早朝からハードコア!? なバンドが2ndフル・アルバムをリリース! ーー〈朝コア〉終了直後のI love you Orchestraに突撃インタヴュー!

“朝活”ならぬ“朝コア”という言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか…。その内実は、仕事始まりである憂鬱な月曜日の早朝から、新宿LOFTにて毎月1回行なわれているハード・コアなライヴ・イベントだ。この破天荒なイベントを主催しているのは、パンク・ジャズ・ハードコア・シーンの「孤高の異端児」、I love you Orchestra。同じシーンを代表するKAGEROのベーシスト、白水悠をリーダーに“本気で遊ぶ”音楽を奏でている。そんな彼らが2015年4月の1stアルバム・リリースからわずか5ヶ月後の9月16日に2ndアルバム『Fuse』をリリース。OTOTOYでは2週間先行でハイレゾ配信、全曲フル試聴を行ない、インタヴューで彼らに迫った!! 新しいシーンを切り拓く彼らの活動にぜひ注目していただきたい。
これが〈朝コア〉だ!! まずはダイジェストをチェック!!
もちろんレコ発は〈朝コア〉、しかもワンマン・ライヴ!!
I love you Orchestra "Fuse" 発売日当日スペシャル朝コアワンマン!!
2015年9月16日(水)@新宿LOFT
料金 : 1,000円 ※モーニング付き
時間 : OPEN / START / CLOSE 6:45 / 7:00 / 8:00
出演 : I love you Orchestra(ワンマン)
※※インタヴュー内で「〈朝コア〉が実現したのは○○がアタマおかしかったから」という発言が出てきます。○○に当てはまる言葉を、当日物販席で言っていただくとモーニング・コーヒーを無料プレゼントいたします!!
2ndアルバム『Fuse』を2週間先行ハイレゾ配信!
9月16日発売の2ndアルバム『Fuse』を先駆け、2週間先行配信!
I love you Orchestra / Fuse
【配信形態】
[左]ALAC / FLAC / WAV(24bit/48kHz)、AAC
[右]WAV / mp3
※ファイル形式について
※ハイレゾとは?
【価格】
24bit/48kHz : 2,000円(税込)(単曲は各300円)
WAV : 1,800円(税込)(単曲は各250円)
AAC、mp3 : 1,500円(税込)(単曲は各200円)
【Track List】
1. Fuse / 2. Eraser / 3. The Bicycle / 4. Csikos Post (More Excite ver.) / 5. Walk Alone / 6. Battle Horn in 5AM / 7. Dear My Toy Box / 8. rise / capture (More Extreme ver.) / 9. Ajisai / 10. WTF?
全曲フル試聴はこちらから!!
INTERVIEW : I love you Orchestra
I love you Orchestraリーダー、白水悠(Ba)を中心に「これ、本当にやったらどうなるんだろう?」と、好奇心満点で始まったイベント〈朝コア〉。正直、まさか毎月定期的に開催し続けるとは思わなかった。それどころか回を重ねるごとに工夫を凝らし、早朝から足を運ぶ奇特な(?)お客さんたちを楽しませようとますますモチベーションが上がっているように見える。それはI love you Orchestraの活動も然り。ギター×3人、ドラム×2人、ベース×1人が同時に音を出したらどうなるのか? その好奇心とワクワク感に惹かれて集まったメンバー6人が奏でる音楽もまた“本気の遊び”だ。
そんな彼らがデビュー・アルバムからわずか5ヶ月で完成させた2ndアルバム『Fuse』は、キャッチーでメロディアスな曲がある一方、メンバー不参加の轟音ノイズから激ショート・チューン(1秒!)まで、遊び心も満載な文句なしの傑作だ。そしてそのリリース日に〈朝コア ワンマン〉を開催することが決定! ライヴもアルバムもバンド構成も、すべてに於いて既成概念に捉われない自由さに溢れているメンバー6人を〈朝コア〉ライヴ終了直後の新宿LOFTで直撃した。
インタヴュー & 文 : 岡本貴之
写真 : Kana Tarumi
「平日の早朝にライヴやったらアツくね?」

ーーみなさんおはようございます。ライヴ終了直後ですが、只今午前9時です。
一同 : あははははは! おはようございます!
