REVIEWS : 086 R&B (2024年10月)──R&B Lovers Club (Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemi)

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ3ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回から新たな書き手に加わってもらいます。今回はR&B偏愛&紹介ポッセ、R&B Lovers Clubより、Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemiの4人による、現行のR&Bのエッセンシャルな新譜9枚のレヴューをお届けしおます。
OTOTOY REVIEWS 85
『86 R&B(2024年10月)』
文 : R&B Lovers Club(Cookie、つやちゃん、アボかど、Yacheemi)
Leon Thomas 『MUTT』
SZAやアリアナ・グランデ、ケラーニなど錚々たる面々を手掛けてきたプロデューサーデュオのザ・ラスカルズ。本作はそのメンバーのレオン・トーマスによるソロ作で、セルフ・プロデュース曲以外も多く含むシンガーとしての顔を強調した作品だ。ザ・ラスカルズでは華やかなメインストリーム寄りの楽曲も制作してきたが、ここで聴かせるのはソウルをベースにヒップホップやサイケデリック・ロックなどの要素も吸収したネオソウル。フランク・オーシャンを一歩ソウルに寄せたようなエグみのある歌声の魅力が、ズブズブと沈み込むようなサウンドで堪能できる。マセーゴやグリゼルダのコンダクター・ウィリアムズなどの起用も絶妙だ。(アボかど)
MICHELLE 『Songs About Your Specifically』
全員がNY育ちの6人が集まったコレクティヴのミシェルは、アメリカのR&Bの中で一際ユニークな存在だ。R&Bを軸にインディ・ロックなどの要素も導入した……と書くといわゆる「オルタナティヴR&B」のようだが、例えばザ・ウィークエンドやジェネイ・アイコとは似ても似つかない爽やかさがある。さらにもっと自然体なムードもあり、何かを「取り入れる」のではなく普通に出力されたものがこの形になったような印象だ。今作にもその越境性とポップネスが詰まっており、曲によってはシューゲイザーなどとも隣接するようなサウンドが楽しめる。R&B Lovers Club的には「Akira」でのジニュワイン「Pony」風の音に注目。(アボかど)
Nicolay 『Terra Farma』
フォンテと共にフォーリン・エクスチェンジを組む、オランダ出身のプロデューサーのニコレイ。元々はヒップホップ畑の人物だがエレクトロニカやハウスなども制作し、フォーリン・エクスチェンジではR&B寄りの作風も多く聴かせてきた。今作はニコレイのソロ作としてはほぼ全曲に初めて客演を迎えた意欲作。ラッパーの客演はスカイズー(とシンガーとしてのフォンテ)のみで、ほかは全てシンガーを迎えたR&Bモードの作品だ。ネオソウルやブギー、Gファンクを横断するようなサウンドとソウルフルな歌声の絡みは極上もの。フォンテやビーマイフィアスコらが歌う「Light Another One」 での美しい歌声の絡みは悶絶必至だ。(アボかど)