主人公が名もなき山で、「君」が富士山です
──1曲ずつお話を訊いていきます。まず“Introduction”からスタートして、2曲目“The Birth of the Universe (主役は私だもん!)”は、宇宙の「誕生」と、「誕生パーティー」をかけているんですよね。
石田 : そうですね。この曲の主人公はダーク・マターです。つまりダーク・マターのような目立たない存在の女子高生が歌ってます。どの曲も、「この時代のこれが女子高生だったら」というイメージで歌詞を書いています。だからこれは「宇宙が誕生した頃のダーク・マターが女子高生だったら」というイメージですね。
──なるほど。“The Birth of the Atom (君をキャッチ)”は宇宙の何のことを歌っているんでしょう?
石田 : 原子核が電子をキャッチする話です。原子の周りを電子が回っているのが定説じゃないですか。だけど最初の宇宙では熱がありすぎて、電子があちこち飛んでいっちゃった。だけど冷えてきてやっと原子核の周りを電子が回るようになった、という話です。あるひとつの原子核が、電子について歌っている曲ですね。

──なるほど。“The Birth of Oxygen (気・が・す・る)”は?
石田 : この曲の主人公は酸素です。酸素は炭素と結合しやすいんですけど、ヘリウムは他の原子と結合しないんですよ。そういう何とも結合しないヘリウムのことを、酸素は気になってる、という話です。イメージとしては、ヘリウムは「気になる先輩」的な感じです。ヘリウムは、いわゆる「貴ガス」(※化学的にきわめて不活発で、他の元素とは容易に化合しない、18族元素の総称)に属するので、「気・が・す・る」というダジャレにしました。
──“The Birth of Earth (転入生インパクト)”は、月が主人公なんですよね。
石田 : 地球と隕石が衝突して月が生まれたらしいんです。でもまた衝突が起こったから、最初の月は地球の近くから飛ばされちゃった、という話をモチーフにしています。転入生が来てしまったから、恋する想いが届かなくなってしまったという話に重ねました。
──“The Birth of Life on Earth (貧乏ゆすりに誘われて)”はどうでしょう?
石田 : これは有機化合物が生命になる前の段階の話ですね。地球に生命が誕生するときのことと、眠い高校生活を重ねています。

──“The Birth of the Japanese Islands (二人乗りよりやばいこと)”は?
石田 : この曲は、日本列島が歌っていて、自転車が日本海。日本列島が自転車に乗って、遠くに行くイメージです。
ちよの : 「列島」だから最初、「劣等生」で始まってるんですよ。そういうダジャレもいっぱいあります。
──“The Birth of Mount Fuji (17歳はパーフェクトエイジ)”はどうでしょう?
ちよの : これは富士山が歌ってます。
石田 : 富士山は今後も噴火するけど、今は奇跡的に綺麗に見えている、という話です。17歳、つまり高2の今だけは落ち着いていてパーフェクトだけど、昔は噴火(=ヤンチャ)してたよ、という。

──次の“The Death of Mount Fuji (もう走れなくなっても)”は?
ちよの : 主人公が名もなき山で、「君」が富士山です。
石田 : これは富士山の終わりについて歌っています。
──“The Death of the Japanese Islands (ようこそホームルームへ)”は、ユーラシア大陸が主人公ですね。
石田 : そうですね。それもナレーションで、「ユーラシア大陸は、また(日本列島と)一緒になれて嬉しそうですね」と言っていて。だから戻ってきた「君」は、日本列島です。
──“The Death of Life on Earth (三人未満廃部)”は、地球の終わりと将棋部がなくなる話を重ねているんですね。この曲、グッときました。
石田 : これは工夫しましたね。地球の死と、学校の中のシチュエーションをいかに重ねるか。こんなシチュエーションは珍しいですけどね。
ちよの : 「ごめんね 守れなくて」と言っているのは地球で、将棋部が生命です。
石田 : 「生命の居場所を守れなくて、ごめんなさい」と地球が謝る歌です。
