「やらないでいられないことをとにかくし続けなさい」
──"ぼくら"、"遊戯"と作っていって、その次に出来た曲は?
猪狩:次は"金糸雀"とナニユエ"がほぼ同時でしたね。レコーディングも確か同じ時期で。
──どちらも先行配信されていましたね。
猪狩:バンドの結成記念日の4月5日に"金糸雀"をリリースしました。"ナニユエ"は、1年前からBillboardで開催している〈裸の特異点〉で披露したくて作ったんですよ。もちろん、今作へ収録することも見据えてですけどね。
──森田さんが"ナニユエ"に参加されたのはどういった経緯で?
猪狩:そのBillboard公演には、昨年に引き続き今年も森田さんに鍵盤で参加していただいていて。それで、せっかくだから今年の公演は森田さんと一緒に演奏できる曲をやりたいと思ったんです。ただあくまでも曲が先行だったので、デモができたタイミングで女性コーラスと鍵盤の音を森田さんにお願できたらという流れでしたね。
──森田さんとの制作はいかがでしたか。
猪狩:森田さんのコーラス・ラインがすごく独特でよかったんです。だからこっちからなにか制限はしていなくて、「鍵盤もどんどん変なことやってもらいたいし、コーラスもやりすぎかなってくらいやってください」とまず伝えました。最後の「夢にも出てきそうだよ」("ナニユエ")のコーラスが上がっていくところは森田さんがやってくださったんです。技術面はもちろんですが、森田さんは愛をもって曲と接してくれるのが、なにより大きかったですね。僕らのことをすごく好きでいてくれているんですよ。
小西:本当にいいアプローチをしてくださいました。森田さんの鍵盤とコーラス以外は全部録音して、アレンジもほぼ完成された状態で森田さんにデータを送っているんですけど、その回答がすごく森田さんらしくて。森田くみこ、という人の力をすごく借りたからこそ完成した曲ですね。
──"ナニユエ"の歌詞については、いかがでしょう。
猪狩:今作の裏テーマとして、「もののけ」があって。オバケの方ではなく妖怪の方の。というのも、結構前から水木しげるさんに影響を受けていてですね。彼が「やらないでいられないことをし続けなさい」と言っていたんですよ。最後はどうなるかわからないのだから、どうせならいまやらないでいられないことをとにかくし続けなさい、と。なんかね、すごくいいんです。この歌詞はその言葉から生まれましたね。
──"金糸雀"の制作はいかがでしたか?
猪狩:元の曲がすっごい長かったんです。6分くらいかな。僕自身は長く感じなかったんですけど、マネージャーもプロデューサーの野村陽一郎さんも「ちょっと長いかな」って(笑)。ただ歌詞がすでにフィックスされていたので、どうにか削っていまの形になりました。
小西:僕も最初に聴いたときは、まだ終わんねえんだなって正直思いました(笑)。1ブロックくらい丸々抜いたはずです。
猪狩:そうだね。最初は2コーラス目のAメロと大サビがもうひと回しあったんですけど、なくしました(笑)。ただ、それでもちゃんと納得いく歌詞にはなってます。
──歌詞はどんなことから影響を受けていますか?
猪狩:18歳〜24歳くらいまで札幌に住んでいたんですけど、その地下街に鳥がいたんです。それがめちゃくちゃ不思議な光景で。いわば都市伝説のような感じですけど、「地下で酸素が薄くなったとき、いちばん最初に鳥が気づくらしいからそのためにいる」という話をきいて。だから昔からトンネルの工事には鳥を連れていくことが結構あるらしいんですよ。それがすごく衝撃的だったし、この都市伝説が本当だったらすごいことだと思ったんです。そういうところから歌詞を書いていきましたね。
──だからこの曲のMVにはトンネルが出てくるんですね。ちなみにですが、"金糸雀"にも、1曲目"ディスコード"、3曲目"荒野を行く"の歌詞にも「赤い血」が入っていますがこれは?
猪狩:今作だけでなくて、僕の歌詞には昔から「赤い血」というワードがめちゃくちゃ出てくるんですよ。めっちゃ入っているなと自分でも思いますけど、本当に無意識で。
