後悔しないようにやれることはどんどんやっていきたい
──"Endless Blue"はバンドを再定義する位置づけにある、キーとなる楽曲だそうですが。
武田:アルバムのなかでしっかり歌を入れたはじめての曲なんです。それと過去曲も含め、この曲だけが唯一、誰かをメインにするのではなく、それぞれが作っていって最後に歌を乗せるっていうスタイルで作ったというのもあって。
──曲の展開がとても大きかったです。
山本:これは僕のデモが最初にあったんですけど、構造がウワモノを変えて展開も作ってくれたんです。そこから武田が歌も含め肉付けしてくれましたね。
井澤:そこに俺がさらに展開を組み直してベースも入れました。デモは最初構造くんのヴォーカルが入っていたよね。
武田:(構造に)笑うなよって言われたけど、めっちゃ笑っちゃった(笑)。
山本:そう考えたら構造が風穴をこじ空けてくれたのかもしれない。
楠本:(笑)。やっぱり「なにか新しいものが必要だ」ってみんな思っていたんですよ。なので、恥ずかしかったけど(歌を)入れました。歌のクオリティは置いといて、曲としてはすごくいいって褒めてくれました。
──じゃあ今作の歌のはじまりは、楠本さんからだったんですね。最初に録ったのは、"Endless Blue"(2023年4月先行配信)?
井澤:アルバムを意識したレコーディングは"Endless Blue"が最初です。
── "Breakout"は 『騙し絵の牙』のサントラに収録されていますが、今回アルバムバージョンとして再録した理由は?
楠本:僕らの曲として、あんまり世の中に知られていなかった印象もあって。あとシンセがライヴ・アレンジとだいぶ違うので、それもちゃんとパッケージングしたいと思って。


──なるほど。ではその次にレコーディングした曲は?
武田:昨年6月に先行配信した"Dark Ballet"です。ガットギターとか、エマ・ワトソンのスピーキングのサンプルを入れたお試しみたいなデモがあって。音源化するとなったときに、人の声を取っちゃうと成立しないから僕が歌うしかないなって。あと昨年11月に『STRATA (Preview)』として先行配信した"Deep Inside"も同じ時期に作っていて、デモの段階から外国人の話し声が入っていましたね。それを自分の声に置き換えていったんですけど、それだけではピリッとしたものができなかったので、ここに強いメロディーが必要だと思って、声を張り上げて歌いきることに挑戦しました。
──英詞は海外を意識してのこと?
武田:最終的にはやっぱりグローバルで勝負をしたいと思っているので。発音もネイティブに確認して、まず見本となる音声を送ってもらって、それを僕が参考にするスタイルでしたね。
井澤:"Deep Inside"のレコーディングのときに、使いたいベースのアンプが壊れるハプニングがあって、制限があったなかで録ったんです。あとから構造君がミックスした音を聴いたら、新鮮な聴こえ方をしたので、当初の予定とは変わりましたが、僕的には後から興奮した曲でした。
──昨年9月に先行配信した"Crushing"はいつ頃できた曲ですか?
井澤:去年の夏ぐらいですかね。僕のデモがあって、そこに武田のシンセが入ってからは結果的に全く違う方向にいったので、みんなで作った曲という感覚ですね。
───そして次は今年1月に先行配信された"Thread"。武田さんがラップをしていますね。
武田:"Thread"の日本語ラップは、僕のなかではやったことない領域だったので怖かったです。これをラップ歴20年の人が聴いたらどうなんだろうとも思ったし、メンバーからダメ出しされたらリリースできないっていうハードルもあって。
井澤:もともとラップをしますって武田からは宣言はされていたんですよ(笑)。
武田:この曲は声のリズムが引っ張っていく曲と思っていたので、じゃあラップするかって。ただその前にマイケルジャクソン説もあったんですけど、実際にやってみたらひとりで家でめちゃくちゃ笑っちゃって(笑)。これは違うって。
井澤:僕はこの曲、アルバムのなかでいちばん好きなんですよ。LITEらしいところもあるし。ベースっぽいシンセが最初にあって、そこにドラムも絡んでる上に、さらにベースもあって、武田のリリックもベースっぽい位置にいるから、ローミッドのあたりがすごく混雑していながらもちゃんと振り分けられている。全部のパートが聴こえるので、構造くんすごくきつかっただろうなと思います。
楠本:確かにこの曲は大変でした。全体図としてはかっこいいけど、近づいてみるとぼやっとしていたので、なかなか痺れましたね。そこからゲートリバーブのようなドラミングにして、その下にシンセがいて、ベースは上に寄せていって。そこからだんだんとLITEらしくごちゃっとしている感じにまとまったのでよかったです。 井澤:理論からはめっちゃ外れているし、ピッチも曖昧なんですよ。そのキーのなかにこの音を使っていいの?みたいな、変な気持ち悪さがすごいあって。ただ僕はそれがすごい好きで。ベースもそうですけど、気持ち悪いのに気持ち悪くない。そこを狙えたのは良かったですね。
──では、"Thread"の次は?
