「やっといまのPolarisになったな」──Polarisの新たな魅力が凝縮された新作『走る』をリリース

数々のアーティストのプロデュースや映画音楽の制作、ソロ・プロジェクトなど、多岐に渡り活躍するオオヤユウスケと、フィッシュマンズ、So many tearsとしても活動する柏原譲によるユニット、Polarisが2年9ヶ月ぶりとなる新作ミニ・アルバム『走る』をリリースした。〈bud music〉へと移籍後初のアルバムリリースとなる今作は、Nabowaの川上優がサポート・ドラムとして参加。新曲5曲に加え、フィッシュマンズ「SEASON」のカヴァーを含めた6曲を収録し、新たなPolarisのサウンドが凝縮されている。OTOTOYでは今作を1ヶ月独占ハイレゾ配信とともに、オオヤユウスケ、柏原譲の2人へのインタヴューを掲載。今年彼らがどのような活動をし、このアルバムをリリースしたのか、話を訊いた。
2年9ヶ月ぶりの新作をハイレゾ配信!
Polaris / 走る (24bit/96kHz)
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/96kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?
【配信価格】
単曲 300円(税込) / アルバム 1,543円(税込)
【アルバム購入者特典】
『走る』歌詞カードPDF
【収録曲】
1. 微笑みながら夜は明ける
2. とどく
3. namioto
4. cyan
5. naked
6. SEASON (Fishmans)
INTERVIEW : Polaris
僕がPolarisをはじめて聴いたのは2005年の『Union』。優しいんだけど、自分の心の傷口に沁みてくるような、感傷的な気分に誘われた。はじめてライヴへ行ったのは『Polaris Pre-Tour 2005』。楽しい反面、寂しい気持ちになって「このセンチメンタルさが良いんだなぁ」なんて思っていた。あれから12年経ってリリースされた『走る』は心の傷口に沁みてくるのではなく、そっと毛布をかけてくれるような温かみがある。サウンド面はもちろん、今回のインタヴューでオオヤさんが「当時はもうちょっとピリピリしてた気がします」と語っているようにそれぞれの変化も大きいのだと思う。いまのふたりにとってPolarisとは何なのか訊いてみた。
インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 大橋祐希
原点回帰したほうが今の気分が伝わりやすいと思って

──OTOTOYのインタヴューは『Music』以来ですね。『走る』をリリースするまでの2年9ヶ月は、いろいろと変化があったかと思います。レーベルの移籍をしたことや、去年3月の〈AL×Polaris LIVE〉で「これからは3人でやっていきます」って宣言をして、4人から3人編成に変わったことも大きい変化だと思います。まずは3人編成になった理由について、お訊きできればと思います。
オオヤユウスケ(以下、オオヤ) : 2012年に6年ぶりの再始動をしたんですよ。当時はもともとのPolarisが鳴らしていたサウンドを再現することが大切だと思ってて。キーボードを入れて4人編成にしたことで「やっぱりPolarisなんだな」ってわかりやすく感じてもらおうと思いました。だからサポートとして、クラムボンのミトにベース以外の楽器を弾いてもらって。「オオヤからのリクエストじゃなかったら、この仕事断ってた」って言われました(笑)。だから『Music』はバンドを振り返りつつ、次にどう行くか模索した作品なんです。ライヴを重ねることで、段々と昔のPolarisだけじゃなくて、いまのPolarisの感覚を掴んでいって。もともとはギター、ベース、ドラムって3ピースで始めたバンドなわけだし、そこに立ち返るぐらい原点回帰したほうが、いまの気分が伝わりやすいと思って3人編成にしました。
──前作をつくってみて手応えはありました?
オオヤ : 『Music』は手応え云々っていうよりは、もういちどPolarisをはじめるための準備段階でしたね。あの作品をつくったからこそ、3ピースでやった方が良いかもとか、自分たちに合うレーベルと新しいつくり方をした方がおもしろいかなとか気づくことができたと思います。
──レーベル移籍はどのような経緯で決まったんですか。
柏原譲(以下、柏原) : バンドのキャリアが長いからこそ、上手くいってる部分と上手くいってない部分があって。それで新しい場所を求めた感じですね。
オオヤ : 『Music』をリリースしてから「新しいPolarisをつくりたい」って言ってくれる方が現れはじめたんですよ。だから、僕らだけで動いたというよりは、自然な流れで決まった感じですかね。
──移籍したことで、Nabowaのドラマーである川上優さんがライヴや今作のレコーディングにも参加することになりました。新しいエッセンスが加わったことによってバンドにどのような変化が生まれました?
柏原 : やっぱり我々に比べて年齢が若いので、僕らにない感覚を持ってる感じがします。
オオヤ : 世代だったりとか、違う土地で培ってきた感覚もありますしね。
柏原 : 違う土地?
オオヤ : そうそう。僕らは長く東京の人たちと仕事をしてるけど、彼(川上)は京都の人でしょ。土地が違うだけで同じ音を鳴らしても新鮮な感じに響いていると思います。
小林武史さんとお仕事をするなんて、思いもよらなかった
──2017年のトピックでいうと、愛知県の図書館で(岡崎市図書館交流プラザLibraでおこなった〈リゾームライヴラリーVI〉)2人だけのライヴをしましたよね。
柏原 : 2人でやったのは、はじめてだよね?
オオヤ : 1番最初に「この2人でバンドを始めます」と言って、ライヴをやって以来。Polarisって名前をつけてからは、はじめてでしたね。
──今年は挑戦をする機会が多い年だったように思います。8月はオオヤさんが初めての舞台に出演されて。きのこ帝国の佐藤千亜妃さん、Salyuさん、桐島ノドカさんと共演しましたね。
オオヤ : ミュージシャンなので、まさかお芝居をすると思ってなかったですね。はじめてのことに挑戦するのは、本当に勉強になりとてもいい経験になりました。自分の音楽にもいい影響を与えているし、本当に楽しかったですよ。