ーーまずリーダーの白水さんにお伺いしますが、〈朝コア〉ってどうして始めたんですか?
白水悠(Ba・以下白水) : きっかけは、AARHNNDの田畑さん・さやかちゃんと吉祥寺の焼肉屋で飲んでたときに「まだまだおもろいことなんていっぱい転がってんじゃね?」って話をしててさ、その中で「平日の早朝にライヴやったらアツくね?」って話になって。まぁ飲みの席で出た話をね、それだけで済まさなかった結果よね(笑)。
ーー〈朝コア〉の話が白水さんから出たときに、メンバーのみなさんはどう受け止めたんでしょう。
大津一真(Dr・以下カズマ) : 今年の1月くらいにみんなで飯食ってたとき、いきなりポロッと「朝ライヴやりたい」って言いだして。口に出した以上、この人絶対やるなって(笑)。だから決まったって聞いたときも「そ、そうっすか!」って言うしかないというか。
ケンロー(Gt) : 「やりたい」って言いだしたときに、もう8割方やるなってわかってるから。それがいつになるのかなって思ってたら意外と早かったというだけで。
白水 : だって月曜日の早朝なんてみんな絶対スケジュール空いてるに決まってるじゃん(笑)。
ーー今日は特に楽しそうに演奏しているように見えましたけど。随分明るいなって。
白水 : そうね、やっぱりライヴ前っていつもスイッチ入れるんだけど〈朝コア〉の場合は特に入れないとさ、持ってかれちゃうから(笑)。
カズマ : ただでさえilyoのときは悠さん割とスイッチオフ気味なのに(笑)。
ーーみなさん、〈朝コア〉のときは早起きしているんですか? それとも前日から起きてるんですか?
前川和彦(Dr・以下前川) : 僕は結構起きてますね。今日はちょっとだけ寝ましたけど。5回中2回は、3時間くらい寝ました。
ノブ(Gt) : 僕は5回中4回寝てないですね。今日は初めて寝てからきました。

ーーやっぱり寝ると違いますか?
ノブ : 全然違いますね。寝た方がやっぱり良いです。
中平ジム智也(Gt・以下ジム) : うん、寝た方が良いですね。
ーーバンドのライヴの話とは思えない会話ですけど(笑)。
一同 : ははははは!
白水 : ただの健康についての話じゃねーか(笑) !
ケンロー : まあ少しでも寝てた方がね。
ノブ : 寝ないで来たときの、楽屋に入って始まるまでのあの…。
ケンロー : もうね、「ズン…」ってしてる感じ?
ノブ : そうそう、ズン… とした感じが凄くてねえ…。
ケンロー : 目覚ましが朝鳴ったときに意味がわからないですもん、マジで。
白水 : 普段なら「そろそろ寝るかなー」って時間だもんね。4時半なんて。
ケンロー : 起きて、「なんだなんだこれ!? なんで鳴ってんだ?」って。
白水 : 「地震か地震か!?」みたいな(笑)。
ケンロー : (気が付いて)「… 朝コアかあ…」。
一同 : (爆笑)。
白水 : もうなんか自分の意志じゃないよね、動いている感じが(笑)。
ジム : 1ヶ月がものすごい早く感じる(笑)。
ケンロー : 最近すごく早いよね。間にツアーとかやって、「ああまた〈朝コア〉か」っていう感じだもんね。
最初の頃は完全にアイコンタクトでしたね
ーーそもそもI love you Orchestraもこの編成でやろう、と白水さんが言いだしたことなんですよね。
白水 : そうだね。勝手にケンローまで入れたしね(笑)。
ケンロー : 僕は今年から入ったんですけど、割と2つ返事で軽い感じで「いいよ」って言ったんですけど(笑)。もともと他のメンバーとの面識もあったし。でもやるって決めてからすぐにレコーディングもあったから、曲を覚えるのが大変でしたね。
ーーこの編成でやっていて大変なのはどんな所ですか?
