花奏かのん 『deep』
哀愁のある歌声とダンサブルなサウンドとの抜群のコンビネーションを作り上げた「LowMidNight」をさらに磨き上げたようなEP。ヴォーカルに関しては、脱力の効いた歌声と要所要所に見られる力強いヴォーカルとのメリハリが魅力的。自身の性格をチャーミングに歌詞に落とし込んだメッセージ性が特徴的で、その上持ち前の声質との相性は抜群。共感性も高く、スッと歌詞が頭の中に散布されていく。バンド・サウンドと打ち込みのダンス・ミュージックのギャップは強いものの、特徴的な声質にそのどれもがフィットしている。リズム感をフル活用し、メロディに若干の緩急をつけることで、声質に頼り切った一貫的なヴォーカルに感じさせない。むしろ曲を進めるごとに真新しささえ感じてしまう魔法のような1枚。
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CIEL 『空想少女』
CIEL初のオリジナル楽曲作品集であり、その全てが書き下ろしという待望の1st EP。CIELのヴォーカリストとして個人的に抱いているイメージとしては、楽曲によって大胆に変貌を遂げるカメレオン的な印象が強い。今回のEPは「窓を開けて」の系譜が強く、疾走感のある曲たちが並んでいる。それでもどこかザラっとした印象を受けるのは、随所に見られる感情の入れ方だったり、メロディの段落を強調して細かくメリハリをつけているのが要因だろう。ピアノの優しくも力強い旋律が並ぶ「僕たちの群青」は、ストレートなアプローチと浮遊感のある歌い方がミックスされていて、CIELのヴォーカリストとしての真骨頂だと感じてしまう(窓を開けての印象が強いが故に)。
椎名かいね 『君はイマーシブシアター』
音楽とストーリー性を掛け合わせた面白いコンセプトの1枚。ジャジー・テイストにパッケージされてはいるものの、アーティストとしての一貫性を感じるようなものではない分、各楽曲ごとにテーマや物語を深層まで張り巡らせたような構成になっている。そして、客演やジャンルレスな楽曲が並んでおり、椎名かいねの妖艶なヴォーカルで曲ごとの包容力は高い。ある意味高低差のある1枚になっており、そういう意味ではシネマティックな構成、各スクリーンごとに違う音楽を堪能するような感覚だろう。ストーリー性に関しては明確な答え合わせはなく、1枚を通して歌詞を熟読して考察してみるのも面白い作品となっている。