2024/06/28 18:00

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.279 好きなものの話

OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)


好きなものの話

三谷幸喜脚本のTVドラマ『古畑任三郎』が放送開始から30周年を迎え、今月6月21日まで連日再放送されていました。田村正和主演のコメディ・タッチのミステリー・ドラマで、各回に犯人役として豪華な俳優陣が出演しています。高校の下校時間が早まるテスト期間にたまたま再放送していたのを観たのをきっかけに、私はそこから何度も観返しており、殿堂入りのお気に入りの作品です。好きすぎるので、今回の久しぶりの再放送は録画しそこねて見逃してしまってもテレビで流れているという事実があるだけで嬉しかった期間でした。

観返すたびに小さな発見があったりなかったりするのですが、今回気づいたのは、作中で興味深い食べものが多く登場すること。笑福亭鶴瓶が犯人役として出演する回で古畑が食べる、ぜんぜん減らないパフェ。そしてそのあとに食べる明太子スパゲティは、あまりの辛さに古畑が悶絶していて、そんな辛い明太子スパゲティがあるのかと、あるなら食べてみたい! と思いました。あとは鹿賀丈史の回で古畑が食べたいあまりに必死に探して回るスタミナ酢豚弁当。中華料理のなかでスター的立ち位置ではない酢豚が冷えたお弁当になって、それがうまいだなんて (スタミナっていうのがまたポイント)。どんなものなんだと気になりました。それから古手川祐子の回で古畑が振舞うミートローフと茶碗蒸しと焼きなす。組み合わせ最悪だけどこれも食べてみたい。ほかにも、うにマヨネーズのおにぎり、マッシュポテトとマッシュポテトのダブル・マッシュ、研究室の実験器具で炙って食べるあたりめ (この回は今回放送されていませんでした) などなど、思わず興味を惹かれる食べものが頻出しています。物語の展開とは関係のない細かな描写で奇想天外な演出があったり、クスッとする小ネタが満載なのも『古畑任三郎』の魅力です。

そして今回の再放送をオススメした知人も観てくれて、印象に残った回の感想を教えてくれたのも嬉しかったです。自分とはまた違った視点からの感想はとても新鮮でした。思えば古畑も音楽も映画も、自分の好きな作品の話を人とあまり交わしてきていないことに気づいたんです。ネットで見るどこかの誰かの見解よりも、身近な人の感想のほうがより鮮明に響くし、それに対しての自分の見方も変わっていきやすい。いままでは自分だけの秘密基地にいるような感覚でひっそりと楽しんでいたけど、自分の脳みそからは生まれないような考えにたくさん触れて、好きなものをもっと好きになれたらそんな幸せなことはないなと思った次第です。

この記事の筆者
石川 幸穂

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