”新しい気持ちで新しい夢を見に行こうぜ
──続いては「Turing」なんですけど、この曲はkevinさんの作編曲になります。
kevin : これはもう、佐藤さんからのオーダーで思いっきりファンタジックな夢の方に振り切ってくれ!という話があり、最初僕が作ってたデモとかだと、まだ、明るさが足りないみたいなやりとりもあって、この3拍子っぽい感じと浮遊感あるサウンドに落ち着きました。
佐藤 : kevinくんには多幸感あふれるドリーミングな曲を作ってほしいっていうのをずっと言ってましたね。曲の構成とかも、やっぱkevinくんの良さって、いわゆるJ-POPのフォーマットに当てはまったような、かっちりしたものじゃなくてもっと自由で、AメロBメロサビみたいな枠に捕らわれず、あくまでサウンドがメイン。そこが良さだと思っているので、むしろ枠を取っ払っていくイメージでしたかね。
──曲名はコンピューターの父、アラン・チューリングから来ていると伺っていますけど、これはどういう流れで”夢”とつながっていくのでしょうか?
佐藤 : フィリップ・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」がモチーフになっているんですけど、特に最近だとAIだとか、AIに限らなくても、僕たちの生活ってすごくシステムに支配されていて、自分の好みの中から選んでるように見えて、実はアルゴリズムでレコメンドされたものを、選ばされていて……みたいな、なんかそういう世界への皮肉というか、そんな歌詞にしようかみたいな話を林さんとしていて、そこからコンピューターのチューリングになったという訳ですね。
──なるほど。なんかこう、サウンド的にもデジタルっぽいのが得意なkevinさんのイメージに近いですし、あと本多さんのギターの音色が正反対の温かみのある音で、人工物と人の手の温かみの調和みたいなのが、個人的には良かったです。
佐藤 : 本多くんには「パット・メセニーみたいな感じで」って無茶ぶりして、「……すごすぎて、どうしたらいいかわかんないですけど」みたいな(笑)。スーパージャズギタリストなんですけど、ライブ映像とかたくさん見て勉強してくれたみたいで、すごいジャジーかつテクニカルなギターを求めたんですけど、でもなんか元々のkevinくんの最初のデモにも打ち込みで、それっぽいギターのフレーズが入ってたんですよ。
kevin : そう、サンプリングなんですけど「こんなフレーズが入ってたらいいな」ってイメージでデモに入れてたんですよね。
佐藤 : そんなkevinのデモから、僕はなんかパット・メセニーを勝手に感じて(笑)。
──EP全体を通してみても、1番夢見心地な感じというか、浮遊感ありますよね。デモの話にもなったので、今回の特典の話題も触れておきたいんですけど、面白い試みをやっていますよね。
佐藤 : そうなんですよ。今回、店舗別特典としてデモ音源とメンバーによる楽曲解説ボイスが付いてくるんですけど、「Turing」はなくて。「永遠という光」「Last Pages」「Beautiful Dreamer」の3曲だけなんですよ。
──映画とかではよくあるけど、曲のオーディオコメンタリーって確かにあまり聞かないかもなって思いましたし、デモ音源を公開するって気持ちとしてはどんな感覚なんだろう?というのも気になります。
kevin : どんな気持ちなんです?(笑)。
──自分だと、例えば今こうして書き殴っているこの取材メモを見られるみたいな感覚に近いのかなと思って、だとしたらめちゃくちゃ恥ずかしいなっていうのが正直あるんですけど(笑)。
佐藤 : いやいや、もう。全然そんな事ないですよ。「どうなってるかお見せしましょうか?」みたいな感じです。逆にちょっとワクワクしてます(笑)。「これがこうなるんだ」って楽しんで貰えたら。こんな機会でも無いと、聞いてもらう事もない音源ですから。
──最後にやはりツアーの話もお聞きしたいのですが、初のアジア規模のツアーという事で、韓国・台湾・東京と3か所巡るわけなんですけど、 あれですよね、韓国は以前kevinさんがDJで出演して、その時シークレットみたいな……
kevin : そうですね!サプライズで、towanaさんと佐藤さんにも出てもらって、最後は3人でパフォーマンスして。まさにそれきっかけになって、韓国でもライブやりたいね!なんて機運が高まったって感じです。
佐藤 : その韓国でのイベントがすごく手応えがあって、お客さんもすごく盛り上がってくれたし、 韓国の主催者の方々とも仲良くなれて、今度はfhánaワンマンで、韓国でやりたいねって帰りの飛行機で話をしてたんです。それを、本当にやりましょうみたいなところからスタートして、台湾、東京3か所やろうっていう流れですね。
──台湾もfhánaは何かご縁があったんでしょうか?
