OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.250
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
白い息の向こうにはツイン・ピークス
気づけばもう12月。身をもって寒さを感じるようになってきましたね。湯船に浸かったときの気持ちよさが夏の比じゃなかったり、朝に目が覚めてから布団を出るまでの時間が日に日に長くなっていることで、冬が来たんだなあと実感しているこのごろです。あとはご飯がすぐに冷める。これは、食べるスピードが遅いものにとってはなかなかにつらいものがあります。
でも冬は冬で、洋服は選択肢が広がって選ぶのが楽しいし、ホット・コーヒーはますます美味しいし、楽しめるポイントを探してなんとか冬嫌いにならないように心がけています。寒さとマッチして良さが倍増して聴こえる曲なんかもありますし。個人的には、寒くなってくるとここぞとばかりに暗めな雰囲気の曲を聴いてやろうという気分になります。冬の醍醐味ですね。暗めの曲とは別に、美しいファルセットの歌声や、声の高さ関係なく透きとおるような綺麗な歌声が入った曲も冬の厳かな空気感に合うと思っています。そこから派生して、今回のプレイリストは女性ヴォーカル縛りで冬っぽい曲を選びました。性別で選別するのは野暮ではありますが、ご勘弁を……。
プレイリストのなかに、アメリカのTVドラマ『ツイン・ピークス』のオープニング・テーマ曲、ジュリー・クルーズの “Falling” という曲があります。『ツイン・ピークス』は好きなかたも多いと思うのですが、なにを隠そう私もファンのひとり。デヴィッド・リンチが監督したミステリーを軸とした群像劇で、オリジナル・シリーズが1990年〜1991年に、リミテッド・シリーズが2017年に放送されました。決して楽しいストーリーではないけれど目が離せなくなる妙な魅力があるんですよね。一見なごやかに過ごしているようにもみえる登場人物でも、みんなそれぞれにやり場のない「うまくいかなさ」を抱えていて、それが物語を動かしていきます。そのさまはグロテスクなほどにリアルで、決して心地よくはないのだけど、目が離せなくなるんです。中毒性という言葉がピッタリ。物語のおそろしさと、テーマ曲である “Falling” のホーリーさが不気味なほどによく合っています。当時、息が白く見えるくらいに寒い部屋で観た記憶にひっぱられ、冬っぽい曲としてセレクトしました。近いうちにまた観たいです。
