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INTERVIEW : Hi-yunk&豆柴の大群都内某所 a.k.a. MONSTERIDOL(アイカ・ザ・スパイ、ナオ・オブ・ナオ)

Hi-yunkソロプロジェクト第3弾リリースとなるのは、2023年に豆柴の大群(現・豆柴の大群都内某所 a.k.a. MONSTERIDOL)に提供した「MUST GO」のセルフカバー。「MUST CHANGE」に始まり現在に至るまで、彼女たちへの曲提供とディレクションを担当しているHi-yunkにとって、特別な想いが籠ったセルフカバーのようだ。今回、Hi-yunkのスタジオにアイカ・ザ・スパイ、ナオ・オブ・ナオにお越しいただき、オリジナルとカバーの「MUST GO」制作にまつわるエピソードを中心に3人で語り合ってもらった。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 宇佐美亮
何も考えずに良いと思うものしか作ってない
――KENJI03さんが豆柴の大群へ楽曲提供するようになった経緯を教えてください。
Hi-yunk:3年前に「MUST CHANGE」という楽曲で関わらせていただいたのが最初なんですけど、そのとき豆柴が、「変わらなきゃいけない」という課題を課せられていた時期だったんです。本当にグループが存続するかしないかっていうタイミングの中で、何か新しいきっかけを作るために楽曲から変えていこうというお話をいただいて、僕が関わらせていただいたんです。
〈MUST CHANGE PROJECT〉
豆柴の大群は、当時〈MUST CHANGE PROJECT〉という呼ばれるプロジェクトに参加していた。『MUST CHANGE』の各メンバーそれぞれのCD売上枚数、そして"WE MUST CHANGE TOUR"での成長度合いを加味し、優勝メンバーはソロ・デビューが決定。一方で、CD売上枚数とツアーでの成長が見込めなかったメンバーは、新メンバー合宿オーディションへ参加するという企画。オーディションの様子次第では、既存メンバーでも、新メンバーと入れ替えで豆柴の大群を去る可能性も伝えられていた。
ナオ・オブ・ナオ(以下・ナオ):今おっしゃってくださったように、メンバーが豆柴の大群として続けられるか続けられないかっていう、課題を課せられていた本当にめちゃくちゃ大事な時期で、その時期を経て歌っていくという曲がKENJI03さんが作ってくれた「MUST CHANGE」だったので、歌うたびに力が入るというか…(アイカに向かって)どうですか(笑)?
アイカ・ザ・スパイ(以下・アイカ):えっ(笑)。KENJI03さんから初めていただいた曲で、すごく大切なときにいただいた印象に残る1曲だったし、追い込まれていた自分たちにピッタリな曲だったので、今でも大切な曲です。
Hi-yunk:あのとき、メンバーはまだそういう課題を課せられるということを知らなかったんですよね。知らされる手前の時期にレコーディングして、その1週間後ぐらいにそういうミッションを与えられたんですよ。「MUST CHANGE」の最初の歌詞は渡辺淳之介さん(WACK代表)が書いているんですけど、その歌詞を見たら、すごく辛辣な感じだったんですけど、これをどんな気持ちで歌うのかなと思って。その大変な時期を乗り越えた後に豆柴がアルバムを出したときに、今度は豆柴のメンバーが自分たちなり前向きな未来に向けた歌詞を書いて、また違った感じの「MUST CHANGE」の聴こえ方をしたし、過去と未来と繋がっていくような、本当に新体制の豆柴を感じて、すごく進化していってるなと思ったんです。僕も勝手ながら親心じゃないですけど、一緒に成長している姿を見ることができて、すごく嬉しい気持ちになってました。
――お互いに、最初に顔合わせしたときの印象っていかがでしたか?
アイカ:すごく緊張しました。
Hi-yunk:あ、そう? 俺はちょうど「水ダウ」の企画をテレビで見てたから、「テレビに出てる人たちがいる」っていう感じだった。
ナオ・アイカ:ええ~!?
ナオ:私は、BACK-ONさんの楽曲をよく聴いていたので、だから本当に最初は「本物だ!」っていう感じでした。