ケンロー : ドラム2台の音がわからなくなったときは、もう完全に路頭に迷いますね。〈朝コア〉のときは返しのモニターとか無いから、2人をちゃんと見ておかないと。
前川 : ドラムが聴こえないときがやっぱり一番ツラい…。
白水 : ってセリフをドラマーが言うこともあんまりないよね(笑)。
前川 : いやもう、本当に(笑)。カズマくんの体の動きで今どこかっていうのを見るレベルで。
カズマ : だから、お互いが見える視線の導線を確保しないといけないので。一応、僕がクリックを聴いてて、僕基準でBPMは出しているんです。なおかつ僕はイヤーモニターしてるんで、全員の音はある程度聴こえているんですよ。
白水 : だからたまにカズマがスティックを落としたときの5人の「えぇっ!?」っていう顔が。
一同 : ははははは!
白水 : 「お前だけは落としたらマズい!!」って(笑)。
カズマ : その瞬間に5人の視線を感じて「ああっごめんなさい!」って(笑)。
前川 : 最初の頃は完全にアイコンタクトでしたね。
カズマ : 前にヒソミネでやったときに、お互いの距離も遠くて照明も暗くて。「全然見えない、聴こえない」という状態で(笑)。あれはつらかった。
ノブ : たまに2人の視線の間に俺が入るんだよね。
カズマ : そうそうそう(笑)。前川さん見てるのに、ノブさんがこっち見て煽ってきて。「いやそうじゃないから!」って(笑)。
ノブ : (笑)。

ーーギタリストのみなさんはどうですか? 3人の役割としては。観ていると誰もコードを弾いていないなと思うんですが。
一同 : ははははは!
ノブ : 意外と俺はコードで弾くようにしてるんですよ。3人の中では。
ジム : 割とベースの音が歪んじゃってるから…。
白水 : “歪んじゃってる”(笑)。
一同 : (笑)。
ジム : あと、楽器が多いからそんなにコード感を出してもそこまで音が出てこないというか。
ケンロー : グシャってなっちゃう。
ジム : そう、だから単音で分けた方が良い…かなっていう感じではあるんだけど。
ケンロー : … かなっていうくらいで、後はもう結構自由(笑)。
ーー実際曲作りのときは、ある程度役割みたいなことを話し合ってからアレンジするのか、それともとにかく一度一斉にバーッと音を出してみるのか、どちらなんでしょうか?
白水 : 今回のアルバムは特にそうだったけど、だいたい僕がほぼ完全な状態のデモを完成させてて。ドラムはかなり本チャンのパターンのまま打ち込んであるやつ。で、ギターも「こんな感じ」っていうのは1本だけ入れて。それをジムに振るとアホ程重ねてくるから(笑)。だからアルバムの音源上はギターが3本以上入ってるんだよね。それを誰がどのポイントを弾くのか、って後で考えるってのが多いんじゃないかな、最近は。でもまぁぶっちゃけそんなに言うほど気にしてないけどね。ギターが3本いることだとか、ツインドラムであることだとか。だって音楽的には必要ないからね、全然(笑)。たまに前ちゃん(前川)がリハに遅れてきた時とかさ、超やりやすいもん。
前川 : (笑)。
白水 : ただ全然つまんない。ドラム1人でやった方がそりゃあやりやすいよ。スッキリしてるし。でも前ちゃんのドラムがいないと「だからなに?」みたいな(笑)。上手だけど「うん、それで?」みたいな感じはぬぐえない。

ーー普通のバンドじゃん、みたいな。
白水 : そうそう。
ジム : 前に『Stop Your Bitching』を録ったときに、俺が先にギターを録音したらやたらスッキリしてて。音が。でもその後ノブ君が入った瞬間にものすごいilyoっぽさが出たんだよね(笑)。
白水 : それ本当にある! ライヴのとき音のバランスみるじゃん。ノブちゃんの音量の絶妙なポイントがあるんだよ。それよりうるさいとダメだし、それより聴こえないとダメで。ノブちゃんが「そこ!」っていうボリュームになると、すげえilyoっぽくなる(笑)。僕の中でケンちゃん(ケンロー)とジムは、まあデカきゃいいじゃんね? みたいに考えてる。
ジム : (笑)
日本でやっている以上、やっぱりみんなにわかって欲しいじゃん
ーー今回、2ndアルバム『Fuse』が1stから半年も経たずに発売されるということで。何回か聴かせて頂きましたけど、傑作と言って良いんじゃないですか?
