自分の生まれた日や命に着目して書いた曲
──ではここからは1曲ずつお伺いします。mini ALの1曲目“アンチ生活”は、どんな気持ちの時に創った曲ですか。
アユニ:もうこれは「私にはPEDROしかない」って気持ちが究極に湧き上がって、深夜にそのまま掻き殴るようにできたものです。
──「クソみたいな世界を 親みたいに抱きたい」という歌詞がすごく印象的でした。
アユニ:私は昔から「クソみたいな世界」だなと思って生きているんです。いろんな経験をさせていただくなかで「穏やかな世界がいいな」とか思ってたんですけど、納得いかないことばかりじゃないですか。日々生活するなかでも、「なんでこんなところにゴミ落とすんだろう」とか「なんで傘まっすぐ持たないんだろう」みたいなことで腹が立ってしまうんですよ。世の中いろんな人がいるってわかってても、わかり合えない人間も存在していたり。そういう不条理なことも多い中で、自分のパンク精神が溢れ出した楽曲です。
──その後に続く「親みたいに抱きたい」はどういう心情?
アユニ:自分自身、スーパーヒーローになりたいという気持ちがずっとあるんです。だからマイナスな感情で生まれた言葉たちでも、自分がそれを照らすような光になりたいと思っていて。それを「クソみたいな社会を 神みたいに救いたい」とか「クソみたいな世界を 親みたいに抱きたい」という言葉にしました。「親」という言葉を使ったのは包容力があるから。

──2曲目の“ラブリーベイビー”は、かなりキャッチーな曲ですね。
アユニ:これはテンションの高い状態の時に書いた曲です。サウンドもタイトルもありえないくらいキャッチーにしました。
──なぜテンションの高い状態だったんでしょう?
アユニ:常に心にはワクワクと不安を両立させていたいと思っているんですけど、書いたときはワクワク感の方が大きかったのかな。多分人と遊んで、外の世界が楽しかったときに書いたんだと思います。ひとりで家にこもってたけど、誰かが外に連れ出してくれたら希望に満ちた世界だった、みたいな気持ちです。
──歌詞もすごくポジティヴな感じがします。
アユニ:そうですね。でもこの曲では「極上の日々」とか言ってるのに、“アンチ生活”は「生活が嫌だから」とか言っていて、なんか情緒不安定なアルバムだなって思います(笑)。まあどっちも自分のなかにある気持ちです。
──3曲目は“祝祭”ですね。
アユニ:自分の生まれた日や命に着目して書いた曲です。「ハッピーバースデー」と歌っているものの「おめでとう」のときに使える曲ではないんですよ。以前友達から、人は誕生日が近づくとなぜか本能で「変わろう」と思ってしまうらしい、という話を聞いて「確かにそうかもしれない」って思ったんです。自分も以前は大人になるために、無理やり変わろうとしていたし、そのときの気持ちを思い出して書いてみました。大人だから落ち着いて穏やかに生きてみようとしたけど、やっぱりそれも無理だったな、とか。そういうぐちゃぐちゃな感じを「誕生日」をテーマに書いてみました。
──“明日天気になあれ”は、どういうときに書いた曲?
アユニ:これはチームプレイが好きだって思ったときに書いた曲ですね。いままでの人生はひとりでいることも多かったんですけど、いざこうやって音楽活動をしてみると、私はチームプレイが大好きなんだって思ったんですよ。歌詞の「帰る場所がある」というのは、自分にとっては「PEDRO」や「音楽」という場所だったり、ずっと仲良くしてくれてる家族のような存在の人たちのことです。自分の心に安寧をくれる、ふるさとみたいな場所と人ですね。
──「大人になって乗るブランコは こんなに怖いものだっけ」っていう言葉がすごく印象に残りました。
アユニ:やっぱり常日頃「大人になるって何だろう」って考えるんです。BiSHのときはメンバーに甘えてきたけど、もう甘えてらんないし、しっかりしなきゃいけないなって思うんですよ。でも大人が好きそうなものを好きになろうとしても、自分に合わなくて。こどもの頃好きだったモノが今でも好きですし。でも深夜に近所の公園でブランコに乗ったとき、「あれ? 子供の頃は楽しかったのに、いまはすごく怖いな」と思ったんです。それで無理やり大人になろうとしなくても、いつの間にか子どもじゃなくなっているのかなという気持ちを素直に書きました。
