大きく言えば天国と対話してる、みたいな曲です
──1曲目のトラック曲とは打って変わり、2曲目"St.and night"はピアノが全面に出たウェットなサウンドですね。
Sunday:"St.and night"は簡単に言えば"夜の道"という意味で。夜の道を歩かないと自分たちが作ってきたカルチャーにはたどり着けない、と。しかし、いまはコロナ禍もあってイベントをやってお昼から夕方ぐらいまでになっていて。そもそも自分たちが作ってきたり経験してきたのは、その夜道を歩かないとたどり着けないところだった。"St.and night"は「カルチャーに向かう道」という意味を込めて書きました。
──「僕らのカルチャーは死なない」というフレーズが特徴的ですけど、このカルチャーというのはなにを指しているんですか?
Sunday:音楽としての意味もあるんですけど、音楽以外のことでもあるんですよ。例えば、僕はビーチバレーをしていたんですけど、友達と毎日海に行ってた。でも毎日海に行くだけでガソリン代もすごく使っているしお金もなくなる。そこで節約のために、七輪を持ってきてその上でなにかを焼いて食べていたんですよ。家の庭で焼いて、みんなでお酒を飲んだりしつついろんな話をする。それを1年以上やっていたんですけど、それも自分のなかではひとつのカルチャーなんですよね。海で過ごして移動して、自分たちで小っちゃいバーベキューみたいなことをして、またビーチバレーの練習に行く。あのときの感じって、まだ死んでないと思っているんですよ。それに近いことはやろうと思えば、いまでもやれるわけで。
──カルチャーを広義的な意味で捉えているわけですか?
Sunday:じゃあカルチャーってなんやねん?ってところですけど、定義としては"人がより楽しく、より等しく生きれるための糧のようになれるもの"だと思うんです。特に「こうじゃないとカルチャーじゃない」はないと思うんですけど、キャンセル・カルチャーはカルチャーじゃないかな。SNS上で糾弾したり不買運動をしたりするのは、カルチャーとは違うよなって。どっちかというと、みんなが楽しくなれるような要素も持ってるのが、すべてカルチャーと言ってもいいんじゃないかなと思ってます。
──そして3曲目"Life is so sweet"は「この世界はbeautiful beautiful」のフレーズからも分かるようにスケールが大きくて、サウンドに関してはジャズの要素もある艶っぽい曲ですね。
Sunday:まさにすごく大きい感じになっていますけど、基本的には"そのまま僕らは旅に出る"の「アイラブユーのユーはfriends」と一緒で、アイラブユーよりも大事なことがあるかもね、ということです。「好き」とか「愛してる」も大事ですけど、基本的には友達にどうなってほしい?とか、友達になにをしたいかを書いた曲ですね。
──友達に焦点を当てているのはなにかあるんですかね?
Sunday:ちょっと言いにくいんですけど、最近亡くなってしまった人たちが周りにいて。自分の周りの友達とかいま生きてる人たちが、亡くなっていった人たちにどう思ったらいいのか、どう思い続けたらいいのかを考えてるときに作った曲なんです。もう亡くなっていたとしても、自分がその人と対話してることには変わりない。というか、自分がそうすればね。現実として亡くなっている人とは喋れないんですけど、でも自分が「あの人だったらどう言うか?」とか「いまあの人が自分を見てどう思っているか?」という対話はできるんですよね。だからこそ「夢を見てさ生きよう僕ら」("Life is so sweet"歌詞)に繋がる。なので、めっちゃ大きく言えば天国と対話してる、みたいな曲です。
──平庫ワカさんの『マイ・ブロークン・マリコ』という漫画があるんですけど、主人公にとって唯一の親友が亡くなって、その子の遺骨を持って一緒に旅へ出る話なんですね。その作品のなかで「もういない人に会うのは 自分が生きているしかないんじゃないでしょうか…」というセリフがあって、いまのSundayさんの話と勝手に繋がりました。
Sunday:本当にそう。昔から自分たちの周りでも、そういう現象はありました。誰かが亡くなると、また誰かが亡くなる気がするからあえて集まるとか、自分たちが生きることで、その人もずっとそのまま……生きてはないけど、死んではない感じでいられるってことですね。「夜の光をあつめて」("Life is so sweet"歌詞)のところは、これも今回の3曲とも繋がっているんですけど、"St.and night"のような真夜の光。自分たちが楽しいとか楽しかった世界とか、いまも楽しく作っている世界を集めれば、誰かの生きる糧になるんじゃないか? ということですね。要するに自分たちが光を集められるように生きなければ、と。光って結局まず自分たちが楽しいとか、その1日をいい日だったと言えるようなことで。それを増やせば増やすほど「こんなに楽しくていいのかな?」ってことがあるじゃないですか。その不安よりかは、楽しいからこそ、楽しくない人や楽しめない人とか、大変な人を想像できると思うんですよ。「みんな楽しいのかな?」って。そういう気持ちがあれば、天国の人たちも納得してくれるかな? というね。街灯のように夜道を照らすというのは、結局自分たちが許し合って楽しく生きるみたいなことなんじゃないかな、と思っている曲です。

──なんか、今回の3曲は「生きる」というのがひとつの大きなテーマだったのかなって。
Sunday:そうですね、うん。生きるってやっぱり難しいですからね。でも、ただただ歳をとっていくわけでもないし、なんか難しいですよね。「生きててよかった」と言うのもなんかね。ほんまやったら「うわ、生きてた!」と毎朝言わないと。それぐらいすごいことだと思うんですけど、自分がそうなれるために今回の3曲を自分のために作ってるところはありますね。
──誰かを想像したわけじゃなくて、自分のために曲を書いた?
