【10周年記念企画】メンバーが選ぶ「Drop'sの楽曲TOP3」──楽曲とともに振り返る10年間の活動

2019年、結成10周年を迎えたロック・バンド、Drop's。2009年に北海道・札幌にて結成し、メジャー・デビューや幾度かのメンバー・チェンジを経つつ、2017年に現在のドラマー、石川ミナ子が新たに加入し、新生Drop'sとして活動を続ける彼女。そんな彼女たちも10年の活動の中で、5枚のフル・アルバムと、4枚のミニ・アルバムをリリースし、およそ90曲を作り上げてきた。今回10周年記念企画として、約90曲の楽曲の中からメンバーお気に入りの楽曲を3曲発表してもらう「Drop'sの楽曲TOP3」を実施。製作時のエピソードから、それぞれの好きなポイントまでワイワイと語ってもらいました。
約3年半ぶり、新体制初のフル・アルバム
INTERVIEW : Drop's
今回、10周年記念企画として、メンバーの4人が選ぶ「Drop'sの楽曲TOP3」を発表してもらい、全員でその楽曲の魅力や制作エピソードなどを語ってもらった。それぞれが選んだ曲やその理由、曲に対する思いを感じ取りながら読んでほしい。Drop'sをずっと聴いてきたファンは自分の中の曲への思いと重ね合わせられると共に、新たな曲の魅力も発見できるはず。また、新しいファンにとっては彼女たちの音楽をより深く知る最良のガイドになるのではないだろうか。また、フル・アルバム『Tiny Ground』を携えて未来へと歩き始めた4人の現在の心境も訊いてみた。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 鹿糠直紀
「Drop'sの楽曲TOP3」、まずは各メンバーの第3位から発表です
──Drop‘sの楽曲は新作『Tiny Ground』の曲を含めると90曲ぐらいあるということで、3曲を選ぶのは大変だと思いますが、それぞれ考えてきていただいたということで。早速発表してもらいましょう。
(〜じゃんけんで勝った順に発表することに。その結果、小田、石川、荒谷、中野の順に決定〜)
小田満美子の第3位 : “かもめのBaby”(フル・アルバム『HELLO』収録)
小田満美子(Ba) : 私は、3曲の順位はあまり決めてないんですけど、最初の1曲は“かもめのBaby”です。好きな曲って、自分の中で「聴くのが好きな曲」と「弾くのが好きな曲」があるんですけど、“かもめのBaby”は、ライヴでやるのも好きだし、演奏していて楽しい曲です。制作したのは結構前ですね。
石川ミナ子(Dr) : 私はまだ入る前ですね。
荒谷朋美(Gt) : 『HELLO』が2014年だから、もう5年前だね。覚えてる?
小田 : どうやってできたか覚えてない(笑)。
中野ミホ(Vo&Gt) : どうだったっけなあ(笑)。あ、でも“コール・ミー”とかの後だよね。
荒谷 : これ、レコーディング一番最後にしなかった?
小田 : ああ〜そんな気がする。
荒谷 : 『HELLO』で一番最後に出来た曲で。最後にみんなでクラップを入れているんですけど、それを入れた後に、このアルバムの最後の曲じゃないかっていう流れになった覚えがあります。
中野 : 昭和歌謡にハマっている時期に作ったんだと思います。タイトルもずっと決まらなくて最後に出来たんじゃなかったかな。タイトルを付けたときは、みんな笑ってた気がする。
小田 : “かもめのBaby”だもんね。でもいいなって思った。演奏面だと、ベースから始まる曲だし、リズムが軽やかなので。ライヴのセットリストの中ではガラッと雰囲気を変えることができる曲だと思うので。乗せやすいし、自分も乗りやすいという感じです。
石川ミナ子の第3位“マイハート”(フル・アルバム『Tiny Ground』収録)