白水 : よっしゃー!!
一同 : お~!!(パチパチパチパチ)
白水 : 出来上がり聴いた時ね、僕も結構ビックリしたよ。
ーーまず1stより音がデカくなっている気がしました。
白水 : 前回はミックスとマスタリングで人間を分けたんですよ。うちのエンジニアの大津友哉に録りとミックス任せて、マスタリングはATATAとかやってるRyuji Asoさんにお願いしたの。そのマスタリングがめちゃくちゃ良かったんですよ。「マスタリングでこんなに変わるのか!?」って、Asoさんの力にビビッて。それで今回は大津に「これを聴きながらマスタリングまでやれ」って指令して(笑)。それで彼ががんばった結果、ああなったという。
ジム : 音圧がすごいよね。
白水 : うん。本当にすごい。艶もあるし。
ーーアルバムタイトルの『Fuse』はどんな意味でつけられているんでしょう?
白水 : 今回、実は先にジャケットが決まったんですよ。デザイナーのSekkyと、このジャケでいこうと。『Fuse』って言葉には「溶ける」って意味があって、他には電気のヒューズとか、あと「導火線」って意味もあるんだよね。もともとilyoはただの遊びっていうか「KAGEROでやったら怒られるようなことをやる」って言ってたんだけど、最近ちょっと意味合いが広がってきてて。特に日本でさ、やっぱインストって伝わりづらいなーってホントに痛感するんですよ。「聴いたことがないもの」とか「見たことがないもの」とか「なんかっぽくないもの」っていうものに対して、リアクションが難しいんだよね日本人。風土というか文化というか。違和感が先にくるでしょう? それは映画でも、絵画でも、小説でもそうだと思う。前衛的なものが前衛なだけのまま終っちゃうというか。でもさ、そのことに文句を言ったまま死にたくないなと思ってて。
ーー1stはタイトルが示す通り、怒りをぶつけたアルバムでした。
白水 : そう、ムカついてた。でもさ、それに対して「この国わかってねえよ」って思うだけなら日本にいなくていいじゃん? でも日本でやっている以上、やっぱりみんなにわかって欲しいじゃん。「こんな面白い世界があるんだよー」っていうことを共有した方が絶対幸せで。でもKAGEROってそれがちょっとわかりづらいというか、あんま歩み寄れないから。だからまだ伝わってないひとたちに僕の音楽をこれから提示するとしたら、KAGEROって音楽の前に1本導火線を引きたかったんだよね。そういうアルバムにしたかった。自己満足で終わるんじゃなくて、今までインストなんか聴いたことがない人とか、4つ打ちでしかノレないような子たちにもしっかり届けたいなって。KAGEROは崩せないものとか「このこだわりは外せない」ってのがめちゃ多いバンドだけど、ilyoなら色んなことに挑戦できるから。「この部分をこう工夫したら、こういう音楽を聴いてる人たちにも引っかかるんじゃないか?」っていう色んな仕掛けを10曲打てた。もちろん自分がカッコイイと思う範囲は守ったままね。それが今回の『Fuse』っていうアルバム。… ホント良いタイトルだなーって思いますよね(笑)。
一同 : あははははは!

