「自分に厳しく、人に甘く」がモットー
——そしてイギリスから帰国して11月20日からは、日比谷公園大音楽堂でのライヴに向けた実質フリーライヴツアー〈Actually FREE but You must come YAON Tour〉が開催されました。マチルダーさんにとって、このツアーはどんな経験になりましたか?
マチルダー:ならず者と関係が深まったツアーになりました。みんなチケット代の6000円を当たり前に出してくれるんですけど、それは絶対当たり前じゃないことだと思うんですよ。しかもそのチケットを家族や恋人に譲る人もいたので、人って温かいんだなって感じました。その分私たちも野音で恩を返せるようなパフォーマンスをしないといけないなと思いました。
——フリーライヴツアーで印象的な出来事はありますか?
マチルダー:やっぱり売り切れた瞬間は思い出しますね。これまでの人生で、ひとつの目標に向かってそれを叶える経験があまりなかったので、目標を達成するってこういう感覚なんだと思いました。
——具体的にはどういう感覚でしたか?
マチルダー:どんちゃん騒ぎというより、1回冷静になって後からじわじわくる嬉しさでした。しかも売り切れた瞬間に、そこにいたならず者たちも一緒になって喜んでくれたんですよ。嬉しかったですし、自信になりました。
——2023年12月23日に開催された〈But I Love You TOUR FiNAL -I can fly!!!!!!-〉は、ASPとしては2回目の日比谷公園大音楽堂でのワンマン・ライヴでした。1回目の野音のことは覚えていますか?
マチルダー:当時は入ったばかりで右も左がわからない状態で、野音という会場の大切さもよくわかっていませんでした。そこから野音について調べるようになって、そもそも2回も立てる会場じゃないということがわかりました。
——当日のライヴはどうでしたか?
マチルダー:フリーライヴでならず者と積み上げた思い出があったので、緊張はそんなにしなかったです。フリーライヴツアーで日本各地に行ったので、そこでチケットを買ってくれたならず者のことを考えていました。遠いところからわざわざ野音まで来てくれたならず者たちが、ちゃんと楽しめるライヴにしないといけないなと思っていました。
——マチルダーさんは野音公演で、すごく存在感が出てきたなと思いました。野音までどのくらい努力したんですか?
マチルダー:去年からボイトレを増やして、ダンスレッスンも始めたんです。ASPに入りたてのときは自分の歌が下手かどうかすらわからなかったんです。でもいま、自分の昔の歌を聴くと本当に下手くそだなって思うんですよ。それは自分が上手くなった証拠だし、歌詞をそのまま歌うんじゃダメなんだなと気づきました。

——野音を終えて新しい課題は見つかりましたか?
マチルダー:ならず者とフリーライヴツアーで作った良い空気感を、当日爆発できなかったんです。できた部分もあったけどもっとできたこともあったし、野音という会場に甘えていたんじゃないかなと思います。
——厳しいですね。
マチルダー:「自分に厳しく、人に甘く」がモットーです。
——2024年10月8日に開催される、日本武道館公演〈We are in BUDOKAN "The floor is all ours!!"〉も決定しましたね。そのことを伝えられたときは、どう思ったんですか?
マチルダー:玉ねぎとブドウの缶詰があったじゃないですか。玉ねぎを見た時点で、武道館を思いついたんですけど、現実主義者の部分があってASPの規模で「大丈夫か?」と思いました。でも野音で発表したとき、ならず者が喜んでいる姿をみて、そういう不安な気持ちは捨てて堂々と立ってやろうと思いました。
——武道館はどんなライヴにしたいですか?
マチルダー:そうですね。後にも先にもないライヴにしたいです。
——後にも先にもないライヴとは?
マチルダー:武道館という名前を借りなくても、かっこいい自分でいられるようなライヴにしたいですね。
