ビックリさせてやろうと思ってやっていたことを忘れてんな
──“FLASH BEATS & JUMP”の作詞は全員の名前がクレジットされていますけど、作曲は愛はズボーン名義ですよね。作詞作曲の両方が愛はズボーン名義ではダメなんですか?
金城 : そこは「あ、4人なんや」って思ってもらいたくて書きました。今回、“ぼくらのために”がアルバムのコンセプトなんですけど、個人とみんなとの線引きを今どっかで考えているのかもしれないです。4人がいるから愛はズボーンですけど、金城、GIMA、白井、富永が個人でもあるっていうか。作詞は個人でいいんじゃないかなっていう意識はありますね。サウンド面は、いろんなキラーチューンのタイプを探していたなかの1つで、自分としてはいちばん光ってる1曲です。
白井 : コールド・プレイの"Viva La Vida"みたいな高揚感があったらいいなって。みたいな高揚感があったらいいなって。
金城 : "Viva La Vida"の「ジャンジャンジャンジャ~」が入ってくるだけで、「4つ打ちキター! 」みたいな、まだ入ってきてないのに4つ打ちを感じるような、広いステージが似合う曲を作ってみることを、この曲でいちばん意識しました。いままで、地下室のライヴハウスでホコリ臭くて、天井も低くて、薄暗いところで爆音が鳴ってることに正義を感じてたんですけど、また違う景色に行ったときのことも想像して曲を作ったら、こういうサウンドに自然となっていったんです。
──冒頭の、自分へ問いかけるような歌詞の書き方ってGIMAさんっぽいと思いました。
GIMA : 確かに。1番の歌詞はみんなで考えたんですけど、2番は僕が持ち帰って書いて。自分が歌う曲だし、この「幸せの形って何だっけ? 」ということを思いながらずっと過ごしていたんですけど、2番の歌詞を書くときにイメージしていたのが、自分が歌っているときに目の前にいる人を全員肯定する歌詞にしたいなということで。みんなそれぞれいろんな過程とか事情があって、ライヴハウスで僕らが演奏する目の前に来て、同じようにみんな僕たちの出す音を浴びて感じて聴いて帰っていく。そのいままでの過程であったり、その人らの人生に対して「YES」って言える歌詞、曲にしたいなと思って書きました。だから、歌ってるとグワ~っと入り込んじゃい過ぎちゃいます。それぐらい、思いの詰まった曲ですね。
金城 : 後半の歌詞は、綺麗ですもんね。美しい感じがします。
GIMA : それこそ、広いステージに似合う曲を目指して作ったし、そういう曲になったなって。でも、頭の中には〈心斎橋Pangea〉で歌ってるイメージがあったんです。ミラーボールがずっと回っていて。僕らがいろんな人に認められるようになったのって、〈心斎橋Pangea〉に出だして、目の前のお客さんとディスカッションしながらやっていってからなので。その光景がフラッシュバックして残っていたんです。
──次の“ひっくりかえす”はまた違うタイプのアッパーな曲。フランツ・フェルディナンドを彷彿とさせます。
金城 : まさにそうです。もう、僕ら世代のUKがあの感じやったので。1つぐらいはやろうやっていうのはありました。僕らの世代って、全員フランツ・フェルディナンド好きですからね。愛はズボーンにとってもオールタイムベストなバンドなので。
──前半3曲は本当にキラーチューンを連発している感じですよね。
富永 : いままでのアルバム、ミニ・アルバムに比べたら、4つ打ちが増えてますね。“FLASH BEATS & JUMP”はタイコとシンバルを全部別で録ったり。シンバルを無しにしてタイコだけを叩くというやり方に慣れてなかったので、そこはめちゃくちゃ大変でした。
金城 : シンバルをタイコ類と一緒に叩いちゃうと、マイクで拾って欲しくないシンバルの音をタイコのマイクが拾っちゃうので、テクノ的なミックスでドンッと前に出すことがちょっとむずかしくなるんです。だからトミちゃんの1曲のテイク数がめちゃめちゃ増えたんですよね。
──白井さんのベースは今回、曲ごとに音の雰囲気も違う気がしますがいかがですか。
