REVIEWS : 101 インディ・ポップ〜ロック (2025年6月)──OTOTOY編集部

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をコンセプトに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューするコーナー。そういえば……ということで今回から隔月でOTOTOY編集部が主に国内のインディ・ポップ〜ロックの分野でのビビッときた作品をレヴューします。日々、大量の音源や頻繁なライブにも接しているOTOTOY編集部のスタッフが「これは聴くべき」という作品たちです。
OTOTOY REVIEWS 101
『101 インディ・ポップ〜ロック(2025年6月)』
選・文 : OTOTOY編集部 / 石川幸穂、菅家拓真、高田敏弘、TUDA、藤田琴音
ヨエコ 「Country Color/Doremi Song」
2008年に惜しまれつつも活動を終了したシンガーソングライター、倉橋ヨエコが、2023年に名義を「ヨエコ」に変更して活動再開。machi名義で制作していた2曲を、新録音かつ"ニューヨエコヴァージョン"でリリースしました。1曲目の"Country Color"は倉橋ヨエコの最大の持ち味とも言える、人間の持つネガティブな感情とそれに寄り添う優しい感情をまっすぐに歌った詞が堪能できます。2曲目の"Doremi Song"は、軽快に刻まれるメロディーやリズムに乗った、まるで楽器のような歌声が楽しい一曲! ヨエコの美味しいところを一度に楽しめるので、SNSで話題になっている"沈める街"から入った方にもぜひ聴いて欲しい作品です。(藤)
有田咲花 『鯨』
SoundCloudに曲をアップしnoteに日記や小説を綴る、しかしその実像は謎多きミュージシャン、有田咲花。昨年の『貉』に続く『鯨』も、ゲリラ的に発表された作品。ギターを抱えて映るジャケットも相まってどちらかと言うとロック色の濃かった前作に対し、今作は宅録の質感が際立ち、打ち込みとギターが共存するサウンドが印象的。言葉選びも独特で、仏頂面で言葉を置くていくような辛辣な歌詞は町田康を思わせ、Lantern Parade的なムードもにじむ。サウンドは現代的でありながら、どこか1960~70年代の日本文学や漫画、歌謡曲の退廃美もただよう。どこまで意図しているかは知る由がないが、あらゆる境目で震える音を耳が追い続けてしまう。(石)
HUGEN 「祭」
今年のFUJIROCK ROOKIE A GO-GOにも出演し、各国のエレクトロ・チャートに入るなど話題沸騰中のFUGENの1stEP。ジャケのデザインからも徹底された遊び心が織り交ぜられた日本的な「祭」。それをそのまま反映したハイファイな民族楽器と、対比的なリバースなどの空間表現を多用したエフェクティヴなサウンドが絡み合った見事な作品。綿密につくられた温かい空間の中に、自由なテクスチャーが煌めいています。和楽器とエレクトロの異色の組み合わせが、お互いに秘めているサイケデリアをも呼び覚まし、彼らがそれら全てを上手にパッケージングしています。(自分が勝手に呼んでいるだけですが)「脳みそのような音楽」が好きな人にはおすすめです。(菅)