猫田ねたこは、“生命力”とどう向き合うか──共生の尊さをしなやかに描いたセカンド・アルバム

シンガー・ソング・ライター、猫田ねたこ。一見ひょうきんともとれる、記憶に残りやすい名で活動する彼女からうまれる音楽には、日々を切実に過ごす等身大の姿が投影されている。前作から1年3ヶ月ぶりとなるセカンド・アルバム『dropss』は、生命力や再生力をテーマに制作。そのため今作を聴いたあとには、瑞々しい森林のなかで深呼吸をしたような、自分のどこか一部がまっさらに生まれ変わったような気分になる。そして自分の足元に目をやり、そこに生えている草花を愛でたくなるのだ。この世界で行き交う、すべてのいきものから発せられるエネルギーを猫田ねたこのしなやかな視点を通して体感してほしい。
テーマは人間や植物の生命力
INTERVIEW : 猫田ねたこ

シンガーソングライター・猫田ねたこが、ファースト・アルバム『Strange bouquet』の発売から約1年3か月後となる8月8日(世界猫の日)に、セカンド・アルバム『dropss』をリリースする。前作は花束をモチーフとしていたが、今作は樹の幹から浮き出す生命力溢れる雫をイメージして作り上げたとのことで、ドラムも加わってより強く、よりしなやかな音像で描かれた作品に仕上がっている。「生命力」というテーマの下、今作には彼女自身のどういった考え方が宿っているのかを探るべく、話を訊いた。
取材・文 : 峯岸利恵
写真 : 梁瀬玉実
採れたてのアスパラガスの瑞々しさに感動した
──前作のリリースから約1年3か月が経ちましたが、振り返ってみていかがですか?
情勢も変化してきて、イベントも自由に行えるようになってきたことで、私自身も音楽により集中できる環境になってきたなと思いますし、この1年は充実していたなと感じています。
──今作の制作に関してはいつ頃からスタートしていたんですか?
昨年11月頃から着手しはじめてはいましたが、“腑”は、前回のファースト・アルバム『Strange bouquet』のリリース・パーティーのアンコールで演奏していたので、その頃には出来ていましたね。“Snowflake”も丁度その頃には原型が出来ていたので、楽曲自体は前作後わりとすぐ、ぽつぽつと出来はじめていました。実はファースト、セカンド、サードを通じてやってみたいテーマが自分のなかにあるんです。ファーストは、自分が好きなものを集めて、自分が好きなものを届けたいという気持ちを花に託し、セカンドとなる今作は、植物の幹の部分を描きつつ、生命力やエネルギーや共生を伝えたいと思っていました。ここまで話すと自ずとサードはなにかというのがバレそうですけど(笑)。今作で伝えたいテーマとしては、植物が持つものに限らず、人間の生きる力や、心のなかの元気の源、再生力というものをテーマにしています。
──タイトルも『dropss』という名で、複数形が連なっていますよね。
そうなんです。スタッフさんにも表記ミスだと思われたりもしたんですけど、生命力の強さをより強く表現したくて、敢えてこの表記にしています。これにまつわるエピソードも実はあって、製作期間中に制作チームのみんなで散歩をしていたら、道すがら、お庭で野菜を栽培しているおじいさんが、みんなに採りたてのアスパラガスをくれたんですよ。それをみんなで食べたんですけど、そのアスパラの瑞々しさと生命力にすごく感動したんです。採れたての野菜って、ぽたぽたと雫が垂れるほど瑞々しいものなんだ! と。そうした出来事もあって、今作のタイトルが決まりました。
──素敵なエピソードですね。野菜をくれたおじいさんにも届いてほしい!(笑) 今回は「生命力」をテーマにするということで、制作に対する姿勢などもいままでと変化していったんですか?
それは特にはなかったです。私が弾き語りをはじめた時から、聴いてくださる人の背中をそっと支えられる曲を贈りたいという気持ちがずっとあるので、今作もその原動力に沿って作っていきました。
