令和のギャルはマインドギャル
──5月25日には、新しいEP『ネオン』がリリースされますね。タイトルはどういうところから決まったんでしょうか。
詩羽 : 『ネオン』というタイトルは、私が提案させてもらいました。ネオンサインが気になっている時期があったんですよ。いまは、どんどんネオン菅職人さんが減っていて、ネオンサインを作れる人が少なくなっていることを知ったんです。そういう光が消えていってる感じが、コロナ禍でお店がどんどん潰れて、街の光が消えている感じとどこか似ているなと思ったんですよ。そして、ネオンの意味を調べてたらラテン語で「新しい」って意味があったんですよね。今回のEPは、すごく新しさが詰まってていて、そういうところでもぴったりなのかなと。
──楽曲についてはどうですか?
ケンモチ : 僕は冷蔵庫に残ってる野菜でおいしいチャーハンを作っている感じなんですよ。「この食材とこの調味料があったら、これだな」みたいなイメージです。
詩羽 : 楽曲について、ケンモチさんから何かを言われる事って基本ないですね。
ケンモチ : もちろん「ここ、どういうニュアンスにしましょうか?」とか「ちょっとこういう風にしようか」みたいな感じのことは話してますよ。でも、レコーディングしたときより、「ライヴの方がかっこいいよね」って言われるようになったら、それがいちばんいいなと思っています。

──詩羽さんは、歌詞についての疑問はないんですか?
詩羽 : ないですね。元々「そうなんだ」って受け入れる許容範囲が広い性格なんですよ。“アリス”とか“バッキンガム”とか、歌詞に疑問を持ち始めたら止まらないじゃないですか。だからそのまま受け取っています。
──(笑)。水曜日のカンパネラの活動において、ここだけは譲れない部分はあるんですか?
詩羽 : 楽曲に関してはあんまりないんですけど、見た目やビジュアルの部分には、私の想いが出ていますね。前回の『招き猫 / エジソン』のジャケットは、私が「魚眼カメラで撮って欲しい」って伝えて、それが採用されました。

──なるほど。ビジュアル面については、詩羽さんが関わっているんだ。
Dir.F : 僕やカメラマンは「こっちがいいかな?」って思った別のカットがあったんですけど、詩羽が「絶対こっちがいい」って言うので、いまのジャケットに決まりました。そこは結構任せています。
──今作のジャケットには、どういうこだわりがあるんですか?

詩羽 : 『ネオン』というタイトルをイメージしたビジュアルにしました。そのままネオンサインを入れるアイデアもあったんですけど、ストレートすぎるかなと。それで光が反射するものを入れたり、ライトの当て方を工夫しました。ビジュアルは、髪型も含めて「なんだこれは?」という違和感がありながらも、ひとつの画としても完成されているものを作りたかったんです。髪にもハリガネ入れて、グネグネの変な髪型にしてもらいました。水曜日のカンパネラって、普通じゃない違和感がやっぱりおもしろいなと思っているので、そこは大事にしています。
Dir.F : 僕らも詩羽の意見を取り入れる形でいろいろ作っているんですけど、自分達の想像している範囲から離れた新しいものが生まれるので、その方がいいのかなと思っています。
ケンモチ : 僕が作った曲が詩羽によって解釈されて、伝言ゲームでちょっとずつずれていくのが、カンパネラのおもしろいクリエイティヴになっているような気がしますね。

──リードの曲の“織姫”は、「織姫がギャルのラッパーになっていたら」というストーリーなんですね。
ケンモチ : 楽曲的には、エレクトロハウスに、歌い手さん系のキラキラしたポップスが交互に入ってくる構成にしたいなって思っていました。織姫パートと彦星パートでトラックのイメージが変わっていくギャップを意識して、ごちゃ混ぜにして作った曲です。
──ギャルというイメージはどういうところから?
ケンモチ : いままで、「歴史上の人物が現代の違う職業に就いていたら」みたいな曲をたくさん作っていたんですけど、今回はちょっとした恋愛ソングにしたいなと。織姫と彦星の話って、1年会わないところが、おもしろ掘り下げポイントだなと思ったんですよね。1年会わない間に、誰だかわからなくなっちゃうこともあるじゃないですか。そこを拡大解釈して、織姫が1年間の間にラッパーになったらおもしろいかなと思って作りました。TikTokを見ていて「超チルなラッパー」ってネタが去年バズっていて、それを入れ込んだんですよ。でも、いまは流行り廃りがすごく早いから、これでいいのか不安でした。
──おふたりにとって、ギャルってどういうイメージなんですか?
ケンモチ : ギャルの概念って、いまは見た目っていうよりも、精神性の方がまあ重要視されているらしいんですよ。
詩羽 : ギャルって変化したりしすぎて、もはや気持ちの問題なんですよね。誰にでも基本明るく、全部プラスで入るマインドが、もうギャルなんじゃないかと。なんでもかんでも重く受け止めず、明るく丸め込んだら、それはもうギャルですね。令和のギャルはマインドギャルです。
ケンモチ : そういえば、「エモい」って言葉は若い子たちの間では、もう古いんですか?
詩羽 : もうあんまり使わないですね。
ケンモチ : え!? 僕はすぐ使っちゃう。
詩羽 : エモいは普通に使うんですけど、ブームは多分終わっていて。いま「アツい」を使ってたりしますね。でも、渋谷のミヤシタパークでTiKTokを撮っているような、流行りの最先端の高校生はもう使ってないかもしれないです。