ーー自画自賛(笑)! その1曲目の「Fuse」が前作のテイストも残したショート・チューンですが、いきなりガツンとした伝え方ですけど。
白水 : そうかな? 結構ポップじゃない? 最初クソかっけえハードコアから始まってさ、その後コミカルになって、その後ミッシェルガンエレファントみたいなコテコテのリフが入って、そんでメタルになって、んでロッンロールになって、最後またコミカルで終わるっていう。ほらほらみんなの好きなヤツでしょ? って(笑)。
ーー「Eraser」はKAGEROのカバーですが、バイオリンが入ってドラマティックになっていますね。
白水 : もともとKAGEROに持ってく前の段階から、バイオリンの旋律をイメージして創った曲だったんです。聴き比べてもらうとわかるんだけど、KAGEROの方は色々変拍子なんよ。サビとかサビ前とか。個人的にはあっちの方がよりスリリングだと思うんだけどさ、言い方変えればわかりづらいとも言えるんだよね。『Fuse』のコンセプトの1つというか、別に変拍子にしなくてもカッコ良くは出来るから、そこは歩み寄ろうかなっていうことをilyoでやったの。だからこっちの「Eraser」にはそんなに変拍子は入れてない。元々僕の変拍子はわかりづらくすることが目的じゃないからね。僕たち人間的にはみんなポップなひとたちだからさ(笑)。
一同 : (爆笑)。
ーーポップといえば、3曲目が非常にポップでメロディアスな「The Bicycle Song」。これは名曲だと思います。
白水 : ああ、やっぱそうですか?「The Bicycle Song」は最初にメンバーに投げたとき、みんなめちゃめちゃ戸惑ったと思うんだよ。
ノブ : うん、戸惑った。
カズマ : うん(笑)。最初聴いたときに、友達が「今それ誰のデモ聴いてるの?」って。「いやilyoだよ」って言ったら「えぇっ!?」って。
白水 : こんなん完全に狙ってるんだよ。正直長く音楽やってるとさ、「こういうのが好きなんでしょ?」ってことくらいはわかるよ。「The Bicycle Song」みたいな曲って掃いて捨てるほどあるじゃん世の中に。でもいざヘッドホンとかでちゃんと聴くとだいたいしょうもないのよ、内容が。バッタモンみたいなもんだし。やっぱり耳障りが良いだけのものって聴きこめないものが多くて。今回「The Bicycle Song」でやりたかったのは、耳触りが良くて、でも音色もフレーズも超イカしててアレンジもしっかりしてる、ってものを創りたかった。クソなオトナにね、あんま音楽ナメてんなよっつーね。最終的にめちゃくちゃ良い仕上がりになったもんで安心した。
ーーこの曲が入ってることが1stとの大きな違いになっているんじゃないでしょうか。
白水 : そうだね。
ケンロー : これは初めて聴いた人は絶対ビックリするよね。
ジム : ああ、ilyoのこと知ってる人が聴いたらね。
白水 : それより僕はilyoのこと知らなくてバイシクルだけ試聴してアルバム買う人のことが一番心配だよ。
一同 : あははははは!
ケンロー : それでライヴに来たら…。
白水 : 「あれ~!? 違う!?」って(笑)。
ケンロー : でもこの曲は本当、すごく良いですよね。

ーーところでアルバムは前作の反響を受けて作られたんですか? それとも曲がたくさんあるからもう1枚作ろう、ということ?
白水 : 両方あるかな。最初はフル・アルバムにするつもりはなかったんですよ。5曲入りとかでゲスト呼んだミニ・アルバムで、店舗も限定して、くらいな感じで考えてたんだけど。てかKADOKAWAとは間違いなくその話で進んでたはずなんだけど(笑)。でも前作の反響と今回の内容聴かせたら「これはもうフル・アルバムでいきましょう」って言われて。「アタマおかしいのかなこのメジャー・レーベル」って思ったけど(笑)。じゃあもうちょっと曲を書こうかなと。
カズマ : 実感として言えば『Stop Your Bitching』を出してからまだ半年も経ってないんだっていう感じなんですよ。
ノブ : ああ~そうかもしれない。
白水 : てかカセットテープ出してからまだ半年ちょいだわ!
カズマ : 感覚的には『Stop Your Bitching』を出してから1年くらい経っている感じですね。
前川 : 録ったのが早かったもんね。
カズマ : そう、(1stは)ドラムに関しては去年の12月に録ったから。悠さんがぶっ倒れてたとき(笑)。
一同 : ああ、あったあった(笑)。
白水 : 前回のレコーディングのときに僕が胃腸炎になって。バンマスがいないままレコーディングが進んでいくという。今回はちゃんとディレクションできたからね。そういうのも良いアルバムが出来た理由かもね。
「目覚めの1発を作ろうぜ」

ーー時間が経っていると感じるのはライヴを数多くこなしてきたから、というのもあるんじゃないですか?