石川 : 全体的に、私は内容が苦しんでる曲が好きで(笑)。すべてハッピーというよりも、苦しい中で頑張るというか、ブルースとかに近い、何かを耐えて何かを生むみたいな、力強い曲が好きなんです。この曲は、アルバムの中で一番最後に出来た曲で、全体を通して曲を並べてみたときに、アップテンポで前に転がるような曲がないねっていうことになって、パッと中野さんが作ってくれたんです。そういう勢いのある制作過程もすごく好きだし、自分たちにあるナチュラルな感じで曲が出来たと思います。それに、歌詞もすごく好きで。「まるでどうしようもない」みたいな。自分でもよく思う言葉で、「本当どうしようもないな、困っちゃうな」っていうことが日々あるので、すごく共感できる、心にまっすぐハマった曲ですね。
中野 : これは、日々思っていることというか、ポロっと「ああ…」って帰り道に思っているようなことを書いたので、誰でもちょっとは当てはまったり、「そういうときあるよね」って共感してもらいたい歌詞だったので、そう言ってくれてすごくうれしいですね。最初は、この曲がない状態でアルバムを完成させようとしていたんですけど、この曲が出来たときに、キレイにまとめ上げるよりもこっちの方が自分たちらしいなと思って。どうしようもない、ぜんぜん変わってないところもいっぱいあるけど、このままずっと行くんだろうなみたいな、転がって行く感じが図らずも出たところがすごく良かったかなと思います。
荒谷朋美の第3位 : “星の恋人”(フル・アルバム『HELLO』収録)
荒谷 : 小田も言ってましたけど、聴くのが好きな曲と演奏するのが好きな曲っていうのが私もなんとなくあるんです。この曲は、弾くのが好きな曲ですね。結構ギターロックというか、8ビートで突き進む感じがあるんですけど、ただ熱いだけじゃなくて、切なくて内側が熱い 感じというか。弾いているときも、エモい感覚になります。歌詞に出てくる風景も、札幌時代に中野と近いところに住んでいたこともあって、「ここのことを歌ってるんだろうな」っていうことがわかるので、そこも好きです。
中野 : 北海道って、星がめっちゃ綺麗なんですよ。帰り道にチャリで本当に誰もいないカーブをサ〜って走っていくときの夜空をわかってくれているんだろうなって思います。
小田 : 私も弾くのが好きな曲ですね。内側が熱いっていう感じで。
荒谷 : 内側が熱いよね(笑)。
中野ミホの第3位 : “ふたりの冬”(ミニ・アルバム『organ』収録)
中野 : 自分の好きな人のことを考えてうっとりしている感じというか、そういうときの気持ちをそのまま書いたラブソングです。本当にすごくうっとりした感じ(笑)。〈壁にひたした トランペット〉という歌詞があるんですけど、喫茶店とかで1人でぼ〜っと壁をずっと見ながら流れている音楽を聴くとか、そういう時間もフワ〜ッとしてうっとりしていて。それをそのまんま書きました。あと私、三拍子が好きなんですよ(笑)。ゆったりしたリズムが好きで、アルペジオで始まる感じとかも好きで、エレキギターで1人でずっと弾いてられるみたいな気持ち良さがあって(笑)。でもこれはやっぱり、ミナ子さんとやってみて「ああ〜いいわあ」と思いました。最初からみんな、スッとなんの問題もなく合わせられた思い出があります。
石川 : 私が入る前から曲自体はあったみたいで。前のドラマーのレイカちゃん(奥山レイカ)が叩いている音源を聴かせてもらってスタジオに入ったんです。なるべく自分流に、どうやるかを結構考えた曲でした。最初に中野さんが、体をフワフワさせながら弾くんですよ。
荒谷・ 小田 : ああ〜(笑)。
石川 : それに合わせて全体を持って行くみたいな。ライヴで中野さんの動きを見ていただければフワフワ感がわかると思います(笑)。
小田 : たしかに、中野のイントロをそのまま全員でやろうという空気はありますね。
続いて第2位の発表!!
