REVIEWS : 095 R&B(2025年4月)──R&B Lovers Club(Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemi)

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ3ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回から新たな書き手に加わってもらいます。今回はR&B偏愛&紹介ポッセ、R&B Lovers Clubより、Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemiの4人による、現行のR&Bのエッセンシャルな新譜9枚のレヴューをお届けしおます。
OTOTOY REVIEWS 095
『095 R&B(2025年4月)』
文 : R&B Lovers Club(Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemi)
Bathe 『Inside Voice(s)』
シンガーのデヴィン・ホブディとプロデューサーのコーリー・スミス=ウェストによる二人組のベイス。本作で聴かせるのは、ドラムの質感やフロウなどにヒップホップ要素を忍ばせつつも、スウィートネスが光る寂しげでメロウなR&Bだ。コーリーはギタリストとしての顔も持つが、そのプレイは主張しすぎずデヴィンの繊細な歌声に寄り添う。多重録音コーラスの美しさも素晴らしい。ブーンバップ的な太いドラムを使った曲でもほぼギターのみで歌う「Bby Boy」のような曲でも魅力の質が変わらない、非常に統一されたムードのある一枚だ。R&B Lovers Club的にはどこか1990年代っぽいメロディの「Fields」が一押し。(アボかど)
Che Ecru『On my way!』
ベイビー・キーム作品でサンプリングされ、クリス・ブラウンやブライソン・ティラーなどのソングライティングやプロデュースで活躍してきたシェ・エクル。ラップっぽい歌い方も得意とするシンガーで、本作でも冒頭の「Idk what you want?」や「Flowers in the air」など随所でそのスタイルを聴かせる。しかし、その歌声は基本的にはあくまでもR&Bシンガーの甘さがあり、サウンドの軸も浮遊感と内省的なムードのあるオルタナティヴR&Bだ。「What is you on」ではセクシー・ドリル、「La La La La La」ではジャージー・クラブを巧みに消化してR&Bに仕上げている。(アボかど)
Lola Moxom 「OXO」
Lola MoxomのデビューEP『OXO』は、UK R&Bの「今」を鮮やかに切り取ってみせる。Tori Kellyらに連なるソウルフルな歌心を核に持ちながら、サウンドにはロンドンならではの空気が充満している。特筆すべきは、キャッチーなメロディと、かげりを帯びるメランコリックな雰囲気の絶妙なバランス感覚。これぞUK印と言いたくなる魅力だ。しかし、単にクールなだけではない。生演奏を効果的に取り入れたプロダクションは熱気を帯び、彼女のエネルギー溢れる歌声と相まって、聴き手をぐいぐい引き込む力がある。まるでライブ会場のような臨場感の中で、パーソナルな心情を熱量ある音楽へと結実させる手腕は見事。この才能が今後シーンをどう塗り替えていくのか、期待せずにはいられない。(Cookie)