アイカ:私は「カッコイイ!」と思いました。
Hi-yunk:本当に? 嘘がにじみ出てる気がするんだけど(笑)。ありがとうございます。
アイカ:本当です! でも私は初めて会う方だとすぐ緊張しちゃうから、最初はすごく緊張したけど、今はもう慣れました(笑)。
Hi-yunk:僕は、なんとなくのパブリックイメージで、やっぱりすごく有名な番組に出ていて活躍されてる方々っていうイメージでいたんですけど、実際にお会いしたらみんなすごく謙虚で、等身大のままの女の子っていう感じで、すごく安心したっていうか、そういう印象がありましたね。
――「MUST CHANGE」を経て提供した「MUST GO」はどんなイメージで書いたのでしょうか?
Hi-yunk:「これからはもう希望に向かって突き進んでいってほしい」という気持ちを込めました。新体制からさらにメンバーが抜けたり加入したりして、本当に新体制という感じだったので、もうここから新しい豆柴を作っていこうという、そういうリファレンスをいただいて僕なりに考えたのが、「MUST GO」になった感じです。
――レコーディングのときは、どんなことを考えてディレクションしているのでしょうか?
Hi-yunk:今までどういうふうにディレクションされてきたのか僕はわからないですけど、彼女たちに限らず、僕もそうだし、やっぱり人それぞれ声が一番の楽器で個性だと思うんです。それを無理やり違うようなことをするっていうよりは、1人1人の声を聴いて、彼女たちに合った表現、歌い回しとかを見てディレクションさせてもらってます。
――「MUST GO」のときはいかがでしたか?
Hi-yunk:「MUST GO」のときは、大変でした(笑)。
ナオ・アイカ:(笑)。
Hi-yunk:いや難しかったんですよ。僕も今回自分で歌わせてもらって思ったんですけど、何が難しいかって言ったら、じつはとんでもなく難易度が高いことをしてるところがありまして。特にBメロの〈いつもいつでも〉のところで、〈いつも〉で1回置いて、〈いつでも〉って歌うんですけど、〈いつも〉がオクターブ下で〈いつでも〉でさらにオクターブ上に行くんです。これって歌としてはすごく難しいというか、普通じゃ絶対できないんですよ。だからそれを歌い切ってライヴでもやりきってるっていうのは、それこそ豆柴の成長というか進化をすごく感じてるというか、自分も歌ってみてすごく感じました。
――そこは豆柴に試練を課したわけですか?
Hi-yunk:いや、僕は申し訳ないんですけど、何も考えずに良いと思うものしか作ってないんですよ(笑)。変な話、レベルに合わせたりとかそんなことよりも、「今、豆柴にとって何が良いのか」と思って、単純にそれだけで作ってるんで。例えばキーが出る出ないとか、そういうことじゃなくて、「豆柴がこういうことをやったら面白いんじゃないかな」って思いながら曲を作ってる中で、それに付いてきてくれてさらにそれを追い越すような感じで進化して行ってるんで、結果的に作ってすごく良かったなと思ってます。
ナオ:最初に聴いたときは、とんでもない曲だなって(笑)。
Hi-yunk:あれは難しいよね(笑)。
ナオ:たぶん、今までで一番難しかったんじゃないかなって今では思うんですけど、でもやっぱり歌えば歌うほど深みを増していくし、今ではライヴの定番曲にもなってるぐらい本当に大事な、大きな存在の曲になっていったので、今も大切に頑張って歌ってます。
Hi-yunk:豆柴のファンの方がSNSでコメントをくれるんですけど、やっぱりみなさん「MUST GO」をすごく大事に思ってくれてて、本当に作り手としては嬉しいし、作ってよかったなと思います。たぶん、あのタイミングで作ったからこそ意味があったのかなって。

――ライヴでも、「MUST GO」が始まったら「ウワ~!」ってなりますもんね。この曲で一気にボルテージが上がる感じがします。
ナオ:そうですね。「“MUST GO”が一番好き」って言ってくれる人もいますね。
Hi-yunk:いやあ、嬉しいですよね。豆柴って今メンバー4人で歌い分けるじゃないですか? それぞれの感情と表現がある中で、今回は僕1人で歌うから、結構そこのプレッシャーはありましたね。曲の表情っていうか、どうやって歌おうかなっていうのはすごく考えました。
――ちなみに、歌割りってどうやって決めたんですか?
Hi-yunk:歌割りは僕と豆柴のディレクターと2人で決めました。でも実際レコーディングして聴かないとわからないので、そこで「これはやっぱりちょっと違うかな」とか、「これはナオに歌ってもらおう」とか、「アイカはこっちにしよう」とか、パズルみたいな感じですよね。
――お2人の声質はどう感じましたか?
Hi-yunk:ナオはハイトーンだと思うし、すごくエッジのある、どっちかというとロックボーカリストみたいな要素はあるのかなというか。アイカは、低いところのちょっと上がすごくいきるんで、豆柴のミドルローあたりを支えてるキーな感じがします。だからそれぞれ個性があって面白いし、ディレクションしがいがすごくあると思います。
――では、改めて今回セルフカバーした理由を教えてください。
Hi-yunk:今回作っているソロアルバムの、自分が作ってきた楽曲を何曲か選んでセルフカバーをやるっていうコンセプトの中で、やっぱり豆柴の曲は自分にとって、一番多くプロデュースをやらせてもらっているグループなので、1曲やりたいなって思っていたんです。
アイカ:え~嬉しい!
Hi-yunk:それで歌詞とか、いろいろ見てる中で、一番自分に近いかなって思ったのが「MUST GO」だったというか。歌詞も感情を奮い立たせてくれるし、そういった意味でやってみたかったので、今回選ばせていただきました。