towana : ワンマンライブはもちろんやったことないんですけど、以前のレーベルのフェスみたいな感じで何年か前にライブしに行ったことはありますね。
佐藤 : その時の台湾もめっちゃ楽しかったよね。あとそもそも台湾料理大好きだから、行きたいし(笑)。
kevin : あ、思い出した。足ツボマッサージに行ったね(笑)。
towana : 夜市も行ったし、本当に楽しかった~。
佐藤 : この「Beautiful Dreamer」っていうEPもそうなんですけど、すごくフレッシュで、初期衝動的な作品なので、このツアーも新鮮な気持ちで勢いのある楽しいライブになるんじゃないかなと期待しています。こないだの10周年ライブでこれまでの集大成をお見せしたので、 もう「新しい気持ちで新しい夢を見に行こうぜ」と。
──そしたら最後に、改めて今回のEPやライブに向けての意気込みなど、ファンの方に向けて、ひと言ずつ頂けたらなと思います。
kevin : 本当に自信作ができたので、シンプルに聞いて欲しいし、10周年ライブで「永遠という光」と「Last Pages」はやってますし、「光舞う冬の日に」は既存曲ですが、基本的には5曲新曲なわけで、それひっさげて大きなライブやるし、全然僕ら的には、区切りついた後の新しいスタートをもう切っているので、 先日10周年ライブ終わったばかりだけど、それでもファンの皆様にはまた新鮮に楽しく感じてもらえるライブになると思うので、ぜひ来てほしいです。
佐藤 : やっぱり同じように10周年ライブに向けて集中してたんで、しかも10月とかですから、もう普通だったら「お疲れ様でした。良いお年を~!」ということで、 来年からぼちぼちやりますかね。っていう風にしたいところだったんですが、そうもいかない(笑)。ライブが終わったらもうEPの制作ラッシュが来て、終わったと思ったら年明けのアジアツアーのリハも始まって、でも考えてみたらもうこの1年とずっと怒涛でしたね。
メンバーが卒業する。レーベルを移籍する。事務所を退所して、新しい会社を作って独立する。10周年ライブという節目の、fhánaの今までのワンマンライブの中でも最大級のライブをやったと思いきや、ひと段落せずにレコーディングする。12月まで駆け抜けて……っていうか、まだ走ってる途中なんですよ。fhánaの冒険の旅は、全速力で走り続けている最中なので、みんな、しっかりついてきてほしいっていう感じですね。
towana : そうですね。本当に今年はfhánaっていうバンドにとって超激動で、メジャーデビュー10周年のタイミングで、そんないろんなことがやってきて。でも、 それを経たことで「やっぱり、10年間やり続けても私がやりたいことは、音楽だし、歌を歌うことだし、それで、みんなと繋がって、ふぁなみりーのみんなと繋がっていくことだな」っていうのが、改めて確認したというか。また大きな覚悟とか決意を持って、それをやり続けていくんだっていう気持ちがさらに大きくなっています。なので、11年目もそれ以降も、 むしろもっと加速して、このバンドを動かし続けていきたいなという思いです。

編集 : 西田健
デビュー10周年イヤーを締めくくる、最新EP
ツアー情報
Beautiful Dreamer ASIA Tour 2023
■韓国公演
2024年1月6日(土)
会場:韓国 WEST BRIDGE LIVE HALL
■台湾公演
2024年1月20日(土)
会場:台湾 NUZONE 展演空間
■東京公演
2024年1月28日(日)
会場:新宿BLAZE
開場:16:00 開演:17:00
スタンディング ¥6,500(税込)
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fhána ディスコグラフィー
PROFILE:fhána
2011年、佐藤純一(key,cho)を中心に結成された、towana(Vocal)、kevin mitsunaga(Sampler,etc.)による3人組バンド。 2013年8月に「ケセラセラ」(TVアニメ『有頂天家族』ED主題歌)でメジャーデビュー。翌年には、iTunesによりブレイク確実の新人として『NEW ARTISTS 2014』の1組に選出されたほか、1stアルバム「Outside of Melancholy」はオリコンウィークリー8位を記録。 現在に至るまで16作品ものアニメで主題歌の担当を果たし、作品の世界観に寄り添いながらも豊かな音楽性を提示し続けている。また、10thシングル「⻘空のラプソディ」(TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』OP主題歌)のMVは、YouTubeにて再生回数4,877万回を突破(2023年2月現在)。 さらに最新シングル「愛のシュプリーム!」(TVアニメ『小林さんちのメイドラゴンS』OP主題歌)は 発売されるやいなや各界から絶賛され、MVの再生回数も早くも1,500万回再生を突破し、様々なアワードも受賞した。
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