小田満美子の第2位 : “SWEET JOURNEY BLUES”(ミニ・アルバム『trumpet』収録)
小田 : 曲自体は、2016年ぐらいからあったんですけど、そこから形に出来ないままで。2017年1月にライヴで初披露しました。さっき荒谷が選んだ“星の恋人”で“内側が熱い”って言ったんですけど、これは内側の熱さが外に出てきちゃった感じ。すごく語彙力ないですけど、“エモい”って感じです(笑)。
荒谷 : ははははは(笑)。
小田 : ライヴではやっていた曲なんですけど、『organ』を作ったタイミングでも、「ここじゃなくて次だな」って収録しなかったので、『trumpet』でやっと形にできたという気持ちがありました。
中野 : 北海道から出るときに、最後にやろうって作った曲です。自分の区切りというか、生まれ育った街とさよならして次に行くという、1つの別れの歌というか。みんなに「バイバーイ!」っていう感じじゃなくて、静かに自分の中でさよならを言う気持ちで作りました。1人から曲が始まって、最後みんなになるみたいな感じがある曲です。
石川 : これも私が入ったときにはだいたい出来ていた曲で、レコーディングは自分がはじめてというパターンの曲です。ライヴの大事なところでやりたい曲ですね。
石川ミナ子の第2位 : “春の羊”(フル・アルバム『Tiny Ground』収録)
石川 : ラヴ・ソングなんですけど、ぜんぜんハッピーな感じでなくて、駄々をこねているというか(笑)。
中野 : こねてるよね〜(笑)。
一同 : ははははは(笑)。
石川 : 超わがままな感じで、勝手に泣いちゃってるみたいな。女の理不尽な部分というか、なんかこう「女だなあ」っていうか、女4人でやってるなあっていう(笑)。
荒谷 : そりゃそうだね(笑)。
石川 : まったく論理的じゃないというか。でも、そこが女だから気持ちがわかるという曲で。この曲は、アルバムの曲をまず演奏を録って後から歌を乗せるときに、一番最初に歌録りをはじめたんです。最初の歌入れのときから、自分が何故か涙が止まらなくなってしまって。中野さんが4、5回試しに歌ってるときもずっと涙が止まらなくて、異様な光景になってしまったんですけど(笑)。なんでそんなに泣いたのかという説明はできないんですけど、何か琴線に触れてしまったんです。そういう思い入れがあって好きな曲ですね。最後の方の歌詞が特に好きです。結局曲の主人公が言えたのかはわからないんですけど、「言わなきゃな、伝えないとな」ということを、できずに終わってしまうことも人生では多々あると思うんです。そういうことが自分の中で強く思い出されて、「ああ、次はやらなきゃな」っていう気持ちになる曲です。
──この曲と次の“マイハート”って、続いているんですか?“春の羊”に出てくるような自分がどうしようもないっていうことなのかなって。
中野 : いや、そこはまったく関係なく書いてますね。
石川 : たぶん、最近の中野さんに、そういう気持ちが占めている部分があるんじゃないかなって。そこにシンパシーを感じますし、私が“マイハート”と“春の羊”が好きなのも、たぶんそういうストーリーがあるからだと思ってます。
中野 : ああ〜なるほど、そうか。それはうれしい。
小田 : この曲の最後の方のアレンジは、「ドラマティックにしよう」って言って作ってます。
中野 : もう、ドラマティック以外、何もいらないみたいな(笑)。私も歌入れのとき、半分泣いてたので。何故かはわからないけど。弾き語りでもたまにやっていて、そのときも最後の歌詞のところはウワ〜ってこみ上げちゃって。自分がそうなる曲ってそんなに書けないから、この曲は本当に書けて良かったなって思います。
荒谷 : この曲は演奏もエモさが爆発してますね。
中野 : さっきから「エモい」しか言ってない(笑)。
一同 : ははははは(笑)。
荒谷朋美の第2位 : “毎日がラブソング”(ミニ・アルバム『trumpet』とフル・アルバム『Tiny Ground』収録)
荒谷 : 『trumpet』のときに多保さんと一緒に作った曲です。根っこはすごく古い音楽なんですけど、音像は今の音楽とも太刀打ちできるような、ぜんぜん古臭くない曲で。その両立具合が、上手く行った感覚があります。自分たちのやりたいことを曲げてもいないし、新しいことにも挑戦しているという意味では、結構理想的な曲だなって思います。
石川 : 自分たちが好きなものと古臭くなりすぎない曲っていうのは、最近のテーマで。今言われて、たしかにこの曲は理想だなって気が付きました。
荒谷 : そうだよね。1つ大きな元になるものができたという感覚があります。
石川 : 他の曲でもそうなんですけど、荒谷は新しさを重点的に考えていて、他の3人は曲の内容とかグッとくるかどうかというところを気にしていて、新しさというところにあんまり頓着がないんですよ。そこを荒谷が結構頑張ってくれているというか。“毎日がラブソング”は、これからどんどんやっていきたい理想的な曲の形だなって思います。
小田 : この曲はハッピーが全開だなって(笑)。ライヴでやるときにお客さんを見てると、だいたいみんな笑顔なんですよ。対バンのライヴとかであんまりDrop'sを知らずに観ていたお客さんで、今まで無表情だった人もちょっと笑ってる気がする曲です。
中野 : これは多保さんが持って来てくださったので、一番最初はみんなで聴いた感じです。その後に歌詞とメロディを私と多保さんで精査していった感じですね。他の曲は、最初に弾き語りでみんなに聴かせるんですけど。
──そういうときって、どういう気持ちで聴かせているんですか。というのも、昔ブルーハーツ時代の甲本ヒロトさんが雑誌で「はじめて曲をメンバーに歌って聴かせるときがめちゃくちゃ恥ずかしい」と言っているのを読んだことがあって、ちょっと驚いたんですよ。中野さんはどうですか?
