ジャングルパーティー〈Tribal Connection〉100回の熱狂──DJ YAHMANのピュアな動機と姿勢
In search of lost night vol.07

In search of lost night vol.07
第7回 : Tribal Connection / DJ YAHAMAN Interview
東京の夜に煌々と輝く1つのパーティーがある。〈JUNGLE PARTY Tribal Connection〉、通称「トラコネ」。本能的に光へと吸い寄せられてしまう虫のように、高速ブレイクビーツと重低音に誘われて音の鳴る方へ行ってみると、待ち構えるのはジャングルをこよなく愛する、個性的なDJ集団。渋谷・宇田川町にある〈虎子食堂〉の扉を開けた先には、お酒片手にひたすら踊り続けられる刺激的なフロアが広がっている。そこに居合わせた者だけが享受できるジャングルの破壊力あるいは包容力、そして人の温もり。安心してDJとフロアに身を預け、これほどまでの多幸感に包まれるパーティーもなかなか珍しいのではないか。2009年に始動した〈Tribal Connection〉は形を変えながらも着実にオーディエンスの信頼を獲得。そして今年の11月11日に記念すべきVOL.100を開催した。1つの名前を冠したパーティーを100回も開催するタフネスさもさることながら、毎回手抜かりなくパーティー・メイクに向き合っているのがトラコネの信頼できるところであり、人々を惹きつける要因であろう。いま起こっているアンダーグラウンドな現場をアーカイブするための連載【In search of lost night】、第7回としてトラコネ結成メンバーの1人であるDJ YAHMANに、〈Tribal Connection〉前夜から100回の足跡、さらにはジャングルの魅力について話を訊いた。
INTERVIEW : DJ YAHMAN(Tribal Connection)

今年の11月11日に開催した〈Tribal Connection VOL.100 -14th ANNIVERSARY-〉はトラコネ・パーティーの中でも過去一の大盛況。eastaudio SOUNDSYSTEMから放たれた音は身体と心を震わせ続け、M-Beatの“Free”で音が止まるまでフロアは笑顔で満ち溢れていた。きっと、ジャングルの魔力を再認識できた一夜だったに違いない。トラコネ・オリジナルメンバーの1人であるDJ YAHMANは、人一倍柔軟な感性をもち、ジャングルという音楽を無邪気に楽しんでいる。加えてパーティー・メイクへの真摯な姿勢は一貫しており、ひいてはそれが「ジャングルが根幹にありつつも常に更新していく」というトラコネ全体のアティチュードにも通じてくるだろう。彼が仲間と共に14年もトラコネを続けてきた、あるいはジャングルを愛している理由は、ピュアそのもの。自由自在に踊ることができるジャングル、そしてその魅力を遺憾なくフロアに伝えられるパーティー / クルー〈Tribal Connection〉について、アーカイヴ資料たっぷりでお届けする。
インタビュー&文 : 草鹿立
レゲエでいう「アイリー」な感覚
——2009年10月17日に〈JUNGLE PARTY Tribal Connection〉というパーティー / クルーが始動しましたが、どのような経緯でスタートしたのでしょうか?
DJ YAHMAN:トラコネ開始以前から知り合っていたJUNGLE ROCKに、2003、4年あたりからパーティーに誘ってもらっていたんです。それでまず、2008年の8月に2人で〈麻顔〉というパーティーをやりはじめました。

——なるほど。〈麻顔〉はトラコネの前身にあたるパーティーということでしょうか?
DJ YAHMAN:前身というか、結果的に2人でその後トラコネをやるようになっただけというか。それで、2008年12月に〈JUNGLIST JAMBOREE〉という名前のパーティーをまたJUNGLE ROCKと主催して。それはeastaudio SOUNDSYSTEMを導入して開催しました。亡くなった朝本浩文さんというプロデューサーのram jam worldという別名義のプロジェクトの「JUNGLIST JAMBOREE feat. RYO the SKYWALKER」という曲が2人とも大好きで。その曲名を使いたいと本人に許可ももらってパーティーを始めましたね。しかも朝本さんにはゲストでも出てもらいました。
——なるほど。
DJ YAHMAN:そして2回目の〈JUNGLIST JAMBOREE〉を2009年6月に開催したんです。そこで、2人だけでやるものではないジャングル・パーティーをやろうと思って、新たに〈Tribal Connection〉を始めようと決めましたね。

