バンドが10年間やってきたことをパッケージしたい
──そういえば“Golden Morning”で「あい!」って声が入っていたけどあれは?
稲葉:それ、僕です。この曲は一発録りなんですけど、和太鼓を叩いてる気持ちで言わせていただきました。「あい!」っていうのはスタジオのエアーで拾った声で、こぼれた気合いと言いますか(笑)。ちなみに“愛想のないブレイク(with FORD TRIO)“の演歌みたいな声も僕です。
──そうなんだ(笑)。“Golden Morning”はハード・ロックっぽいリフが出てくるのも良いですよね。鬼のギター・ソロもあったりして。
橋本:この曲はもう「ギター弾こうぜ!」って曲なので(笑)。もともと僕がリフのアイディアを持っていて、レッド・ツェッペリンみたいな、ああいうリフがやりたいがために合宿で広げていきましたね。
──合宿に行ったんだ!
橋本:そうなんですよ。今回は山梨まで作曲合宿にはじめて行ったんです。アルバムを見据えてではありましたけど、みんなでこもってガンガン音楽を作る経験をまずしたくて。楽曲のタネも2、30曲分くらいできました。
稲葉:2泊3日で行ったんですけど四六時中音を出してました、本当にずっと。“Golden Morning”と“See The Light”はこの合宿で生まれた曲なんです。
──“See The Light”は、なかなか壮大な曲です。
橋本:僕のバンド人生のなかでハイライトかもしれません。合宿初日の24時過ぎくらいに片付けしようと階段を降りたら、僕がハマっていたKing Gizzard & The Lizard Wizardの長尺の曲が流れていて。それを聴いていたら片付けをやめてひとりひとり楽器を弾き出したんです。そこから20分くらいのセッションをしたんですけど、それを上手くパッケージしたいと思ってまた合宿メンバーで集まってようやく完成した曲なんです。
──楽曲の世界観を歌詞でどのように表現しようと思いましたか?
橋本:抽象的な歌詞ですけど、いちばん自分を表現できました。しかも合宿メンバーみんなと作った曲なのに自分を出せているってすごく気持ちいいなって思うんですけど──でもなんだろう。「冥王星ってかわいいな」ってめっちゃ思いますね。
──え? たしかに歌詞の冒頭に「冥王星で割った夕暮れ」って出てくるけど...。
橋本:冥王星ってもともと太陽系にいたけど、2006年に外れちゃったじゃないですか。ずっと自分は太陽系だと思っていたのに、いつの間にか知らない誰かに外されちゃう過程も、外れちゃったその姿もかわいいです。冥王星と自分を重ね合わせちゃうんでしょうね。冥王星はかわいいんです。
──ええっと...。この曲も1発録りだったりするの?
稲葉:はい。途中からクリックも出さずに、その場でうわーってやったからちょっとミスもあるんですけど、あえて録り直しはしていなくて。あの日のあの場所をそのままパッケージしたかったんです。
橋本:ちょこちょこ修正してみたものの、やっぱり雰囲気が違って。ミスにも良し悪しがありますけど、なんでも修正していたら無機質なものになっちゃうと思うんです。この曲は人間味がよく出ていますね。

──“収穫(りゃくだつ)のシーズン“、”Be My Words”、“ベニエ“の3曲は、2021年に3ヶ月連続配信シングルとしてリリースされているけど、どうして今作にも収録したんだろう。
橋本:この3曲を制作している期間は、僕のなかで模索してる時期で。その模索のグラデーションがアルバム作品に入ったとき、世界がひとつに繋がると思えたので今作に収録しました。あとはこのときから「バンドが10年間やってきたことをパッケージしたい」という気持ちがあったので、振り幅のある3曲を入れたいなと。
──たしかに振り幅がある3曲だよね。
橋本:これまで僕らは色々なジャンルを試していて、最終的には落ち着くと思っていたんですけど、僕のなかであまり折り合いがつかなかったんです。ひとつを抽出してやり続けることは不自然な気がしたんですよ。色々なことをやっていても、芯が繋がっているのであればいいかなって思うようにしたら、これまで以上に広がりを持たせることができました。