Tyrkouazは激しく、ポップに、そして自由に突き進む──無垢な自分を取り戻すための「MEKAKUSHI-ONI」

双子のsouta(Vo/Gt)とrent(Dr/Cho)によるミクスチャー・ロック・デュオ、Tyrkouaz(ティルクアーズ)が2025年の幕開けにリリースしたのは、「MEKAKUSHI-ONI」。子供の頃に遊んだことがある人もいるだろう、“目隠し鬼”をテーマにした本作は、現代社会において本来の自分の心の声すら聞こえなくなってしまっている私たちを揶揄した、風刺的なデジロック・アンセムだ。強いメッセージが込められた楽曲であるが、歌詞の「そのスキンでいこう」には、「自前の肌感覚を研ぎ澄ませ、動き出そう」という、私たちに手を差し伸べ鼓舞してくれるTyrkouazのポジティヴなスタンスが感じられる。「目の前も 見えないけど少しでいい 心動く方へ」、Tyrkouazと進もう。
実験的かつダンサブルな2025年第一弾シングル
INTERVIEW : Tyrkouaz

〈出れんの!? サマソニ!? 2024〉の最終選考に残り、〈SONICMANIA 2024〉のトップ・バッターを務めたミクスチャー・ロック・デュオ、Tyrkouaz。同年11月には初の全国流通盤『turquoise engine +』をリリースし、12月には自主企画対バン・ツアー〈MULTI PLAY〉を開催するなど注目を集める彼らが、2025年第1弾シングルとなる「MEKAKUSHI-ONI」をリリースした。
ソングライティングは双子の兄のsouta(Vo/Gt)と、弟のrent(Dr/Cho)がそれぞれ手掛ける。ドラムンベースを軸としてブレイクコア、ハイパーポップ、ガバ、サーフ・ロックなど様々なデジタルロック・サウンドと生楽器を融合させた直情的なサウンド・デザインと、キャッチーなメロディに乗る熱いメッセージで構成される彼らの楽曲は斬新でありながらも、ふたりが心を奪われた音楽の影響も多分に含んでいるため、記憶がオーバーラップする感覚もある。Tyrkouazはなぜミクスチャーなサウンドを追求するのだろうか。両者の音楽に懸けるポリシーを探っていった。
取材・文 : 沖さやこ
新しい音楽に出会った時のようなワクワク感を
――おふたりはゲーム音楽をきっかけにデジタル・ロックやドラムンベースに出会ったそうですね。
souta(Vo/Gt):ふたりとも小さい頃から割とインドアで、友達と積極的に遊ぶタイプではなかったのもあって年齢相応に家でゲームをして遊ぶことが多くて。『ソニック』シリーズをきっかけに、すごく感覚的でバラエティに富んだゲーム音楽にどんどん魅了されていって、ゲームよりも音楽にのめり込んでいったんです。
――ゲームはあくまで、音楽にのめり込むきっかけだった。
rent(Dr/Cho):やっていないゲームのサントラもどんどん聴き込みまくっていました(笑)。
souta:ゲームのサウンドテストで曲を聴いたり、それを録音して両親が運転する車で流したりもしていましたね(笑)。
rent:そこからいろんな音楽を聴くようになって、バンドやロックにのめり込んでいったり、クラブ・ミュージックにも興味を持つようになったり。でもゲーム音楽に感じていた新鮮さは、自分たちにとってずっと特別なものだったんですよね。
souta:1本のゲームにはいろんなステージや世界観が詰め込まれているので、サントラも雑多というか、ほんといろんなジャンルの音楽で溢れているんですよ。1曲1曲もゲームの物語の場面と呼応しているのもあってか個性が光っているし、カラフルな魅力がある。幼心ながらにそういうところに惹かれたのかもしれないなと思っています。

rent:Tyrkouazがゲーム音楽の自由な発想に影響を受けているところは大きいですね。自分でバンドを組むようになって「ゲーム音楽のサウンドに影響を受けた曲作りをするバンドがいてもいいんじゃないか」と率直に思ったんです。
――となるとゲーム音楽でドラムンベースやデジタル・ロックと出会っただけでなく、「音楽はジャンルにとらわれる必要がない」「違うもの同士を掛け合わせることで新しいものが生まれる」という気づきを得たということですね。
rent:ボス戦の音楽は、重いギターリフにエレクトロ・サウンドが乗っかったりするんですよ。そういうのがユニークで面白いなとすごく思うんですよね。ゲーム音楽の自由さは自分たちにとって当たり前のものであり、自分でバンドをやるなら今までにないものを世の中に発信していきたい。新しい音楽に出会った時のようなワクワク感を、自分たちで表現したいと思ったんです。
――その感性をおふたりが同じように持っているのは、双子だからなのでしょうか。
rent:一卵性の双子ならではかもしれない。二卵性だと違うことが多いという話を聞くことが結構あって。
souta:あとは同じように成長するなかで同じように過ごすという環境も要因の気がします。生活サイクルもインプットも大体同じだし、一緒にゲームをプレイしていた幼少期があって、大学生になるぐらいまでは基本的に同じような音楽を聴いてきています。
――同じ高校で同じ軽音楽部に所属するものの別のバンドでそれぞれがドラマーとして活動し、大学でもそれぞれバンド・メンバーを探すもののうまくいかず、その結果ふたりでTyrkouazを始めたそうですね。
rent:もともと僕らは「バンドをやりたい」という以上に作曲がしたかったんですよね。自分たちが作った曲を発信したくてメンバーを探すんだけど、なかなかメンバーが安定しなくて。だから自分の作った曲を発信したい、メンバーが見つからない者同士で組んだというか(笑)。ソロ・アーティストがふたりで組んでるような感じもしますね。

――だとしたらなぜおふたりとも「ソロでやっていこう」と思わなかったのでしょう?
rent:やっぱりロックにハマった中学時代や、ロックにハマったことでドラムを始めた高校時代があるので、音楽をやるならかっこいいことをやりたいという思いから、自然と「バンドを組む」という憧れを持ったんだと思います。あと、僕らは衝突することがほとんどないので、ふたりでやったらひとりでやるよりも面白いかもと思いましたね。お互いがお互いのやりたいことをスッとわかりあえる仲なので気も遣わないですし、パワー・バランスも五分五分だし、ふたりでやるとやりやすいし何事も早く進む気がしています。
――自分たちの歩んできた人生や影響を受けた音楽を総動員させて、自分の作りたい音楽を心地のいいペースで最大限追求できる環境がTyrkouazなのかもしれないですね。
souta:楽曲は常に人生の集大成みたいな感じかもしれないですね。本当は本気で5人組バンドをやろうと思っていたので今のかたちに至ったのは成り行きではあるんですけど、いちばん自然なかたちだなと感じます。
rent:だから自分たちの作りたい音楽に合わせて、この先僕らのライヴ編成が変わることはあるかもしれないし……それこそこの前、soutaがギター・ヴォーカルで自分がターンテーブルという編成でライヴをしてみても面白いんじゃないか? と考えてたんですよ。「自分たちはこういうことをやっていくんだ」と決めず、面白いな、やってみたいなと思うことを選択していきたいんですよね。