高校のときなんか部屋中CDだけで、ヤバい感じになってました
──アレンジのことなど、IKEさんとはどんな話をしましたか?
Hi-yunk:やっぱり同じ時代を共に生きてきた仲間なので、IKEとやるんだったら、単純に熱い曲をやりたいなっていうところで、この曲のトラックができたと思うんですよ。こう言ったらなんですけど、僕の中では本当にもう“バイブスだけが動いて完成した”っていう印象ですね(笑)。もちろんアレンジの段階では緻密に作っていたとは思うんですけど、本当に0から「せ~の」っていう瞬間はもうお互いの気持ちだけで作った感じです。
──お互いのボーカル、歌い分けについては、どんなことを考えていたのでしょうか。
Hi-yunk:同じボーカリストなので、僕にないものを彼が持ってるし、彼にないものを僕が持っていることもお互いわかっているんです。例えば、僕にないのは、彼のシャウトするハスキーな声、自分もそこに憧れていたけど、それを追ってもそこには届かないことはわかってるんですよね。彼は彼で「ハイトーンは自分には出せないから、そこは任せた」って言ってくれていたので、お互いの良い武器をどうやってアンサンブルしていくかっていうところを考えました。デモの段階で、例えばユニゾンしてるけど1本1本でL-Rで振ってみようかとか、その辺は試行錯誤しながら作ったりしました。結果的にユニゾンしてるけど、ちゃんとサビが出てる中でお互いの声がはっきり聴こえる棲み分けの最終形が、僕が上ハモを行って彼がストレートにシャウトしてるような感じっていう、バランスも本当に綺麗にまとまったなって思います。
──お互いの持ってる良さを素直にそのまま出したら、まっすぐこういう曲になったわけですね。
Hi-yunk:そうだと思います。自分たちのボーカルを楽器で例えたら、僕がストラトキャスターで、彼がレスポールみたいな感じですね。ストラトにはレスポールの音は出せないし、レスポールにはストラトの繊細さは出せない。だからこそお互いのキャラが立つようにっていうのは意識しました。
──声をギターのタイプで例えるのって面白いですね。ストラトにはクリーンな鋭さがあって、レスポールには太さや歪んだニュアンスがあるっていう。
Hi-yunk:僕は、自分の声があんまり好きじゃなかったんですよ。こういう激しい音から始まったバンドなので、自分のこの透き通る声、少年ジャンプの主人公の声みたいな感じにちょっとコンプレックスを抱えていたところもあったんです(笑)。でも今となれば、それが自分の武器でもあるし強みだなっていうのは、こうやって続けてきたからこそ改めて実感したというか。そういう意味で、自分も自信を持ったこの段階でIKEと良いタイミングでやれたなっていうのはすごくありますね。
──お2人のハーモニーと、ストリングスも入ったアレンジがスケールの大きな印象に繋がっていると思います。
Hi-yunk:力強さや泥臭さっていうのは表現したかったんですけど、メリハリっていう部分では、繊細さもどこかで表現したかったんです。後半のラスサビのところはあえてギターを入れずに、ストリングスとほぼアカペラに近いんですけど、そういうところは僕もIKEもお互いバンドではなかなかやらなかったアレンジだなと思うし、面白い仕上がりになったと思います。
──この曲からスタートして、5月には1stソロアルバムがリリースされるそうですが、今の時点でどんなアルバムになりそうですか?
Hi-yunk:さきほど話に出たWACK所属アーティストへの楽曲提供とか、これまで僕がいろんなアーティストさんをプロデュースして作った曲もある意味僕の作品の一つでもあると思っているので、それも表現したいと思っています。アルバムの半分はプロデュースした楽曲のセルフカバー的な楽曲、半分は自分がBACK-ONではない別の軸で作った新曲を、ハーフ&ハーフっていうか、ガチャってくっつけたアルバムです。僕の人生って言ったらちょっと大げさかもしれないですけど、自分が39年間聴いてきたこと、見てきたこと、得てきた音楽をこのアルバムにファーストとして集約しようと思っています。やっぱりファーストアルバムって純度100%なので、新鮮さをどうやったらより閉じ込められるかっていうのは意識しながら作っているので、楽しみにしていてください。
──ではここからは、ソロアルバムのリリースに向けて、より深くHi-yunkさんのパーソナルな部分をより掘り下げたいと思います。子どもの頃は、テレビから流れてくる音楽を聴くのが好きだったんですか?
Hi-yunk:とにかくテレビを観るのが大好きだったので、テレビから流れてくるオープニング曲とかエンディング曲とか、CMソングとかがやたらと耳に残っていたなっていうか、未だに耳に残っているので、それだけキャッチー、ポップだったっていうことだと思うんですよ。そこからの影響が、今の自分の核になっているのかなって思います。最初に言ったように僕には7歳上の兄貴がいるので、同級生とは違った感覚があったというか。例えば、みんながジャンプを読んだりゲームで遊んでる傍らで、僕は大好きなプロレスの入場曲をずっとひたすら聴いていたりしていて。でも、かといって他の人たちが楽しんでいるものを全く無視してるかというとそうでもなくて、アニメの主題歌とかは一緒に聴いたりして同じものを共有しつつ、陰ではこっそりプロレスの入場曲を聴いたりとか、兄から教えてもらったマイケル・ジャクソンの『ヒストリー』(『HIStory: Past, Present and Future, Book I』)をカセットに入れて聴いていたり、洋楽もちょこちょこ聴いていたのが、今の自分のルーツになってると思います。
──お兄さんは7つ上ということですから、1970年代の生まれですよね。
Hi-yunk:そうですね。78年とかなんで、ちょうど90年代のJ-POPや、洋楽の近未来感のある曲とかからも、すごく影響を受けてるんですよ。サヴェージ・ガーデンとか、オートチューンを世界で初めて使ったと言われているシェールの「ビリーヴ」とかも聴いていたし、自分のルーツの一番は90年代だったのかなって今でも思います。ロックにしても、グリーン・デイとか、オアシスとかと同時に、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックとかバックストリート・ボーイズを聴いたり、邦楽のバブルガム・ブラザーズとか長渕剛さんとかXとかを聴いたり、なんかもう無茶苦茶ですけど(笑)とにかくいろいろ聴いてました。あと、CMソングが結構好きでしたね。当時、たまにCMソングのCDが8センチシングルで出てたんですよ。「ペプシマン」の曲とか、ああいうのは普通に買っちゃってました。「何でこれ買うの!?」っていうCDを普通に買うような変な小学生だったので(笑)。
──(笑)小学生の頃からもうCDを買ってたんですね?
Hi-yunk:小学生の頃にみんながお小遣いでゲームを買ったりとかしてるときに、僕はお小遣いを全部CDにつぎ込んでいたので。気づいたら、高校のときなんか部屋中CDだけで、ヤバい感じになってましたから。今もそうなんですけど、それぐらい音楽が大好きなんですよ。