INTERVIEW : Helsinki Lambda Club

Helsinki Lambda Clubほど、各所を飄々と渡り歩いているギターロックバンドはいないんじゃないだろうか? ビックフェスから、小さなライヴハウス。日本の地方都市から、海外まで。世界中のおもしろい音楽を吸収し、吐き出しながら...。彼らがいまのインディー・シーンの最もかっこいいあり方だし、その魅力に取り憑かれている人がどんどん増えていることが嬉しい。まだ彼らを聴いたことがない人は、『ヘルシンキラムダクラブへようこそ』からスタートすればOKだ!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 梶野有希
写真 : 大橋祐希
ようやくスタート地点に立ったくらいの感覚なんです
──取材日の7月4日は、結成10周年ですね。これまでで印象的な思い出をそれぞれ教えてもらえますか?
熊谷太起(Gt):僕がバンドに入りたてぐらいの時期に(橋本)薫君が稲葉に怒ったことがあって。
──ええっ(笑)。
熊谷:僕もですけど、稲葉って時間にかなりルーズなんです。スタジオへ移動中の車内で薫くんが「ちょっと俺、今日は練習できない」ってみんなに言って。その理由をきいたら稲葉の遅刻癖が原因で。僕らは全員遅刻するから別にいいんですけど、当時はもう積み重ねが結構あったので、これはちょっと言わないとなって。
稲葉航大(Ba):もうめちゃくちゃ謝りました……(苦笑)。
──稲葉くんの思い出は?
稲葉:ライヴ本番前に薫さんが太起さんのギターを弾いたら弦が切れちゃったことがあって。太起さんが加入してはじめてのライヴで、本番はサブのギターで演奏したんですよ。だけどそのギターとアンプの相性が悪すぎて、太起さんは泣きながら“しゃれこうべ しゃれこうべ“のリフを弾いてて(笑)。でも僕はそれを見て、ライブの洗礼を受けてるなって思いつつ、一生懸命弾いてる姿に胸がグッときましたね。
──橋本くんは?
橋本薫(Vo / Gt):とあるライヴハウスで打ち上げをしたときに、僕らはソフトドリンクで軽く乾杯だけして帰ろうと思っていたら「会費の3000円置いていってください」って言われて。お酒も飲んでいないし、本当にちょっとしかいなかったから僕はあまり納得できなかったんですけど、稲葉はすぐに会費を払おうとしていたんですよ。それがなんかかっこよかったんですよね。

──ヘルシンキらしいエピソードありがとうございます。では今回のアルバムの話もきかせてください。まず『ヘルシンキラムダクラブへようこそ』ってセルフタイトルにも近いような作品名だけど。
稲葉:セルフタイトルはまだまだ早いぞというか…。
──早い?
橋本:この作品でようやくスタート地点に立ったくらいの感覚なんです。結成して10年経ちますけど、ビジョンがないっちゃなくて。でもいまはようやく「デビューの先はどうしよう?」っていう目標を見つけるための準備が整った気がするんです。そういう意味も含めて「ようこそ」って言いたくて。
──より音楽に集中できるようになった?
橋本:はい。バンドって音楽を作るだけではなくて、他にも考えないといけないこともたくさんあるなかで歯車がばっちりハマるってすごく大変なことで。その歯車がどうにかハマるように頑張ったのがこの10年間でした。最近はようやく上手に回っている感覚がありますね。
──熊谷さんと稲葉さんは「こんなアルバムを作りたい」っていうイメージはありましたか?
稲葉:ベースの裏テーマとしては、全曲違うアプローチをしようと思っていました。いままで聴いた色々な音楽から得たものをベースのプレイに全部散りばめられたらいいなと。
熊谷:僕のなかで今作はコンセプトがないといえばなかったので、収録曲をどう磨いていくかということばかり考えていましたね。