Sunday:基本的には僕が書く曲は、全部自分のためですね。自分が作って、自分で聞いて、自分で納得するために書いてる感じですね。
──Sundayさんは、四半世紀以上も曲を作り続けているじゃないですか。
Sunday:うんうん、そうやね。
──曲にしたいこと・歌いたいことって変わりました?
Sunday:これが全く変わっていなくて。例えば19歳のときにやっていたのが、ちょっとミックスチャー・ポップみたいなバンドだったんですけど、僕はベーシストで曲も作っていて、当時とラップの作り方とかもいまとまったく同じで。言葉の切り取り方も、そんなに変わっていない。だから、ワンダフルとか天才バンドでも披露している"サンセット通り"(2014)とか"Star Light Future"(2014)は10代の頃に作った曲で。あんまり変わってないというか、全然変わっていないかも。
──へえ! じゃあ、いまも作ろうと思えばあのベクトルの曲は作れるんですか?
Sunday:まあ、作れるか作れないというのは、その経験をするかどうかだけで。「この思い出を言葉にしておきたい」と思う経験があれば作れるし……というよりかは変わっていないですね、単純に。例えばラップに関しても、本当のヒップホップをしているラッパーの人とはまた違くて、ミックスチャーのなかにラップを入れていたので、僕のラップはBPM90とか95のミドルテンポに乗せるフロウじゃないんですよ。ミクスチャーなのでBPM115とか120の曲に入れるためのラップを10代の時に作っていて。それが今回の"そのまま僕らは旅に出る"で。BPM90から95ぐらいになったとしても、そんなにやり方は変わってない。大きいところだけ韻を踏むけど、それ以外はビート感とか、フロウのパターンがいっぱいあるわけでもなく、実はもっと速いBPMではめるべきラップの作り方ではあります。だから、いままで作ってきた音楽はすべて10代のときには作れるようになっていました。
──10代の時点で、音楽家・Sundayカミデは完成されていた。
Sunday:そうですね。そこからなにか新しい要素が入って、いろいろできるようになって……とかじゃなくて。その時点で全部やってることは変わらないし、あとはその時々のタイミングで曲を出してるだけっていう感じですね。本当にこのままの感じで、四半世紀以上やってきました。

編集:梶野有希
Sundayカミデの人生哲学を映したシングル
LIVE INFORMATION
Sundayカミデ LIVE TOUR〈St.and night〉
日付:9月24日(日)
場所:東京/晴れたら空に豆まいて
日付:9月27日(水)
場所:大阪/CONPASS
日付:9月30日(土)
場所:福岡/como es
日付:10月1日(日)
場所:熊本/tsukimi
日付:10月14日(土)
場所:名古屋/パラダイスカフェ21
日付:10月21日(土)
場所:仙台/SENDAI KOFFEE
日付:11月4日(土)
場所:京都/SOLE CAFE
過去記事
Sundayカミデ インタヴュー
Wonderful Orchestra Band インタヴュー
奇妙礼太郎×Sundayカミデ 対談
天才バンド レヴュー
ワンダフルボーイズ レヴュー
過去音源
Sundayカミデ
ワンダフルボーイズ
天才バンド
Wonderful Orchestra Band
PROFILE : Sundayカミデ
OSAKAUNDERGROUNDのPOPMAKERでありワンダフルボーイズのヴォーカル。 21世紀の名曲「君が誰かの彼女になりくさっても」の作詞作曲としても知られ、様々なアーティストへの楽曲提供やサウンドプロデュースも手掛ける。 また、ラジオ、トークライブ番組でのMCや自らのエピソードをまとめたエッセイ集を出すなど活動の幅は多岐に渡る。2000年、自らオーガナイズするイベント〈Love sofa〉をスタート。2023年9月、3年半ぶりとなるソロ・シングル「そのまま僕らは旅に出る」をリリース。
■公式HP:https://www.sundaykamide.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/sundaykamide