンサンぶる
M4 wire
M5 キリグニア
M6 リサイズ
M7 サファイア
M8 夜間飛行
M9 氷菓
M10 AOAWASE
M11 楽の上塗り
M12 タキサイキア
M13 ベイビーブルー
M14 ごく平凡な青は、
M15 水生
M16 スターレット
Encore
En1 2時のパレード
En2 はりぼて
CYNHNの4曲入りEP「アウフヘーベン」
CYNHN INFORMATION

「CYNHN(スウィーニー)」とは「青色」の意味。
DEARSTAGEとJOYSOUNDの共同オーディションで選ばれた綾瀬志希・月雲ねる・百瀬怜・青柳透のメンバーに、2022春ディアステージ・パーフェクトミュージック合同VOCALIST AUDITIONにて選ばれた広瀬みのりで構成される。
所属レーベルは""I BLUE""。
”青”の世界観をイメージした楽曲制作、”蒼”にこだわったビジュアルや演出、 楽曲の多くを手掛ける渡辺翔氏による”碧”く等身大の歌詞に彩られ、”青い未完のヴォーカルユニット”として歌を届けている。
また、振付・衣装制作・グッズデザインにもメンバーが携わり、一人一人のクリエイティブが光るユニットでもある。
●公式ホームページ
https://cynhn.com/
●公式 X
https://twitter.com/cynhn_ds