人間に入りそうな危ない亀裂みたいなものを修復できたら
──“Too Late, You Waste”は10分近い曲ですが、これも一発録り?
MASAE:これも一発録りです。やってるときは普通にライヴをやっている感覚で、あんまり長いと思わなかったですけど、出来上がったら10分近くあって驚きました。
DURAN:これはギターが3本入っているんですけど、自分がひとりで全部弾いてます。クリックを使わないから2本目3本目を重ねるのが大変でしたけどね。自分とジャムってる感じの曲です。
Shiho:“Too Late, You Waste”は私が好きなテンポなので、普段の自分らしい感じで叩けてると思います。“Shades Of Night”みたいな速いテンポの方が気を使いますね。
MASAE:私もこの曲が自分の素に近いベースを弾いていると思います。
DURAN:ああ、なるほど。確かにそうかもね。いちばんベースっぽいことをやってるし。
──MASAEさんのベースはギター・リフとユニゾンしてる曲も多いですもんね。あんまり普通のベースプレイをしている感じじゃないというか。
DURAN:中途半端な曲がないんですよね。だいたい、売れようとしてポップ要素をどこかに入れたりするじゃないですか?(笑)。そういうのは弱くなるからよくないなと。だからどれも中途半端な曲はないです。
──それが、前に話していた「キャッチー」ということですね。
DURAN:そうです。僕からするとこれがキャッチーだと思うので。どんな言葉でもいいと思うんですけど、「ギターがうるさい」っていうのも、わかりやすくてキャッチーだと思うんです。僕のなかでのロックって、「リフが歌える」ことなんですよ。簡単に言うと「スモーク・オン・ザ・ウォーター」(ディープ・パープル)のリフは、「ジャッジャッジャー」ってみんな歌えると思うんですよ。どこをロックと感じるかは人それぞれですけど、自分にとっては「歌えるギターリフ」がロックです。
ロック・アルバム『Electric Man』/ ブルース・アルバム『30 Scratchy Backroad Blues』リリース前の2023年7月に実施した、インタヴュー:
https://ototoy.jp/news/113072
──王道のロックがある一方で、“Shinigami”は落語家の立川談慶さんが参加した変わった曲です。
DURAN:こういうリズムの曲がもともとあったんですけど、頭のなかに音が鳴っていてどうしようか考えていた矢先に、たまたまマネージャーの親戚に落語家さんがいるって聞いて、それが立川談慶さんだったんです。談慶さんにこの曲に合いそうな落語について話したら古典落語「死神」が出てきたんですよ。落語ってお笑いですけど、僕は小さい頃から雰囲気とか声が怖いイメージがあったんです。そういう落語の恐ろしい部分を出そうと思ってこういう曲になりました。だから死神目線の話を前面に出しました。
──これは音も怖いんですけど、古典落語の「死神」と違うサゲが現代社会と繋がっている感じで怖いです。
DURAN:そうですね。あれは談慶さんの形なんですよ。あと、死神の呪文も談慶さんのバージョンがあるのでそれを入れています。
──“Ainotameni”は、Shihoさんがメイン・ヴォーカルを取っていますね。
DURAN:もともとMade in Asiaという僕とShihoがやっていたバンドの曲なんです。サビの歌詞はそのままで、Aメロとかは変えました。
Shiho:これはDURANさんに歌わないかってお話をもらって、歌詞もはじめて書きました。
──ライヴではパート・チェンジしてShihoさんがギターを弾きながら歌って、DURANさんがドラムを叩く曲ですが、曲のはじまりでそのライヴの様子が再現されていますよね。
DURAN:そうです、ライヴのパート・チェンジのニュアンスを出しました。だから2回ぐらいしかやってないです。
Shiho:この曲はマイクに向かってギターを持ってしっかり歌ったのがはじめてだったので、すごく楽しかったですね。個人的には聴いた方の反響が楽しみなところではあるので、ぜひ聴いて欲しいです。
DURAN:僕はドラムが下手なんで、ミックスのとき大変でしたね。普通だったらクビにします(笑)。
MASAE:私はこの曲でふたりがパート・チェンジするのが、ライヴでもこの音源でもすごく好きなんですよ。
──MASAEさんもコーラスで結構歌ってますし、ソロ作『DEEP』(2023)では作詞作曲して全楽器を演奏してヴォーカルも取ってますよね。今作と並行してレコーディングしていたんですか?
MASAE:平行してやってました。いまも曲を作ってはいるので、納得するものができたらまた録ろうかなと思ってます。
Shiho:私は今回で出し切りました(笑)。

──アルバムが出てすぐにツアーがはじまっています(〈2023 - 2024 DURAN "The Venomous Rift in Humanity Tour”〉)。12月1日(金)からはじまっていますが、どんなツアーになりそうですか。
MASAE:凄まじいツアーになると思います。DURANというバンドを全力で感じられると思いますし、爆発的なライヴになると思うので、ぜひみんなに来てもらいたいです。
Shiho:前作の『KALEIDO GARDEN』を経て、今回の『Electric Man』が出来て、アルバムもすごくカッコイイんですけど、ライヴはまた全然違って同じパフォーマンスは二度とできないぐらい、凄まじく度肝を抜かれると思うので、その音を感じに来て欲しいです。私ももしかしたら歌うかもしれないです。
DURAN:"The Venomous Rift in Humanity Tour"というタイトルは、人間に入った亀裂とか毒とかっていう意味なんですけど、いまはAIが歌詞を書いたり曲を作ったりして、そういうものの人間身とか人間性が問われる時代だなと思っていて。ただ、そういうことで逆にどんどん人間性がなくなっているような気もするんですよね。だから我々は、より人間同士にしか出せないようなライヴをしようと思っているので、そこに注目して欲しいです。AIとかインターネットとかの時代だからこそ、より生で体験して、僕たちにメッセージを直接言いたい人たちが集まって、人間に入りそうな危ない亀裂みたいなものを修復できたらいいんじゃないですかね。そういうツアーにしたいと思ってます。ぜひ来てください。
編集:梶野有希
“バンド”として作り上げた、ロック・アルバム
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LIVE INFORMATION
2023 - 2024 DURAN 〈The Venomous Rift in Humanity Tour〉
2024年
2月23日(金)名古屋 LIVE&BAR SlowBluse
2月24日(土)大阪 TWINREVERB
2月25日(日)神戸 PUB CHELSEA
3月20日(水)金沢 Jealous Guy
3月21日(木)長野 柴崎
3月23日(土)渋谷 B.Y.G
※終了分は割愛。
PROFILE : DURAN
日本生まれフィリピン育ち。スパニッシュ系フィリピン人の父と、日本人の母の間 に生まれる。 3歳でピアノを始め、14歳でベーシストの父親の影響でギターを始める。 ROOTLESS、Made in Asia、a flood of circleなど数々のバンドで活躍する中、 稲葉浩志(B'z)、清春、スガシカオ、小袋成彬、藤井風やEXILE ATSUSHIが率いる バンドRED DIAMOND DOGSにギタリストとしても参加。2018年にソロ・デビュー・アルバムをリリースし、本格的なソロ活動スタート。2021年11月3日に2枚目となるアルバム『Kaleido Garden』をリリース。現代ロック・シーンの奇才、日本の偉大なギタリストの一人と称され、そのエモーショナルで超越したギタープレイと、美しくソウルフルな歌声で国内問わず注目されるアーティスト。
■公式X:https://twitter.com/THEDURANNAITO
■公式HP:https://duranguitar.com/