渋谷CLUB QUATTROワンマンへ向けて──リアクション ザ ブッタの止まらぬ歩み

リアクション ザ ブッタがニュー・アルバム『酸いも甘いも、好きも嫌いも』を11月1日にリリース。そして現在は全国10箇所をまわる対バンツアーを開催中だ。今回のインタヴューでは、“一目惚れかき消して”のMV撮影エピソードなどアルバムの収録曲にまつわる話だけではなく、すでに公演を終えたツアー初日の千葉LOOKからenn 2nd(仙台)、広島セカンド・クラッチの各公演の感想も掲載。同公演で撮り下ろしたばかりのクールなライヴ写真とあわせてお届けする。さらに来年からは東名阪ワンマンツアーを開催する彼ら。ファイナルにえらんだ、渋谷CLUB QUATTROはバンドにとってどのような場所なのか。
思わず共感してしまうラヴ・ソングを収録
INTERVIEW : リアクション ザ ブッタ
リアクション ザ ブッタが、8曲入りのデジタル・アルバム『酸いも甘いも、好きも嫌いも』をリリースした。2022年の夏に"ドラマのあとで"がTikTokを中心に注目を集め、バンドを取り巻く環境の変化があるなかで制作された今作は、バンド・サウンドを活かしたサウンド・メイクからバンドにとらわれないサウンド・デザインまで、バラエティに富んだ内容に仕上がった。今回のインタビューではターニングポイントとなった昨年を振り返りながら、今作や現在開催中の全国対バンツアー、来年開催予定の東名阪ワンマンツアーについて語ってもらった。
取材・文 : 沖 さやこ
写真: 稲垣ルリコ(千葉公演)
村長 @son_tkhs(宮城公演)
松本いづみ(広島公演)
"ドラマのあとで"はやる気をもらうきっかけになった
──2017年リリースのミニ・アルバム『After drama』リード曲"ドラマのあとで"が、昨年夏にTikTokで話題となり、バンドにも様々な変化があったと思うのですが、そこを迎えるまでの皆さんの心境は一体どういうものだったのでしょうか。
佐々木直人(Vo / Ba):コロナ禍だったこともあって、「いまは一体どうなってるんだろう?」とはっきりしていないことのほうが多かったです。僕らも2021年からTikTokをはじめて、TikTok内で流行っているコンテンツにトライしてみたものの、フォロワーも300人ぐらいで打ち止めになってしまって。どうしたらいいのか悩んでいるなかで、スタッフが作ってくれた動画をTikTokにアップしたら、それを結構聴いてもらえるようになったんですよね。
──"ドラマのあとで"の2番のサビを切り取った、ライヴ映像のリリック・ビデオですね。
佐々木:そこでたくさんコメントを頂いて、「じゃあMVがYouTubeにあるといいよね」ということでライヴ映像でMVを作ったらそれもたくさん再生されて、Spotifyのバイラル・チャートにも入って、ライヴにも新しいお客さんが来てくれるようになって……といろんなことが連動していきました。最初のきっかけのリリック・ビデオもそれまでの試行錯誤から生まれたものなので、悩ましい時期も含めて無駄じゃなかったなと思っていますね。
木田健太郎(Gt):"ドラマのあとで"をたくさん聴かれるようになった当初は、TikTokで知ってくれた人と直接会えることはあんまりない気がしていたんです。正直なところ、TikTokにはたくさんのアーティストの動画が溢れているから、みんなすぐ他の新しい人たちを好きになっていくイメージがあって。いくら好きになってもらってもライヴに足を運ぶほどにはならないんだろうなと思っていました。でもいざツアーやライヴをしていくと、佐々木が言ったように新しいお客さんが増えたんです。たくさんのアーティストのなかから選んでもらえた喜びと、時間やお金を使って実際に観に来てくれるんだという驚きの両方がありました。
大野宏二朗(Dr):リリック・ビデオがバンドのライヴ・シーンだったのも良かったなと思います。TikTokerさんの「踊ってみた」に楽曲が使われたことで注目を集めていたら、もしかしたらバンドとして認識されなかったかもしれない。ライヴ映像だったからこそ楽器をしてる3人組だと思ってもらえたし、ライヴにも来てもらえることも多かったのかなと思います。日夜いろんな人たちがTikTokに動画を上げているなかで、再生数が伸びたのは本当に運が良かったし、すごくありがたいです。
──ご自身の楽曲がいままで届いていなかった層に届いたことで、皆さんそれぞれに心境の変化などはありましたか?
佐々木:「バンドをまだまだやっていける、まだ戦っていける」といううれしさがいちばん大きいですね。……やっぱりコロナ禍って、わからなかったんです。特に最初のうちはフルキャパの半分の人数でしかライヴができなかったので、本当の動員がわからないというか。
──この動員は新型コロナウイルス罹患のリスクを避ける人たちが多い結果なのか、それともほかの理由があるのか。
佐々木:その判断をするのが難しかったです。苦しいのは自分たちだけじゃないとはいえ、そういう状況でも人気が出ていくバンドはいて。だから自分たちもどうやって活動していくべきか悩んでいたんですよね。活動しているからには応援してくれる人たちに「リアクション ザ ブッタと関わっていて良かった」と少しでも思っていただきたいので、"ドラマのあとで"がじわじわと聴いてもらえるようになったことは、すごくやる気をもらうきっかけになりました。
木田:お客さんが増えたり、たくさん聴いてもらえることはすごく自信になりましたね。だから制作がすごくラクになったんです。それまでは「この曲は世間に受け入れられるのか、広まるのか」と必要以上に気にしていたんですけど、いまは単純に自分たちがかっこいいと思うもの、好きなものをやろうと思えるようになって。悩む時間が減りました。
──「自分たちのやってきたことは間違ってなかったんだ」と思えたんですね。
木田:そうですね。だからライヴも、一生懸命もがくような演奏というよりは、ドンと構えられるようになりました。伝えたいメッセージをちゃんと伝えられる、投げかけられる心の余裕ができたのかなと思います。
──大野さんはいかがですか?
大野:ライヴで初めて見掛けるお客さんがすごく増えたので緊張しますね(笑)。でも(佐々木と木田の)ふたりほど心境の変化はあんまりないかも。僕はもともと「自分のドラムをちゃんとやるのみ」という考え方でやってきていたから、前と同じように練習を頑張っているという感じです。