中野 : めっちゃ恥ずかしいですね。「まだこれ、ぜんぜん完成じゃないから! 完成じゃないから!」って(笑)。
一同 : (爆笑)。
石川 : 前置きがすごいよね(笑)。
小田 : たしかに(笑)。
荒谷 : 「まだメロとかぜんぜん決まってないから!」とか(笑)。
中野 : 「ぜんぜんこれ決まってないから!」って、めっちゃ前置きをしてから聴かせます。

──(笑)そうやって聴かせた結果、3人はどういう反応になるんですか。
中野 : 「ああ、はい」みたいな感じだよね?
荒谷 : 「なるほど、なるほど」みたいな。
中野 : そこで「うわ〜!」とはならないよね? そんなに完成してないもんね?
荒谷 : こういう感じです。
一同 : ははははは(笑)。
中野ミホの第2位 : “どこかへ”(フル・アルバム『DONUT』収録)
中野 : この曲は、矢崎仁司監督の『無伴奏』という映画に曲を書いてほしいというお話をいただいて作った曲です。最初に原作の小説を読ませてもらって、まったく別の曲を書いていたんですよ。もっと激情的な今思うと昼ドラみたいな曲を(笑)、割と完成まで書いていたんですけど、監督さんに「これはちょっと違う」と言われて。そこから私も映像を見てみたら、「あっ違う、これじゃなかった」と思って、一から作り直した結果、この“どこかへ”が出来たんです。アコギのアルペジオで1人で始まる最初の「ズンチャ〜ズンチャ〜」っていうフレーズとか、映像を観たときに、これ以外はないという感じで浮かんできて。歌詞も、最初に作った曲は小説とか映画ということをすごく考えてこねくり回して作ったんですけど、“どこかへ”は自分そのもののことを書いてくださいって監督さんにおっしゃっていただいて、本当にそのままを書いたんです。その結果、映画の最後に流れたときにすごく良くて。今でもライヴでやってるし、自分の中で「これだな」というものが大きくできた曲です。
いよいよ栄えある第1位!
小田満美子の第1位 : “EAST 70”(フル・アルバム『Tiny Ground』収録)
小田 : 1位というよりは、いま一番のお気に入りという感じです。今回のアルバムは、結構「自分と相手」みたいな曲がほとんどだと思うんですけど、この曲は友だちについての曲なんですけど、そういう曲は今までなかったなという感じで、新鮮な感じがします。懐かしい気持ちと、今もお互い頑張っているという歌詞が好きですね。曲調としてすごく爽やかな感じで、曲作りの段階で、「こういう風にしよう」って目指したものがそのままできた気はしていて。良い形でできたなと思っています。
中野 : この曲は、札幌で高校に通っていたときに、すごく仲のいい友達がいて、その子と同じバスで通学していたときのことで、そのときに話したこととかを思い出して、はじめて友だちについて歌った曲です。タイトルの“EAST 70”はみなさんに言われるんで自分から言いますけど(笑)、東70というバスの系統のことで。
──へえ〜そうだったんですね。
中野 : あっそうですか?