ケンロー : ああ、それもあるかもしんないっすね。
白水 : いや〈朝コア〉のせいだよ。全部〈朝コア〉のせい。
一同 : ははははは!
ーー今日の〈朝コア〉ライヴでは収録曲の「Csikos Post」を演奏しましたよね。この曲のカバーは誰の発想ですか?
ノブ : これも、吉祥寺でみんなでご飯を食べているときに、(白水が)確か言ってたんだと思う。
白水 : なんかカバーやりたいなって思ってて。カバー大好きだからさ。でもilyoでやるなら日本人全員が絶対知ってる曲が良いなって思って。じゃあクラシックでしょって。じゃあもうこれしかないでしょって(笑)。
ノブ : この曲、最初名前が出て来なくて。「なんだっけあれ?運動会のやつ」って言ってたんですけど。それで調べて「これだこれだー!」って。
ーー「Walk Alone」はKAGEROの曲なんですか?
白水 : まだライヴでもやってない曲だけどね。もともとKAGEROのアルバム用に創ってた曲なんだけど、これもilyoの方がわかりやすくしてる。KAGEROの方は激烈なパートが入っているんだけど。
ーーこの曲でもManhole New Worldのぬましょうさんが参加していますが、今作に何人かゲスト・ミュージシャンを加えた理由は?
白水 : これはよくジムとも話すんだけど、ギターでメロディで奏で続けると、僕らの感性的には「ダサいな」って感じちゃうことが多いんですよ。
ジム : なんかフュージョンっぽくなるというか、僕らがやらなくて良いというか。
白水 : ギターでメロディを弾くとクサくなるというか、どうしてもこう、バシッとこないんだよね。衝動に訴えてこないというか。だから前のアルバムってメロディのある曲は1曲も入ってないんですよ、実は。今回はわかりやすくするって点で、メロディのある曲も欲しいなっていうのがあって。だったらこのメンバーの中で無理矢理やるよりも、他の楽器を呼んじゃえば良いじゃんって。幸い友達もたくさんいるし(笑)。
ーー「Dear My Toy Box」はジムさんの曲ですが、他の曲とはまったく違う感じですね。どんな経緯で出来た曲なんでしょうか。
ジム : なんか1曲作ろうって話になったんだよね?「心地良いやつ」をやろうって(笑)。
白水 : そうそう。「ヴィレバンで売れそうなやつ書こうぜ」って(笑)。
ジム : それで2曲送ったうち、こっちが良いっていうことで。
ーー続く「rise / capture (More Extreme Fuse ver.)」はジムさんと白水さんの共作になっていますが、もはやアルバム後半はバンドが出てこないですね。
白水 : これは前に〈朝コア〉用に「日曜夜の安眠ノイズ」と「月曜朝の覚醒ノイズ」を作って配信したんだわ。それの「起きる用」の方。アルバム用にいじって、エフェクトとかもちょっと変えて。
ケンロー : この曲アタマおかしいよね、本当。
白水 : これ送られてきたとき「やっぱジムは完全にイッテるわ」って思った。
ケンロー : どうやったらこんな構成になるんだ?って(笑)。
ジム : 「目覚めの1発を作ろうぜ」って話になって。じゃあ送るわって。
白水 : ファイル開けたらすごいやつが入ってたわ(笑)。

ーー〈朝コア〉ありきで生まれた曲なわけですね。
白水 : そうそう。でもこういうのってなかなか普通のバンドって入れられないじゃん? 6人いたらそれぞれがアイデンティティになるから、どうしても6人が詰め込もうとしちゃう。いいじゃん別にって。全員入ってなくても。音楽が第一優先だから。
ーーこのバンドでしか出来ないことをなんでもやってやれっていう感じですか?