——〈JUNGLIST JAMBOREE〉はどの箱で開催されていたんですか?
DJ YAHMAN:〈麻顔〉も〈JUNGLIST JAMBOREE〉も渋谷の〈ROCKWEST〉(現〈R LOUNGE〉)という箱で開催しました。〈ROCKWEST〉は〈CHAMPION BASS〉というジャングルのパーティーを開催していた箱でもあって。〈CHAMPION BASS〉は2002年に始まったので当時は7年目くらいだったんですけど、 5年目以降はあまり活動していなかったんです。そういうこともあり、JUNGLE ROCKと新しいパーティーをやろうとなりました。
——トラコネ以前にYAHMANさんが所属していた〈CHAMPION BASS〉のパーティーは、渋谷の〈module〉という箱でも開催していたそうですが。

DJ YAHMAN:そうですね。最初は東急本店の近くにあった〈module〉で開催しています。2002年9月末の木曜日に始まりました。その当時は平日もパーティーで埋まっていて、〈CHAMPION BASS〉も平日開催でしたね。平日とはいえ、お客さんは一定数来てくれましたよ。そこから〈ROCKWEST〉に移動した感じです。
——そして、〈Tribal Connection〉のVOL.1は〈shibuya HOME〉でスタートしていますが、当時の〈shibuya HOME〉はどのような箱だったんですか?

DJ YAHMAN:ライヴハウスなのでクラブっぽくはないですね。最初にジャングルのパーティーを始めるにはちょうどいいキャパとたたずまいでした。ある程度人も来てくれましたね。
——トラコネ名義のパーティー情報アーカイブTumblrを見ていて、当時のパーティーではライヴ・ペインティングや写真の展示が行われていたのを知りました。ライヴ・ペインティングなどが同時並行で行われているパーティーは今でも珍しいですが、それらをパーティーに組み込んだ理由は何ですか?
DJ YAHMAN:かかっている音楽に呼応してライヴペイントをやってほしくて。音からインスピレーションを受けて、白紙の状態から色や形が増えて最終的にどうなるのか、一晩いるとわかるようになっています。


——非常に面白い試みですよね。
DJ YAHMAN:ダンサーさんを入れるときもあって。ジャングルがかかるということだけを伝えて、ジャングルが好きなダンサーに来てもらいました。即興で踊ってもらって、こっちもそれに合わせて音を変化させたりして遊んでいましたね。もちろん毎回ではないですけど。
——なるほど。ライヴペインターとして、トラコネのロゴも手がけるREさんも参加していましたよね?
DJ YAHMAN:そうですね、ほぼ彼がやってくれましたね。
——そしてVOL.38あたりから〈虎子食堂〉へと拠点を移動しますが、なぜ移動したのですか?
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DJ YAHMAN:トラコネ3周年を〈shibuya HOME〉で開催したあと、〈虎子食堂〉へ移動したという流れなんですけど、3周年を終えて、パーティーを1度整理してパーティーとしての体力をつけようと思ったんです。あとは雰囲気を変えてみたいという話にもなって。〈虎子食堂〉はどう?と言ってくれた仲間がいたので、たしかにいいなと思い移動しました。
——そうだったんですね。改めて〈虎子食堂〉の魅力を教えてください。
DJ YAHMAN:〈虎子食堂〉は、レゲエでいう「アイリー」な感覚があるというか、あたたかな雰囲気があると思います。ジャングルの要素の1つである、結束感、ユニティーさを表現するにはちょうどいい場所だなと。〈shibuya HOME〉が地下にある箱だったので、ガラッと雰囲気を変えるのにもうってつけでした。お酒や食事も美味しくて、店に備えつけの音響システムは、かなりメンテナンスされていて、結構音が出ますよ。