荒谷 : ぜんぜんバレてなかった(笑)。
──バスに乗ることがほとんどないので(笑)。
中野 : 札幌に行ったらみんなに言われます。「これ、バスのことですよね?」って。
石川 : 私もわからなかったです。
中野 : ああ〜、東京の人はわからないのかも。言わなきゃ良かった(笑)。
一同 : あははははは(笑)。
中野 : 謎めかしておきたい部分もあったんですけど、まあいいです(笑)。
石川ミナ子の第1位 : “どこかへ”(フル・アルバム『DONUT』収録)
石川 : 最初にやったときは、さっき中野さんが話した映画のエピソードとかはぜんぜん知らなかったんですけど、自分がこのバンドに入って新しい曲だけじゃなくて、昔の曲もライヴのレパートリーとして増やそうという話になったときに、自分が一通りDrop'sの曲を聴いて選んだ曲の1つです。そのストーリーを知らずとも、他にも結構ある中野さんの三拍子シリーズの中で、一番中野さんらしいなっていう気がします。シンプルなんですけど、すごく中野が出たっていう感じの曲で。最初に聴いたときからすごく好きで、ライヴでやるようになってからはどんどん好きになっていった曲です。弾き語りでもやっているときに、客席から観ているときもやっぱり好きで。何故かはわからないんですけど、「中野ミホ」っていう感じがすごくしていて、「このヴォーカルはすごくいいな」って毎回思うし、メンバーとして自信が持てる曲です。いつ聴いても泣きそうになっちゃう曲なので、1位です。
荒谷 : この曲は私も、3曲の中に入れようかどうしようか迷った曲で、すごく好きです。演奏していても、中野の弾き語りを聴いても、グッときます。何かわからないけど泣きそうになるというのはありますね。
小田 : 本当に、「中野ミホ」っていう感じの曲ですね。
中野 : ははははは(笑)。
石川 : 私は、この曲は自分の曲をやっているという感覚があんまりなくて。自分が入る前に出来てた曲だし、「好きな曲を好きな人とやっている」という感覚に近くなるんです。純粋に、ファンとして好きな曲だから1位なのかもしれないです。
中野 : ああ〜それはうれしいなあ。
荒谷朋美 第1位 : “未来”(EP『未来』とライヴ・バージョンがミニ・アルバム『trumpet』収録)
荒谷 : Drop'sの曲の中で一番聴きました。たぶん、私のiTunesでトップになってるぐらい、一番好き(笑)。私の中で一番、ウッと泣けるポイントがあるというか、何かくるんですよね。
中野 : どのへんがくるの?
石川 : 荒谷が泣くなんて想像がつかない。
中野 : そうだよね、この「鉄の女」が(笑)。すっごい気になる。
荒谷 : 「鉄の女」(笑)。
小田 : ははははは(笑)。
──荒谷さんはバンド内で鉄の女と呼ばれているんですか(笑)。
荒谷 : そうなんですよ、ラヴ・ソングがあまりわからないって言ってたら、鉄の女って言われるようになって(笑)。「そういう人もいるんだな」っていう感じで聴いちゃうんだよね。
中野 : ああ〜、なるほど。
荒谷 : ラブソングが自分に当てはまるっていう感覚じゃなくて、人がそれを歌ってるのを見て、「いやあ、すごく切ないね」みたいな感覚でラブソングを良い曲だなって思うことはあるんですよ。でもなかなかそれが難しくて、鉄の女説が出たんですけど(笑)。この曲もラヴ・ソングではあるんですけど、自分の中ではラブソングとして捉えているわけではなくて、大切な人、家族、友だちとかを思ったときに、そういう感情はあるなって。それと、自分の演奏もあって、すごく切ないというか、「聴いて!」っていう気持ちになるんです。ワンマンとかで最後に方になると「泣けるわ〜」っていう気持ちになりますね。

──小田さん、いまのお話を聞いていかがですか?
小田 : 私もどっちかというと、「鉄の女」寄りなので(笑)。
荒谷 : 私は結構、仲間だと思ってるよ?
一同 : (爆笑)。
小田 : たしかに自分に当てはまるという感じではないかもしれないですけど、グッとくるところはすごくわかります。
石川 : 荒谷が“未来”を1位にしたのって、すごく意外だった。
中野 : たしかに、意外!
荒谷 : そんなに意外なんだ?