白井 : いつもラインで自分の音を聴きながら音作りしながらやっていたんですけど、今回は試しに何曲かアンプから音を出して弾いてみたんです。全部監修してくれている金城君がベースの音を聴きながらやっていたこともあって、自分が音を変えたときに「これどうかな? 」ってすぐに訊けるというのがこれまでと全然違ったので、雰囲気が曲ごとにちょっと変えられたのかもしれないですね。
──4曲目の “I was born 10 years ago.” は “愛はズボーン” のアップデート版だと思いますが、10周年の節目もあって取り上げたのでしょうか。
金城 : 4人で作るようにしていく中で、バンドをはじめた頃にお客さんやメンバーをビックリさせてやろうと思ってやっていたことを忘れてんなと思って。もともとは、ライヴで「ボンボンズボボン愛はズボーン」っていうあの曲をやらなかったら愛はズボーンじゃないだろうと思いつつも、自分としてはそれをやるのがマンネリ化してたんです。そこに、ビックリさせてやろうっていう気持ちが乗っかって、じゃあこれもシーケンスにして完全に曲の雰囲気を変えて、だけどちゃんとみんなで歌える曲に作り直して、ライヴに持って行ったらお客さんめちゃくちゃ喜んでくれるんちゃうかな、と思って作りました。「ライフ・ワーク的な音楽を作る」という気持ちが今いちばん出てる作品かもしれないですね。
──〈ボンボンズボボン愛はズボーン〉って、お客さんもワードとして楽しんで一緒に歌ってる気がするんですけど、“ぼくらのために part 1”のサビは同じ合唱できる曲でも、もっと意味がある気がします。いま、ライヴがあまりできない分、曲自体で楽しませたいという思いもありますか?
金城 : そこはめっちゃ考えました。ちょうど、変革期ですね。音楽をちゃんと聴いてもらいたいのに、自分たちがライヴで風船撒いてたらダメだろって考えるようにもなりましたし。10年経って、だんだん恥ずかしくなってきたのはあるんですよ。そういう見掛け倒しだけで盛り上げてる風よりは、ほんまに音楽や言葉が刺さった人を増やしていきたいって変わってるかもしれないですね、いまは。
──sideA最後の曲、CDでは5曲目の“READY GO”は、作詞が金城さんとGIMAさんですね。どうやってできた曲ですか。
金城 : 完全にコロナ禍に作った曲ですね。ほんまは本録りしたかったんですけど、これは全部DTMで、ドラムとかも全部ソフトウェアの音源そのままなんです。曲自体はほぼほぼ僕がフルコーラスデモで作りました。
白井 : ベースとギターは家でラインで録りました。「これをお手本として本チャン録ろうぜ」っていうデモのつもりだったから、ギターもベースも家でゆったり弾いたすごく気の抜いたプレイが、そのまま使われています(笑)。
金城 : あとこれ、まだ誰も全然気づいてくれないんですけど、歌詞に “どれじんてえぜ” とか “27” とか過去作のオマージュがめちゃくちゃ入ってるんですよ。例えば、初期の曲 “デーモンのレモン”(『どれじんてえぜ』にも再録)に「今のぼくなら ラスボス倒せそうさ」っていう歌詞があるんですけど、今回「雑魚キャラ倒して 経験値経験値!」って歌っていたり、過去の自分との戦いっていうテーマもあるんです。
GIMA : この曲は、“READY GO”っていうテーマで曲を書こうってなって、それぞれの“READY GO”というワードに対する思いで色々案を出して歌詞を書いた気がします。
金城 : 「タイムトラベたり」っていう歌詞、これ天才やな(笑)。いままでGIMA君が作った言葉でいちばん、ズキューンって刺さりましたね。やられた~って。
GIMA : 一瞬で書いた記憶がありますね(笑)。「机の中に 想像の先に」ってドラえもんの話とかも。未来はいつでも自分のポケットとか机の中にあるっていう。
金城 : うちのマネージャーがドラえもんの大ファンなんで、「喜ぶかなあ? 」って言ってて、ドラえもんっぽい音を作ってサンプリングしたりしてたんですよ。