2025/03/07 18:00

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.315 UK滞在記

OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)


UK滞在記

1ヶ月ほど前に、2週間弱イギリスに滞在しました。基本ロンドンにいたのですが、ヒースロー空港に到着次第、まずはロンドンとは反対方面の港町・ブリストルへ、そして、週末には気になっていたクラブに行くためにマンチェスターも訪れることに。到着する前は「冬のイギリスはどれだけ寒いんだろう」と身構えていたのですが、いざ過ごしてみると、そこまで寒くない。風の強い東京の方がむしろ体感気温が低いような印象でした (ただ、北部のマンチェスターは圧倒的に寒かった! なのにマンチェスターの人はロンドンなどの人に比べて薄着なのは何故だろう)。

まずは、ブリストル。ジャマイカ系移民の多いこの都市は、サウンドシステム・カルチャーが根強く残っていて、自分の好きなレーベルはブリストル発のものが多いです。この港町はブリストル大学を中心とした学生街で、30分ほどで大体歩いて回れるくらい。そこまで規模も大きくないので中心部であれば非常に住みやすそうな印象でした。ただ北部はちょっと治安悪め。美味しいお店があるストリートから1本逸れると雰囲気がガラッと変わるので行く人は気をつけてください。2日ほどしかいなかったのであまり堪能できなかったのですが、気になっていた〈Strange Brew〉というクラブと、日本でも馴染みのあるレコード・ショップ〈Idle Hands〉には行けました。ちゃんとしたシステムが導入されたパーティーは次の機会にリベンジ。

週末に向けてロンドンに戻り、〈Brixton Jamm〉というチャラめのクラブで、グライムMCオールスターのパーティーが開催されていたので行くことに (ロンドンの南部・ブリクストンに滞在していたため、徒歩圏内に〈Brixton Jamm〉も含めていくつかクラブがある感じ)。日頃よくイヤホンから流れてきた独特の声が、目の前のマイクを通して直接聞こえてくることに感動しました。特に大御所MC、フローダンの迫力と貫禄は凄まじい。声を発するだけでフロアを熱狂させていて、圧巻のパフォーマンスでした。

そして、明けて土曜日は友達と一緒にバスに乗り、揺られること5時間。マンチェスターに到着しました。雨も降ってたし本当に寒かった。ロンドンよりも遅くまでパブがやっている印象で、サタデーナイトだからか、繁華街は非常に騒がしかったです。大阪っぽいイメージ。そして繁華街を抜けて20分ほど歩いたところにある〈The White Hotel〉というウェアハウス型のクラブに行ってきました。小上がりのスペースやフェンス越しのブースなど、なかなか不思議な設計の箱でしたが、自分の好きなDJばかりで大満足。非常にストイックな一夜でした。個人的にはこの旅のいちばんのクラブ体験です。友達の家に泊まった後、乗る予定のバスに乗り遅れて、急遽パブで時間を潰すことになり、フットボールの試合をパブで観戦する (しかも自分もファンの、地元マンチェスター・ユナイテッドの試合) という小さな夢が叶ったことも含めて、マンチェスターは特にいい思い出になりました。

そして、無事にマンチェスターから帰還した後の日程は、ロンドン市内を散歩しがてら、気になってたアパレルのお店やレコード・ショップ、クラブを巡る日々。連絡をとっていたロンドン在住のDJに街を案内してもらえたのも嬉しかった。移動するにしてもそこそこのお金がかかるので、歩けるところはなるべく歩いて、どうしてもという場合はバス、地下鉄を利用するジリ貧旅。そして何より、イギリスのご飯は不味いというより薄く、そしてこれまた財布を痛めつけていくので、基本果物やクッキーを主食にしてちびちび耐え忍ぶ毎日でした (丸亀製麺を見つけたときには時すでに遅し、気づいたらトレーを滑らせてうどんを待っていました)。個人的にいちばん辛かったのは、卵が食べられなかったこと。自分で調理できる環境があれば、もう少し余裕のある生活ができそう。最後に体調崩したのも残念でしたが、総じて刺激的な毎日で、あっという間でした。

イギリスのクラブ・ミュージックに友達と一緒にハマってから、DJを始め、クラブでガッツリ遊ぶようになった身としては、今回の旅行は楽しいことばかり。天候 (極めて重要な要素です) や歴史的背景、そしてそれらが色濃く反映されたカルチャーの違いを、いろんな都市にいくことによって身をもって体感できたのは本当に大きな経験だったと思います。というわけで今回は、だいぶ大雑把な括りですが、訪れた地域 (ブリストル、ロンドン、マンチェスター) で生まれた楽曲のなかで、今回の旅での日々と重なったものを並べてみました (と言いつつ、ほとんどロンドン産グライムばっかりですが)。思いを馳せて聴いていた音楽、そしてそれを作ったプロデューサーが、どのようにして生まれ、育ち、何を感じて作ったのか、その一面を垣間見れることができたのが何よりの収穫でした。

そしてやはり、自分はUK産のクラブ・ミュージックが大好きだと改めて実感。また夏にも行ってみたいし (ノッティングヒル・カーニバルは絶対行く)、いずれかワーキング・ホリデーで住んでみたいななんて思ったりも。UKにもっと愛着が湧いた2週間でした。また近いうちに。

この記事の筆者
Kusaka. Ryu

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