武田:あとの新録3曲は同時ですね。"Lower Mantle"は以前NFTで無料配布したことがあったので、それをもとになにか別の形にしてみようってなりました。元の前半部分のシンセを一部使って、今作で"Upper Mantle"に仕上げて、それを"Deep Inside"に繋げていくみたいな流れですね。
──この頃すでに今回のアルバムのイメージ像ができていた?
井澤:前作のEP『STRATA (Preview)』が出るくらいのタイミングで、今作のレコーディングをしながら曲順の話もすでにしていました。曲順を考えつつ、それこそ"Upper Mantle"のシンセから"DeepInside"のシンセに繋がっていく流れはリミックスっぽくておもしろいねとか。
──最後になりますが、LITEはこの先どうしていきますか?
山本:僕はいまアルバムがリリースしたばかりなので、次のワンマン(〈東京・恵⽐寿LIQUIDROOM "STRATA"〉)に向けてまずは集中しようっていう。ひとつずつやっていこうという感じですね。
楠本:20年続くバンドってそんなに多くはないけど、確かにいるじゃないですか。ただ30周年を迎えたバンドって本当に数えるほどしかいないので、後悔しないようにやれることはどんどんやっていきたいってすごい思ってるんです。行けるところにはちょっと無理してでも行きたいし。レコーディングをしてもっと新曲も届けられたらって思うし。いまはやっぱりそういう気持ちが強いですね。
武田:僕たちにとってこの4年半は失われた海外でしたけど、昨年の12月にバンドで台湾(〈"RUSH BALL × FRIENDSHIP. in 台湾"〉)へ行った時に、「うん、なんかやっぱりこれだよな」って肌感的に思って。それをまた取り戻していきたい。海外ベースでも改めてなにか目指していきたいですね。
井澤:海外公演を復活できたっていうのはすごく喜ばしいことですよね。やっぱ失われた期間中に、音楽シーンもそうですし、僕が聴く音楽もだいぶ変わったので、ここからは新しい人たちとエンカウントしたいです。色々な国の新しい世代から、いまかっこいいって言われてる音楽シーンに僕らも入っていきたい。若い世代にあわせたいって意味ではなくて、自分たちの道からはブレないことは大前提として。せっかく20年間バンドを続けてこれたからこそ、自分たちの地続きでありながら、新規開拓をしていきたいですね。

編集:梶野有希
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ライヴ情報
〈“STRATA”〉
日付:2⽉17⽇(⼟)
時間;OPEN 17:00 / START 18:00
場所:東京・恵⽐寿LIQUIDROOM
日付:2⽉22⽇(⽊)
時間:OPEN 18:30 / START 19:00
場所;⼤阪・梅⽥Shangri-La
〈SYNCHRONICITY’24〉
日付:4⽉13⽇(⼟)
場所:東京・渋⾕"SYNCHRONICITYʼ24”
〈"A COLOSSAL WEEKEND 2024”〉
日付:5⽉16⽇(木)〜18⽇(⼟)
場所:デンマーク・コペンハーゲン“A COLOSSAL WEEKEND 2024”
〈Portals Festival 2024〉
日付:5⽉25⽇(⼟)
場所:UK・London / EartH HACKNEY
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PROFILE:LITE
2003年結成。武⽥信幸(Gt/Vo)、楠本構造(Gt/Syth)、井澤惇(Ba)、⼭本晃紀(Dr)からなる4⼈組のバンド。
斬新でカッティングエッジなリフやリズムを組み合わせ、これまでにないユニークかつエモーショナルなサウンドで聴き⼿を魅了。常に新たな挑戦や実験的な取り組みを⾏い、インストロック/マスロック界を牽引してきた彼ら。そのサウンドは国内だけでなく、海外でも話題を呼び、アメリカのインディー・レーベル〈Topshelf Records〉からも作品を発表。アメリカやヨーロッパをはじめ、アジアなどでもツアーを⾏い、そのほか国内のフェス〈FUJI ROCK〉や〈SUMMER SONIC〉の出演をはじめ、海外のUKの〈ArcTanGentFestival〉ではヘッドライナーを飾るなど国境を越えた活躍をみせている。
2021年に映画『騙し絵の⽛』やNetflixオリジナルアニメーション映画『ブライト:サムライソウル』のサウンド・トラックを⼿がける。同年には⾃⾝の既存発表曲やアウトテイクを、リミックス、コラボレーション作品としてデジタル配信で発表していくプロジェクト『Fraction』をリリース。2022年にはプロデューサー/DJのD. D. MOUSEとのプロジェクト、Fake Creatorsを始動し、ジャンルを超えた幅広い活動も⾏っている。
2023年4⽉には活動20年にしてLITEを再定義するような約1年半ぶりとなるシングル「Endless Blue」を⽪切りに、2024年1⽉31⽇には4年半ぶりとなる7枚⽬のアルバム『STRATA』を発表。
■公式X(Twitter):https://twitter.com/lite_jp
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