白水 : やっぱり段々つまらない大人になってくじゃん。常識とかに捉われて。そこから一歩外す勇気というかね。〈朝コア〉なんてそれこそそうだし。「こういうことがあったら絶対楽しいね」っていう話が飲みの場で出てもさ、やらないじゃん普通。だけど本当にやったらどうなるのかなっていうのを知りたかったというか。〈朝コア〉に来てくれる人なんて本当すごいよね。心から尊敬しますね僕は。そのみんなのポジティヴなエネルギーをもっと他にも広められるかどうかってのは僕ら次第だし、そういう意味でも今回はポジティヴなアルバムにしたかったんだよね。音もウジウジしたもんじゃなくて、パーッとしたものにしたかった。
ーーアルバムの印象は明るいし、優しいですよ。アコースティックな「Ajisai」もそんな優しい曲だと思います。
白水 : 僕のサイド・バンドって謳ってんのに僕が弾いてないっていう革命的なヤツだね(笑)。これは最初からアコギとトランペットだけの曲が欲しいなって思って書いた。バンド・アレンジにするつもりはサラサラなくて。このアレンジが1番良いだろうって思ってたから。だからベースも入れてない。
カズマ : 送ってきた段階で、これはもうアンビエント中心の曲にするっていうのは言ってて。
白水 : チャンケンの素晴らしいトランペットと、ジムのハンパないガットギターがたまらんね。
ジム : 録る前まではアコギにしようかガットにしようか悩んでたんだけどね。
白水 : ジムがガット弾けてよかったです。
ケンロー : うん、超絶良いよこれ。
ーー最後の「WTF?」は前作のラスト「Stop Your Bitching」の3秒を越える1秒。これはどうしても入れたかった?
白水 : やっぱこれがないと終わらないでしょ? 別に短いから良いわけじゃないけど、でもこれ以上何もないんだもん、この曲(笑)。1秒間の中に「What the fuck?」って思いが全部詰まってるから。
カズマ : BPM300の1小節です。
ケンロー : でもこれちゃんとギター3本入ってるからね。「ジャッジャジャッ!!」って。
カズマ : 俺、この曲で謎に5テイクくらい録らされましたからね(笑)。
白水 : 5回聴いて言ったのが「まあどれでもいいわ」。
一同 : (爆笑)。
白水 : 「どれも変わんねえよ」って(笑)。
「お客さんを煽りにいく」って事の優先順位が高めなバンドだから
ーーアルバムのリリース日、9月16日(水)にここ新宿LOFTで〈朝コア〉初のワンマン・ライヴが開催されます。
白水 : ワンマンなんだけど、アルバム2枚足しても44分くらいしかないんだよね。今回のも22分しかないんだわ。あんなに一生懸命10曲も書いたのに!
一同 : ははははは!
白水 : あとは今回のアルバムはゲスト・ミュージシャンを呼ばないとできない曲があるから。彼らが朝6時に来てくれるかはわからん。やれるだけやります。〈朝コア〉が実現したのも新宿LOFTがアタマおかしかったから。LOFTじゃなきゃこんなことできないよ。音楽っつーか芸術なんてさ、現代人の生活に於いてそんなに必要なもんじゃないからね。それで人が動いてくれるっていうのは簡単なことじゃないから。〈朝コア〉にしても普段のライヴにしても「楽しいから来てよ」って言うだけなら誰でもできる。でもそこからどうやって本当に行動してもらうか。最近それについて考えるのは嫌いじゃなくなったね。色々やって、人が実際に動いたときって本当に面白いと思う。昔はその感覚がなかったのかもね、僕自身に。

ーーわかる人だけに伝われば良いという?
