チッチの姉御肌が全面に出た曲
──アルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』は“破壊”がテーマでしたが、そのテーマがきたときモモコさんはどう思いましたか?
モモコ : “WiTH YOU”の作詞をしたんですけど、それは曲を聴く前に『GOiNG TO DESTRUCTiON』っていう題名だけ聞いて書いた詞なんですよ。“破壊”って聞いたときに”拳銃”って言葉がまず出てきて。あと、破壊されても残るものとか、消えてしまわないものってなんだろうっていうのをすごく考えて。愛とか恋とか素晴らしいけど、それもまた消えていって自分ひとりになったときになにが残るんだろうって思ったときに、“傷跡”、それを大切に抱えていくしかないんじゃないかなって思ったんですよね。ちょっと槍を投げるような歌詞も入れちゃいました。
──槍を投げるっていうと?
モモコ :「愛こそ全て」(“BROKEN”)とか「All you need is love」(“ALL YOU NEED IS LOVE”)とか、BiSHはずっと“愛”を歌ってるのに、「愛とかそんなもの」って言うのは真逆をいってるなって。「そんなもの」って言っちゃいけない気がしてて、これ大丈夫かなって思いながら出しました。ただ、愛がないところに傷つかないと思うんですよね、人って。興味がない人には悪口を言われてもなんとも思わないけど、やっぱり好きな人とか、愛を持って接している人に言われた一言のほうが自分の心に刻み込まれる感じがある。愛があるが故に傷つく、恋するが故に傷つくっていうのが絶対にあるし、私の場合、人と関わったあとに楽しい思い出も残るけど、なんとも言えない生傷みたいなのが残ることがあって。傷跡も裏を返せば愛なんじゃないかなと思います。

──アルバムのなかで印象的な曲はありますか。
モモコ : 助けられたのは“BROKEN”ですね。破壊の歌詞を書けって言われてるけど、やっぱり壊せないっていうのは自分の心境ともリンクしましたし、全体的にいまのBiSHの等身大って感じがします。7年目に入って、完成されていくが故にいろんなことを崩せなかったり、相手を思いやるが故に乱暴な言葉も吐けなかったり。でも言うことがすべて正解じゃないってみんなわかってるし、そういう葛藤みたいなのがいまのBiSHとすごいリンクしてるなって。いい意味で大人になりすぎて、優しくなってしまったから。
──それがバランスとして心地いいわけじゃないんですか?WACKのほかのグループに取材すると、そういうときみんな殻を破って話そうとするんですよね。でもBiSHはBiSHの距離感があるから入り込みすぎちゃうとダメだと言っていて、そんな人たちもいるんだなって驚きました。
モモコ : それはかっこよく聞こえるけど、ある種の弱さだったり、逃げでもあるなと思っていて。「あんまりぶつかり合わないでもわかり合ってます」って言うのはかっこいいけど、自分は特に人との距離感を詰められないので、ただ怯えてたり、逃げてるだけっていうのは絶対ありますね。ぶつかり合うことって絶対にリスクがあるから、そのときに致命的なことを言ってしまったり、それでグループが続かなくなったりすることもあるような気がして、私はそれがいちばん怖くて距離をとりすぎちゃうところもあるんですけど。本当はやっぱりぶつかり合えるのがいちばんいいのかもしれないですよね。そういったBiSHの葛藤が含まれてる気がします。

──なるほど。それぞれのメンバーの曲についても聞かせてください。まずアイナさんの曲、“NATURAL BORN LOVERS”。
モモコ : いいですね、アイナの曲。人間性がすごい出てる曲。「君のからだも ぼくのこころもそう 生まれたばかりだ」っていう言葉がすごく新鮮で。勝手に積み上げてきたものがあって、毎日自分の身体が古くなっていくって思うタイプだったので、今日の自分が新しいと思えるのって素晴らしいなって。だからアイナはあんなに素直なのかなって思いましたね。アイナは本当に生まれたばかりの言葉や表情をそのまま出してぶつけてくれる人で。後輩からも慕われてるし、アイナと話すのが好きな人はいっぱいいると思うんですけど、そういうところなのかなと思っていて。話しててすごい安心するんですよね。
──確かに、使い分けとかしない人ですもんね。
モモコ : うん。だからすごい尊敬してます。
──“狂う狂う”は?
モモコ : チッチの姉御肌が全面に出た曲だと思っていて。
──チッチさん姉御肌なんですね。
モモコ : 私が「どうしよう、いったほうがいいかな、いかないほうがいいかな」って躊躇しちゃうときに、「いっちゃいなよ!」って背中を押してくれるのがチッチ。背中を優しく押すんじゃなくて、ドーンと押される感じですね。そういう思い切りのいいところがチッチの尊敬できるとこだなって。チッチもいろんな側面がありますけど、この曲に関してはその姉御肌が強めに出たと勝手に思ってます(笑)。
