2025/05/19 18:00

「月まで届いたとき、体がはじけて宇宙と同化した」──ayutthayaがEP「epoch」で描く音の宇宙旅行

ayutthaya
太田美音(Vo/Gt),右田眞(Ba)

煩雑な日常を硬質なロック・サウンドで爽快に蹴飛ばしてくれるayutthayaが、ついに宇宙まで飛んでいった!5曲入りの最新EP「epoch」は、曲を追うごとに地球から月へと近づいていくイメージを描いたコンセプト作品。これまで以上に歌詞に感情を反映するようになった太田美音(Vo/Gt)の変化と、楽曲の世界観に呼応し再構築する右田眞(Ba)のアプローチにより、バンドの新たなフェーズへの手応えがにじむ一枚だ。ふたりの視点から、今作に込めた想いを語ってもらった。

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コンセプトは「宇宙」、前作フルアルバムから2年半ぶりのリリース



■応募期間・方法
2025年5月14日 (水) ~ 2025年6月4日 (水) 23:59
ご購入時のOTOTOYアカウントにログインし、https://ototoy.jp/collections/_queues_に「epoch」があることをご確認のうえ、
https://ototoy.jp/contact/ より「プレゼントの応募」を選択し、
「ayutthayaプレゼント応募」とのご記入に続いて、
・お名前
・ご住所
・連絡先
・ご意見、ご感想
をご記入の上お申し込みください。

■対象ユーザー
OTOTOYにて、ayutthaya「epoch」のハイレゾあるいはロスレス音源をまとめ購入いただいたかた
※単曲購入は対象外となります。

■当選発表
ご当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。

INTERVIEW : ayutthaya

太田美音(Vo/Gt)と右田眞(Ba)によるオルタナティヴ・ロック・バンド・ayutthayaが、ファースト・フル・アルバム『Lighthouse』から約2年半のインターバルを経て5曲入りEP「epoch」を完成させた。NENGUの馬場庫太郎(Gt)とThe Novembersの吉木諒祐(Dr)をサポートメンバーに迎えて制作した同作は、5曲で地球から月へと飛び立つイメージを描く。繊細さと剛健さ、切なさとポップさを併せ持つayutthayaサウンドは健在ながらも、これまでよりも提示したい世界や景色が明確なのが新鮮だ。どのような背景から今作はできあがったのだろうか。太田と右田に話を訊いた。

取材・文 : 沖さやこ
撮影 : つぼいひろこ

苦手意識があったアレンジも、「やればできるんだ!」って

──ファースト・フル・アルバムの『Lighthouse』から“SUNNY”のゲリラ・リリースまで、約2年のインターバルがありました。この期間はおふたりにとってどんな時間でしたか?

太田美音(Vo/Gt):ツアーを回ったり、それ以外でも都内のライヴをぽんぽん入れたり、練度を上げる修行みたいな期間でした。サポート・メンバーがひとり変わるだけでも全然バンドの音が変わってくるので、バンドとしてメンバー同士の音を馴染ませていきました。

右田眞(Ba):『Lighthouse』あたりから視野や表現方法を広げるためにサポート・ギターを馬場庫太郎(NENGU)にお願いするようになって、自分もayutthayaでいろんなことを表現したくなってきてましたね。ただ家庭の事情もあって、個人的にはちょっと落ち込み気味になってしまって。自分のケツを叩きながら活動を続けてました。それでもやっぱり曲作りが始まると音楽に対するモチベーションも出てきて……という感じでしたね。

太田:そういう状況だったので、曲は個人的には作りためてはいたけれど、バンドには持っていってなかったんです。スピーディーに新曲を作れるタイプじゃないことに加えて、今回は全部の楽器のアレンジをデモの段階から考えるようになったので、もっと時間が掛かるようになって。


──“SUNNY”のセルフ・ライナーノーツによると、それぞれのメンバーに頼んでいた楽器のアレンジを、ご自分で考えるようになったそうですね。

太田:アレンジを考えることへの苦手意識があったので避けてたんですけど、これまでも自分のイメージしてるコード感が伝わってないなと感じることが結構あったんですよね。でもバンドの曲だからわたしひとりで作るものではないし、自分と違う解釈もそれはそれで面白いと思って受け入れたり、気になるところは「ここはこっちのほうがいいです」と頼んだりしていたんです。でも「絶対そこはそれがいい」というイメージが自分にあるなら、最初から入れておいたほうがいいなと思ったんですよね。

右田:美音ちゃんは歌っているメロディに対してギターを当てていくので、デモもほぼ手癖で明確なコードを弾いてないんですよ。そのぶんベースを決める自由度は高いから楽しいと言えば楽しいし、「なんなんだよ」と思うときもあったんです(笑)。

太田:でも今回わたしが先に暫定的なアレンジを考えたら、これまでは生まれなかった展開がいろいろできたんですよね。ベースラインをコードで入れてみると「これならギターはこうしようかな」という発想が生まれて、1曲1曲のイメージが今までよりもちゃんと自分の中で固まるようになったんです。


右田:最近気づいたことがあって。YouTubeでayutthayaのコピー・バンドの動画を観るんですけど、全体的になんとなくどのコピー・バンドも同じような印象を受けるんですよ。その理由が何なのかなとちゃんとチェックしてみたけど、そこまで粗がなくて。そのときに気づいたんです。どのコピー・バンドの子も、美音ちゃんポジションのギターの子がちゃんとコードを鳴らしすぎなんですよ(笑)。ギターが真面目に弾きすぎている。

──だから太田さんがメンバーさんにアレンジを頼むと、太田さんは頭の中で鳴っていたコードが鳴っていないという印象を受けるし、右田さんもベースを決めるのが面白くも難解だったということですね。点と点が線でつながりました。

右田:曲の構成上A7(エーセブンス)に聴こえるからコピー・バンドの子たちはA7を弾いてるんだろうけど、美音ちゃんはA7を弾いてないんです。そういうラフさは彼女の味でもあるので、ayutthayaの楽曲にはそれが結構反映されていると思います。

太田:たぶんほんとは鳴っちゃいけない音とかバンバン鳴ってるんですよね(笑)。でも歌の邪魔になっていなくて気持ち悪くなければいいかな、トータルでオッケーならちゃんとしたコードでなくてもいいかなと思っていて。でもたまに歌とコードのバランスが取れなくて、でも何がだめなのか自分でわからないから「ここが気持ち悪いんだけどなんでだと思う?」とみんなを巻き込んで何時間も掛けて考えたり。

右田:「理論上は大丈夫だけど、なんか違う気がする……」みたいなことがたまにあるよね。だから何よりもの正解は、楽しく気持ちよく歌えて演奏ができることかなと思っています。

──だからこそayutthayaがオルタナのセオリーにとどまらない独自の音楽になっているのかもしれませんね。

太田:まあ、そういうことか……?

右田:そういうことにしておきます(笑)。

太田:歌いながらベースを入れてみると「なるほど。こういうコード感になるんだ。じゃあBメロでこういうことができるじゃん」と気づくことも多くて。アレンジを考えるのは苦手だと思い込んでたけどやればできたんだ!という発見があったし、単純に便利だなと今更思いました(笑)。

右田:美音ちゃんがベースをルートだけでも弾いてくれると「こういう曲にしたいんだな」というのがわかるんですよね。それを踏まえたうえで「俺のアイデアはこうだけどどう?」と提案ができるので、そのやり取りを何回かして「じゃあ間を取ろう」とか「この曲は美音ちゃんに寄せよう」みたいに精査していけましたね。

この記事の編集者
石川 幸穂

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[インタヴュー] ayutthaya

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