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INTERVIEW : モモコグミカンパニー

『コーヒーと失恋話』を読んだ。喫茶店の店主との話も面白いのだけど、各喫茶店にインスピレーションを受けて書き下ろした短編のおもしろいこと! 「モモコさんの短編、こんなに面白いんですね! すごいじゃないですか!!!」って担当編集にメールしてしまったほど。せっかくなのでこの本の背景だけでなく、音楽のアルバム発売時に取材をするように、一編一編詳しく訊きました!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 西田健
写真 : 大橋祐希
「芸能人が片手間でやってる」みたいに思われたくなかった
──今回出版された『コーヒーと失恋話』は、モモコさんのオフィシャルWEBサイト「うたた寝のお時間」で連載されていた「コーヒーと失恋話」に、書き下ろし小説を加えた作品です。まずWEB上に掲載されていたものを、まとめて本にしようと思ったきっかけを教えてください。
そもそも、この「コーヒーと失恋話」は本を作るためにはじめた連載だったんですよ。コロナ禍に入ったときに、自分の媒体が欲しくなって、お世話になっているSWの西澤(裕郎)さんにホームページを作ってもらったんです。そのホームページを作るときに「『コーヒーと失恋話』という連載をやって、それを後で本にする」という約束をしていたのが、実現したという感じです。
──自分の媒体が欲しいと思ったのはなぜだったのでしょう?
コロナ禍に入ってから、SNSで自分の考えを発信することがどこかやりづらくなってきたんですよね。そこで気兼ねなく発言できるプラットフォームが欲しいと思ったのが大きな理由です。ホームページではBiSH解散の1ヶ月前くらいから、しっかり記録を残そうと思って毎日日記を書いたりしていました。
──「コーヒーと失恋話」の連載では、ご自身で取材もやられていますよね。
インタヴュー記事って結構書き手の思いが反映されるじゃないですか。いままで取材を受ける側はやってきたんですけど、逆に自分がインタヴュー記事を書いたら、どういう風にまとまるんだろうという興味があってはじめました。

──純喫茶の店主に話を訊きにいくという企画の発案はどういうところから?
私、もともと純喫茶が大好きなんですよ。「このお店のマスターはどんな毎日を過ごしているんだろう」とか、「どういう気持ちでお店を作ったのかな」って気になっていたんですけど、上手く話しかけられなかったんです。でも、それを取材の名目にしてしまえば、恥ずかしい気持ちもなく話ができると思ったので始めました。
──モモコさんにとって、「純喫茶」とはどういう場所ですか?
純喫茶の定義っていろいろあるかもしれないんですけど、「カフェ」は作業をしに行ったり誰かとの待ち合わせに使ったり、そういう目的があって使われることが多いと思うんです。でも純喫茶ってお店によっては「喋っちゃいけません」とか「PCを開いちゃいけません」とかいろいろ決まりがあるんですよ。だから純喫茶に行くこと自体が目的になって、一種のエンタメみたいな要素もあると思っています。私のなかでは“静かなテーマバーク”です。
──なるほど。“静かなテーマバーク”ってすごく良い表現ですね。
BiSHとして忙しい日々を送っていた時も、じっくり自分に向き合うことができるオアシスとして純喫茶という存在がありました。考えごとをするのが好きなので、純喫茶はすごくぴったりな場所になっていたんです。
──実際に取材してみて、この連載はモモコさんの人生にどんな影響を与えましたか。
実際取材してみると、お店とお客さんの関わり合いを考えたときに、たとえ喋らなかったとしても、マスター独自の人対人のコミュニケーション術があるんだなと感じました。私自身も、人とうまく話せる方法や、ためになるお話が聞けたんですよ。毎日お客さんと接することを生業としている方たちなので、それぞれのお店の流儀を知ることができました。
──モモコさんのなかで「純喫茶」に対しての考え方は変わりましたか?
例えば私が私語厳禁のお店に通っていた頃は、どこかマスターに見守られてる感覚があって、すごく安心できていたんです。今回そのお店に取材に行った時に、「私、お客さんとして来たことあるんですよ」って言ったら「やっぱり、そうですよね」と覚えていてくれました。そのとき、私が感じていた感覚を、そのままマスターが気持ちとして持ってくれていたんだと思えたんです。「だからこういう空間が出来上がっていたんだ」って、すごく腑に落ちました。

──取材場所はどのように決めていったんですか?
取材後にマスターのお気に入りの喫茶店を教えてもらって、それで全部繋げました。私も取材で初めて行ったお店ばかりでした。東京の笹塚のお店から、長野や函館にも行ったり、結構遠征もしましたね。
──今回の取材で自分の考え方が変わったことはありましたか?
今回はアポイントを取るところから自分でやったんですけど、「モモコグミカンパニーです」って言っても「誰?」、「知らない」っていう人が多かったんです。アポイントメントを断られたこともありました。BiSHで活動していた頃はどこに行っても自分たちのことを知ってる人しかいなかったから、その感覚に麻痺していたんだなと気づきました。そこに気づけたのも私にとっては良いことでした。
──良い機会ですね。アポイントはどのように取っていったんですか?
電話じゃなくて直接足を運びました。お客さんとして実際に1、2回行って3回目で話を持ち掛けたりしました。本当にやりたいことだったので、「芸能人が片手間でやってる」みたいに思われたくなかったんですよ。自分を受け入れてもらえることのありがたさ、話を聞かせてもらえたり時間をとってもらえることって、こんなにありがたいことなんだって思えました。