石川 : もっと鉄っぽいと思っていたから(笑)。
一同 : ははははは(笑)。
荒谷 : 鉄っぽいって何(笑)。
石川 : もっと無機質というか、単純にギターがかっこいいぜ! みたいな曲を選ぶかと思ったら、意外と心に触れる曲を選んだから(笑)。
荒谷 : 意外呼ばわりがすごいな(笑)。
石川 : 私も、“未来”は好きな曲の上位に入る曲です。荒谷が言ったみたいに、自分もすごく高ぶるんですけど、「これを伝えたい」というか、これをステージでやってこそだなって思うので、ライヴに欠かせない曲です。自分がお客さんでライヴに行くなら感動したいし、それを自分たちの曲でできるのがこの曲だと思っています。
中野ミホの1位“未来”(EP『未来』とライヴバージョンがミニ・アルバム『trumpet』収録)
中野 : 私、気が付いたら3曲とも三拍子を選んでいるんですよ(笑)。この曲もラブソングなんですけど、恋をしたら最初の頃って、バラ色でウキウキして楽しいじゃないですか?でもちょっとずつすれ違いとか、「あれ?」って思うこととか、みんなあると思うんです。それでも好きでいたいけど、その気持ちと噛み合わなかったりとか、すごく微妙でフワフワしていて、淡いんだけどちょっと辛くてっていう気持ちを、言葉選びの面ですごく丁寧に書けたというか。そのときの自分の気持ちを一番繊細に書けた曲です。あと、MVがときどき夜中に1人で観て泣くぐらい好きで(笑)。
石川 : Drop‘sは泣きたがりなのかもしれない。ちょっと辛いみたいなのがみんな好きだから(笑)。
中野 : そうかも(笑)。あのMVは本当に観て欲しいです。
──1位に選んだ曲だけに、メンバーのみんなが好きって言ってくれるのはうれしいんじゃないですか。
中野 : うれしいですね。こういう8分の6拍子(三拍子)は、結構Drop'sの強みだと思っていて。この曲をミナ子さんと合わせたときに、「やったー!」みたいな感じになったよね?
荒谷・小田 : うん、うん。
中野 : 自分たちに合ってる曲だと思うし、今でも好きな曲ですし、残っていってほしい曲ですね。
──3曲ずつ発表してもらいましたけど、終わってみていかがでしたか?
石川 : おもしろかったです。「鉄」ゾーンが(笑)。
一同 : ははははは(笑)。
荒谷 : 本当はもっと、悩んだ曲もいっぱいあったんですけど。
中野 : ああ〜そうだよね。
──日が違ったら、別の曲を選んでいたかも?
石川 : その可能性はあります。
荒谷 : でも、その中でも常にいる曲たちを選んだ感じでした。
小田 : そうだね。
石川 : ああ、たしかにそれはあるね。
メンバーが選んだTop3はこちら
小田満美子(Ba)のTop3
第1位 : “EAST 70”(フル・アルバム『Tiny Ground』収録)
第2位 : “SWEET JOURNEY BLUES”(ミニ・アルバム『trumpet』収録)
第3位 : “かもめのBaby”(フル・アルバム『HELLO』収録)
石川ミナ子(Dr)のTop3
第1位 : “どこかへ”(フル・アルバム『DONUT』収録)
第2位 : “春の羊”(フル・アルバム『Tiny Ground』収録)
第3位 : “マイハート”(フル・アルバム『Tiny Ground』収録)
荒谷朋美(Gt)のTop3
第1位 : “未来”(EP『未来』とライヴ・バージョンがミニ・アルバム『trumpet』収録)
第2位 : “毎日がラブソング”(ミニ・アルバム『trumpet』とフル・アルバム『Tiny Ground』収録)
第3位 : “星の恋人”(フル・アルバム『HELLO』収録)
中野ミホ(Vo&Gt)のTop3
第1位 : “未来”(EP『未来』とライヴ・バージョンがミニ・アルバム『trumpet』収録)
第2位 : “どこかへ”(フル・アルバム『DONUT』収録)
第3位 : “ふたりの冬”(ミニ・アルバム『organ』収録)
10周年を迎えて
──10周年を迎えて4人ではじめてのフル・アルバムをリリースしたいまのお気持ちを改めて聞かせてください。
石川 : 私は10年このバンドにいるわけではないですけど、なるべくメンバーと同じ気持ちを持ちたいなと思っています。自分の10年を思い出してみたときに、私がペーペーで薄っぺらなときからこの3人はやってるんだなって(笑)。メンバーチェンジもありましたけどバンドが続いているというのはすごいことなので、せっかく私もこの流れに加わったからには、今まで作り上げてきてくれた前のメンバーにも感謝して、もっと良い曲を作りたいし、もっと良いライヴをしたいし、もっと良い形を作りたいという気持ちが強いです。私は今回のツアーではじめてお会いするお客さんが多いと思うんですけど、そういう人たちにも自分が入って良かったなって思ってもらえるように頑張りたいです。