白水 : 極端に言ってしまえばね。でも人のリアクションが嬉しいって思えるようになったのは、KAGEROがアメリカでライヴするようになってからかな。全然知らない外国人が自分の音楽でテンションが上がってるのを見て、やっぱめちゃくちゃ嬉しかったんだよね。その気持ちは日本でやってても変わらないはずだなって。ilyoには特にそういう気持ちがありますよね。ライヴの中で「お客さんを煽りにいく」って事の優先順位が高めなバンドだから。昔はそういう意識があんまなかったから。そういう意味でも今音楽が本当に楽しい。でもやっぱり他人の意見に特化しすぎたくはないね。例えばさ、今回「The Bicycle Song」でワーって評価してくれる人がいたとしても、たぶんそれだけの理由じゃもうこういうのは書かないだろうね(笑)。人から良いねって言われたら嬉しいんだけど、じゃあそれを続けようかって気にはならない。今回の「The Bicycle Song」は、これ僕が書くって誰も予想してないだろーなーって思ったから楽しかった。メンバーが「えっ!?」って言ってくれるのも楽しかったよ(笑)。
ーーそしてそのメンバーたちが〈朝コア〉のために早起きして早朝に集まってくれるという。
白水 : このひとたちが一番バカだよね。「OKです!」じゃねーよって(笑)。
一同 : ははははは!
ーー今後はツアー、〈朝コア〉以外でどんな活動を予定していますか?
白水 : 秋にilyoでマレーシア・ツアーに行くんですよ。来た話で面白いものはやっていきたいなと思いつつ、やっぱり前に進むことでより楽しめるのかなっていう感覚があるから。9月の〈朝コア〉ワンマンから国内ツアー回って、色んなフェス出て、マレーシアに行って、んで11月に代官山UNITでワンマンやる。それが終わったときに次に何が見えるかなって感じかな、今は。
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LIVE INFORMATION
I love you Orchestra "Fuse" 発売日当日スペシャル朝コアワンマン!!
2015年9月16日(水)@新宿LOFT
料金 : ¥1,000 ※モーニング付き
時間 : OPEN / START / CLOSE 6:45 / 7:00 / 8:00
出演 : I love you Orchestra(ワンマン)
I love you Orchestra "Fuse" JAPAN tour
2015年9月21日(月祝)@仙台LIVE HOUSE enn 3rd
料金 : 前売 2,000円
時間 : OPEN / START 18:45 / 19:15
出演 : I love you Orchestra / Manhole New World / and more!!
2015年10月10日(土)@大阪天王寺Fireloop
料金 : 前売 1,800円
時間 : OPEN / START TBA
出演 : I love you Orchestra / Rosy John / パブリック忍者 / bent / and more!!
2015年10月11日(日)@名古屋栄CLUB ROCK'N'ROLL
料金 : 前売 2,500円
時間 : OPEN / START 17:30 / 18:00
出演 : I love you Orchestra / Dr.DOWNER / TheSpringSummer / ‘wl of the art/solamils.
I love you Orchestra "Fuse" JAPAN tour FINAL!!
2015年11月12日(木)@代官山UNIT
料金 : 前売 2,500円 ※別途1ドリンク・オーダー
時間 : OPEN / START 19:00 / 19:30
出演 : I love you Orchestra ※ワンマン
一般発売日 : 2015年9年12日(土)
Pコード : 275-835
Lコード : 75141
PROFILE

I LOVE YOU ORCHESTRA
パンク・ジャズ・ハードコア・シーンを席巻する "孤高の異端児" KAGEROのベーシストでありバンマスの白水悠が「ファック大人の事情!」と言い放ち、気のしれた仲間を集めて2014年に突如結成。
「KAGEROでやったら怒られることをやる」を信条に、地元吉祥寺を中心にライヴ活動を開始。
何故かみんなライヴを避けがちなお盆やGWにツアーしてみたり、変な物販つくったり、アイドルとの対バンで逆にチェキを売りさばいたり等、KAGEROとは完全にベクトルを逆に振り切った破天荒で遊び心MAXな活動でフロアを沸かせる。
2015年2月、独立系レコードショプ限定カセットテープ『Sheep Chaser EP』を100本限定で突如リリース、発売1週間で各店舗売り切れ寸前の状態に(現在ソールドアウト!!)。また2015年度より月イチペースで朝活GIG「朝コア」を開始、新宿ロフトで早朝7時から爆音を浴びさせかけるSっぷりで世間から羨望と戸惑いの眼差しを欲しいままに。
>>I LOVE YOU ORCHESTRA Official HP