新しいことをやるんだって考えたら、若い人にも話を聞かなきゃ
LEFTY:「面白いことを始めるのは20~30代のうちに見つけろ」という言葉が、「私の履歴書」にありました。では、“それを応援する側”として、これからの世代に、どういった形で自分が心地いい場所、没頭できる場所みたいなものを見つけるためのアドバイスをするとしたら、どうしますか?
丸山:割とみんな権威ある人や組織に従属したがるよね。で、従属しちゃうとどうなるかっていったら、その権威のある人が既得権をずっと握るということになる。日本のエンタメっていうのは基本的に既得権を持っているし、その既得権を持っている人はそれを崩したくないわけ。スタッフもこの既得権をそのまま生かして、関係をキープしておいたほうが社内で良い。でもその既得権を認めるってことは新しいことが生まれないってことだからね。
LEFTY:そうですね。
丸山:既得権を認めちゃうと新しいことが生まれない。だからそれを逸脱するようにしていかなきゃいけない。でもそれは既得権を持っている人たちは力が強いから、逸脱しちゃうと、エージェント契約のときの私のように、皆さんから酷い目に合う(笑)。
LEFTY:ああ。そうですね。
丸山:だから「あんなのやらないよ」とか言うんじゃなくて。そこのところをね、上手に割り切ってほしいなと思うね。否定してしちゃダメだよね。
LEFTY:なんかそれすごい大事だなって思いますね。それこそ既得権の話がありましたけど、丸山さんはEPICソニーの創設者であり、企業のトップオブトップにいらっしゃった経験もありますよね。普通にひとつの企業のトップにいたら、既得権が発生してしまうのは避けられないところなのかなと思うんです。当時はそうならないように意識してやられたりもしたんですか?
丸山:だからさ、既得権の方にいくってのは「カッコ悪い」っていう、もうそれだけだよ。「カッコ悪いからやめとくよ、それは」って。もうね、それが一番分かりやすい。カッコ悪いよなあって(笑)。
LEFTY:それだよなあ。
丸山:カッコ悪いことやるくらいなら、カッコいいことやろうよって。あんまり理屈は言わない。カッコいいか悪いかだけで考える。
LEFTY:カッコいいとカッコ悪い。判断基準はそれくらいシンプルでいいんですよね。
丸山:30代のころ、20歳前後の子と話していて、向こうが「丸さんかっこ悪いですよ」って言ってきたら「じゃやめなきゃ」って思ってた。それで全部、この歳まできましたよ。
LEFTY:いや、素敵だなと思います。かっこいいの定義って人それぞれですけど、漠然と同じ方向を向いてるのかな、みたいな気がしますね。
「世の中で一番大切なのは若い世代を大事にすること」という言葉も「私の履歴書」にありましたが、これを思い立った背景を伺えればと思います。
丸山:例えば20ずつでひとつの世代を区切っていくと、20代、40代、60代、80代って4世代くらいになるでしょ。そのひとつ下の世代との話はもう通じねえなって。それでもね、新しいことをやるんだって考えたら、若い人にも話を聞かなきゃって思うんだよ。年寄りって死ぬんだもん。
LEFTY:そうですね。
丸山:はっきり言って年寄りの言うことなんて聞く必要ないの。明日のエンタメは、若い今20歳くらいの人間が良いと思うものが、ここから先10年15年と続くわけじゃん。まあでもね、若い人と知り合うチャンスが減ってるのよ(笑)。
LEFTY:そうですね。僕も今40歳になったんですけど、そういう意味で言うと、もう20代の枠組みから一個上がっちゃったんですよ。確かに若い人たちが新しいものを創出して時代を作っていくっていうところで言うと、40代になってその枠組みからはちょっと外れちゃった。ここから20年どう生きていけばいいですかね。
丸山:もう一つ世代が動いちゃったからね。年を取ったら、自分で培った考え方を頑強に「これなんだよ」ってやるようになるわけじゃない。それをしないようにできればいいよね。
LEFTY:そうですね。僕もできる限りそうしないようにしてますけど…
丸山:一般的に言えばさ、一般の社会で言えばそのあたりの年齢になると、役職がつくじゃない。そうするとそれを振りかざすわけじゃん。そしたら、もう終わるよね。さよならだよね。
LEFTY:でも僕、やっぱり気持ちは20代のままでいたいんですよね。20代のアーティストとたくさんスタジオワークしてる中で、全然コミュニケーションができない、話通じないみたいなことは自分自身あんまり感じないし、これからもそうありたいなと。
丸山:それさ、話がずれてないと思ってるのは、君の方でさ。若い方から見るとずれてたりもするんだよな(笑)。
LEFTY:わー! それショックだな。怖いな。すげー気使われてたのかな(笑)。
丸山:だからそういうことは、ある、って思っておいた方がいいよ。
LEFTY:意識しながら頑張ってやっていきたいと思います。分かんないですよね
丸山:分かんないよ。一応、気を使ってくれるからね(笑)。
LEFTY:肝に銘じてこれからもやっていきたいと思います。最後にですね、丸山さんとして、若い子達に伝えたいことがあれば、改めて一言伺えたら嬉しいです。
丸山:うーん…。俺はもう若い子の考えてることが分かんないから。だから基本的に、若い子の言うことを聞かなきゃだね。どれだけ若い子の言うことをたくさん聞くか。で、若い人は昔の話が参考になるんだったらやればいいし。でもね、今こう話してて気が付いたけど、学校とか教育とかってほとんど意味ないだろうな。
LEFTY:なるほど。
丸山:やっぱりテクニカルなことはあるよ。考え方とかそういうものっていうのは自分で学ぶことだからさ。人生の中で「こうあるべきだ」って訓示なんて、いろんな人から100くらいは聞いてるけど、心にしみた訓示なんて一個もないもんな。
LEFTY:なるほど(笑)。
丸山:だから一言はないよね。自分で考えてください(笑)。
Miyata:ですよね(笑)。人生に教科書はないということですね。
丸山:はい。まとめもない(笑)。
編集 : ニシダケン
カメラマン:Junya Ooba
番組情報:『MUSIC TOURIST』

MUSIC TOURISTは、音楽プロデューサー Ryo‘LEFTY’Miyataと共に、音楽の世界、クリエイティブな世 界旅するトーク番組。第一線で活躍するアーティスト、プロデューサー、映画監督や漫画家など、ジャンルを超えた方々と語らいながら、クリエイティブな世界へとリスナーを誘います。
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