小田 : 『Tiny Ground』は、10年を振り返ってというよりは、これまで培ってきたものの上に出来たものみたいな気がします。まだまだこれからだと思いますし、やりたいこともあるなって思います。10周年のありがとうという気持ちも込めてツアーもやりますけど、これからもよろしくおねがいします、という気持ちが強いです。
荒谷 : 10年経ったんですけど、ミナ子さんが入ったタイミングで新しいバンドをはじめたような気持ちで。この体制になってからは2年半、全部合わせて10年ですけど、本当に今新しくはじめたっていう気持ちが強いです。でも、これまでDrop'sとしてやってきた10年はたしかにあるものだし、今回こういう企画ということもあって、昔の自分たちの曲を聴き直したんですけど、「結構良い曲いっぱいあるじゃん」って思ったので(笑)。本当にここまでやってきて良かったなって思うし、10年というのも記念ではあるけれども通過点の1つだと思うので、今まで聴いてきてくれたお客さんに感謝の気持ちを持ちつつ、これからもずっと頑張りたいなと思います。
中野 : 私もぜんぜん、10年という気はしていなくて、東京に出てきてミナ子さんが入ってそこからまたスタートしたっていう気持ちが強いです。でも、これだけ曲があるということは大事にしたいし、自分がこの10年変化してきたことが、全部曲になっていると思うので、それを私はこれからも曲にして残していきたいと思っています。これからもよろしくおねがいします。
編集 : 鈴木雄希
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LIVE SCHEDULE
Drop's 10th Anniversary ONE MAN TOUR 2019『Tiny Ground』
2019年10月23日(水)@愛知 名古屋CLUB UPSET
時間 : OPEN 19:00 / START 19:30
2019年10月25日(金)香川 高松TOONICE
時間 : OPEN 18:30 / START19:00
2019年10月26日(土)広島 広島セカンドクラッチ
時間 : OPEN 16:30 / START 17:00
2019年10月28日(月)福岡 福岡graf
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
2019年11月1日(金)宮城 仙台enn3rd
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
2019年11月4日(月・祝)北海道 札幌KRAPS HALL
時間 : OPEN 16:30 / START 17:00
2019年11月12日(火)大阪 心斎橋JANUS
時間 : OPEN 19:00 / START 19:30
2019年11月15日(金)東京 渋谷CLUB QUATTRO
時間 : OPEN 18:30 / START 19:30
【詳しいライヴ情報はこちら】
http://drops-official.com/schedule/
PROFILE
Drop's

2009年北海道・札幌にて同じ高校の軽音楽部で出会った中野・荒谷・小田らによりDrop'sを結成。
中野ミホ(Vo)の圧倒的ヴォーカルを基軸にしたブルージーなサウンドが醸す強烈なインパクトと時代に決して媚びない独特な存在感は結成当時より話題に。
2013年メジャーデビュー。デビュー以来4枚のフル・アルバムと2枚のミニ・アルバムなどをリリース。直木賞作家の小池真理子の半自叙伝的文学作品としても高い評価を得た映画『無伴奏』や性暴力について描かれた問題作、映画『月光』などで主題歌として起用される他、最近ではJR東日本「行くぜ、東北。SPECIAL 冬のごほうび」といったCMでもVo.中野ミホが歌起用されるなど、これまでのライヴ・バンドとしての活動に留まらずアーティストとしての幅を広げていく。
2017年、活動拠点を地元・札幌から東京に移すと同時に新ドラマー石川ミナ子が新たに合流。新生Drop'sとして活動が始まる。
2018年12月、新生Drop'sとしては初めてとなる約2年半ぶりのスタジオ・レコーディング・ミニ・アルバム『organ』が完成。Drop'sあこがれの作曲家・多保孝一氏と中野ミホの初共作となったリード曲“Cinderella"ではこれまであまり見られなかったダンサブルなリズムや印象的なリフを取り入れバンドは新たなステージへ。
2019年3月にはミニ・アルバム『organ』とは姉妹作品となるミニ・アルバム『trumpet』のリリースも発表! バンド結成10周年! 進化を遂げたDrop'sサウンドはもう鳴り止まない!
【公式HP】
http://drops-official.com/
【公式ツイッター】
https://twitter.com/Drops_official