ギターは曲を作るツールであり、メロディーを生み出すための武器
――BACK-ONではボーカリストでありギタリストでもあるわけですが、例えばソロ作品でギターインスト曲を入れたりすることってあるじゃないですか? このアルバムではそういう曲はないですけど、ギタリストとしての自分を前に出したいっていう願望はないですか?
Hi-yunk:ないんですよね。ギターソロとか早弾きとかで好きなギタリストもいますし、今でも憧れますけど、どっちかと言えばリフで聴かせるギタリストとか楽曲が好きなんです。ノエル・ギャラガーが「俺はギタリストとしては大したことないけど、ソングライティングのギタリストとしては天下一品だ」みたいなことを言っていたのをきいて、すごくシンパシーを感じたんですよ。僕にとってもギターって曲を作るツールであって、メロディーを生み出すための武器っていうか。だからギターソロ的なものがあっても、楽曲の中に寄り添う、色付けするような立ち位置のフレーズになってると思います。ただ、今後は例えばライトハンドのソロが面白いと思ったら使うかもしれないし、あくまでもその楽曲に必要かどうかじゃないかっていう感じで、いつもギターは入れてますね。
――先ほどから、この先自分の嗜好が変わるかもみたいな話をされていますが、小さい頃から割とそういう感じだったんですか?
Hi-yunk:結構、飽き性なんですよ(笑)。ゲームも漫画もそうですけど、続きものがダメなんです。「ドラえもん」みたいな一話完結じゃないと読めないっていうか。この間、海外に行くのに飛行機に乗ったんですけど、機内で映画を観て5分で止めて音楽を聴いて、聴くのを止めて本を読んで、本も飽きてっていう繰り返しを13時間やってて逆に疲れました(笑)。そういうところがあって、子どもの頃からいろんなジャンルの音楽を聴いて今に至るんじゃないかなって。
――飽き性がCHAOSの原点ということですね(笑)。
Hi-yunk:そうですね。昨日も他のアーティストさんの楽曲を作っていたんですけど、メタル調な楽曲も作りつつ、次はヒップホップのビートを作ったりとか。曲を作ってるときもすぐYouTubeを見ちゃうんですよ(笑)。もちろんゾーンに入ったら逆に長いんですけど、そこに行くまでのダラダラタイムであっちこっちに寄り道して、バーンってゴールが見えたら、ゾーンに入ってそこからはもう全く動かないです。本当に極端なんですけど、結果、なるべくして今の自分のスタイルになってるんじゃないかなと思います。


――続いて、倖田來未さんへの提供曲 “Chang my future”のセルフカバーについて教えてください。
Hi-yunk:曲を提供しているたくさんのアーティストの中で、この方の楽曲を外すわけにはいかないですね。とはいえ、いちばん曲を作らせてもらってる中で、どれも名作だと思っているので、1つルールを作ったんです。僕らBACK-ONは今、『仮面ライダーガッチャード』の主題歌をやらせてもらっているので、「仮面ライダー縛り」で考えて。好きな楽曲でもあるし、“Chang my future”(『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』主題歌)を選ばせていただきました。
――アルバムには女性アーティストへの提供曲が3曲ありますが、この曲はどんなことを考えて歌いましたか?
Hi-yunk:セルフカバーは全部そうですけど、自分がデモを録っていて何となく曲の表情は想定しているので、変に色付けせず、あんまり奇を衒わずにやろうというのは意識しました。
――ご本人は曲を聴いて何とおっしゃってます?
Hi-yunk:だいたい1回はダメ出しがくるんですけど、珍しく褒めていただきました(笑)。もともと彼女も、僕が歌ったデモが良いと思って歌ったところもあったので、お互いの良さがそれぞれに出ていて良い形になったと思います。元のアレンジがすごく好きなので敢えて同じアレンジ、同じキーでやることで成立したし、すごくエモさが出て、このアルバムの中でもすごく重要な位置に置けた印象ですね。
――ご夫婦でありアーティスト同士でもあるわけですが、ライバル意識みたいなものもあったりします?
Hi-yunk:ライバル意識はないですけど、お互いリスペクトはしてるし、家族として一緒にいる時間も長いので、だいたい何を考えてるかはお互いわかっています。どういう方向性で行きたいのかっていうときに、こうした方がいいってバチバチ言われる場合もあるし逆に僕が言うときもあるし、そういう意味では切磋琢磨して高め合ってるいい関係だと思いますね。


―― “Giant feat.Xansei”でコラボしている海外在住の日本人ビートメーカーXanseiさんとはどんな関係なんですか?
Hi-yunk:僕が去年の4月に『レッスルマニア40』(WWEの年間最大イベント)に行ったときに、L.AにあるAVEX USAのスタジオで、10日間コライトキャンプ的な感じでいろんなプロデューサー、ビートメーカーと一緒に曲を作ってた時期があったんですけど、そのときに一緒にやった1人がXanseiだったんです。どんな人が来るのかなと思ってリビングで待ってたら、髪の毛がピンクですごく奇抜な服を着てポケモンの人形を肩にぶら下げて登場したから、「ヤベえ奴がきたな」と思って(笑)。大丈夫かなと思ったんですけど、これが結構ハモって。人間的にも面白いし熱いしなんかいいなと思って、その日に作ったデモがこの曲なんですよ。
――へえ~! どんなところに共感したんですか?
Hi-yunk:生き方が面白いなと思ったんですよ。アメリカで生まれて福岡に帰ってきて、大学で1人でアトランタに行ってお金がないからスタジオで寝かせてもらっていて、そのときに周りがみんな普通にポケットから拳銃を出してきてっていうのが日常茶飯事だった、みたいな話を聞いたときに、良い意味で飛んでるやつだからこういうビートができるんだなと思って。いろいろ話していくうちに、彼の魅力をすごく感じて一緒にやりたいなと思ったんです。そのときに2曲作ったんですけど、今回のアルバムでこれからの未来を表現するんだったら、Xanseiとの曲が一番いいなと思って今回その中の1曲を選びました。
――これは何をテーマに書いた曲なんでしょう?
Hi-yunk:彼はいつかアニソンをやりたいっていう目標があるらしくて。じゃあアニソンをイメージして作ろうよっていうことで、“Giant”っていうのは僕らなりの『進撃の巨人』をイメージしたんです(笑)。あとは巨大なロボアニメ系のオープニングをイメージした歌詞を書いて作りました。
――アニソンをイメージした曲としては、尖りすぎな気がしますけども(笑)。
Hi-yunk:そうそう(笑)。でもこれが僕らなりのアニソンです。彼は日本人ですけどやっぱり海外のセンスが強くて日本を俯瞰で見てるというか。僕はずっと日本でUSとか海外の音にすごく影響を受けた逆のパターンなので、良い意味でミクスチャー感が出たのかなと思います。僕は普段、ほぼ8割方1人で曲を作るので、たまに刺激を求めてそういうコライトキャンプに行くのもいいなって。