──しかも、舞台をきっかけにオオヤさんを知って、Polarisのライヴへ行くようになった方もいたとか。
オオヤ : そうなんですよ。「宮沢賢治の演技で(僕を)好きになって、ライヴを観に来ました」っていう人がいて嬉しかったですね。新しいチャレンジだったので、人からどう見えているかまで考えられなかったんですけど。きっと“はじめての初々しさ”があったんじゃないかな、と思って。
──小林さんはライヴでも共演されたことないですよね。
オオヤ : まさか僕が小林さんとお仕事をするなんて、思いもよらなかった。それもうれしかったですね。
──あとは〈GWANGJU SOUNDPARK FESTIVAL〉という韓国のフェスにも出演をしましたね。
オオヤ : 舞台が終わって、その足で行ったんですよ。
柏原 : あ、家に帰ってない?
オオヤ : 家に帰らず。本当にスケジュールが厳しくて「俺、ちょっと韓国は無理かも……」ってスタッフの方に弱音を吐くぐらいしんどくて。行ってみたらおもしろかったですけどね。
柏原 : 音楽のフェスなんだけど、カメラとかクレーンがバンバン動いてて。
オオヤ : テレビ局の音楽番組みたいな。舞台監督の人も日本のフェスで見るような舞台監督じゃなくて、短パンにグラサンをしてて…… (笑)。
柏原 : 20年くらい前の業界人風なんだよね。

──ライヴはどうでした?
オオヤ : 音も良いし、お客さんの感じも物凄くよくて。光州は新幹線で2時間くらい南下するので、海に近い地方都市なんですよ。「こんな場所に人が集まるのかな?」って正直思ったけど、若い人が多くて。予想以上に良いイベントだと思いましたよ。その後韓国からそのまま新潟のフェスに出演だったんですが、ソウルの空港で飛行機が遅れて、その時点でマネージャーやスタッフも「もしかしたら、これは間に合わない」ってみんなで大騒ぎで。出演の1時間前に最寄の駅に到着して…… あの日は壮絶でしたね。
柏原 : そのフェスが山の中でやっていて。現地の様子がわからないまま、会場入りしたよね。
オオヤ : スタッフの皆さんは僕らが大変な移動をしてるのを知っていたので、着いただけで拍手されました。二度とこう言う行程はやりたくないな、って思いましたけど……(笑)。
──オオヤさんからすると、舞台からずっと気が休まってないですね。
オオヤ : ぜんぜん休んでないですよね。
そこだけじゃないから、人生ってさ
──活躍を見ていると「今年のPolarisは忙し過ぎませんか?」って印象で。
オオヤ : 去年や一昨年までは年に2回くらいしかライヴをやっていなかったのに、ギャップがすごいですよね。移籍と同じで、またバンドを動かしていきたいって感覚があったのも大きいです。
柏原 : 暇なのは嫌だよね。
オオヤ : 曲をつくるだけだと辛いんですよ。アウトプットする場所がないので。
──今作はそんな精力的な活動の中でリリースされた作品。前作に比べてモチベーションの違いも大きいのでは?
オオヤ : ライヴのなかで培ってきた楽曲なので。あとはリハスタに入ってアレンジするとか、そこで固まってくるとか。そういうバンドらしい感じで進んでいきました。
柏原 : 制作はバンドとして理想な形で進んだよね。
──今作を作るにあたってテーマは決めてましたか。
オオヤ : そうだね。次はフル・アルバムをイメージをしているんですけど、その入り口になっているなって。やっといまのPolarisになったな、っていう感じですね。
柏原 : 新録だけじゃなくて、『SEASON』(Fishmans)ってカヴァーもやっていたりして。お披露目したい気持ちが強いですね。ライヴで演奏している曲はどれも手応えがあるので、早く聴かせたくて録音したのが正直なところです。

──『Music』のインタビューで、「今まではPolarisのイメージを優先して、このバンドだからこういう音を鳴らすとか、こういう曲をつくるって意識があったけど『Music』以降はその気持ちがなくなった」と話してましたよね。
柏原 : 昔の音はそんなに意識しないで、自分の得意なことをやった方が結果的にPolarisっぽくなるなって思ってます。
オオヤ : 充実感というと変なんだけど、ちゃんと自分たちの音が届けられる形になったな、と思いますね。キャリアの長いバンドではあるので、そういうところって難しいんですけど、ようやく足並みと気持ちが揃ったというか。
──今年は〈ポラリスト〉や〈LIQUIDROOM13周年記念公演〉を観にいかせていただきましたけど、いまのPolarisって僕が10代の頃に聴いていた『Family』や『Union』の頃と全然違う感じがしました。あの頃はもっと感傷的に聴こえてて。
オオヤ : 違うかもしれないですね。年齢的なものもあるかもしれないけど、当時はもうちょっとピリピリしてた気がします。ストイックにやりたいと思っていた気もするし。単純にいまの方が楽しいですよ。それは間違いないですね。
──いまは多幸感がある気がしてて。
オオヤ : そう言っていただけるのは嬉しいです。逆だったらどうしようって感じですけど(笑)。まあ、当時の音って重かったですよね。
柏原 : 時代感もあるかもね。ヒリヒリした感じが当時は多かったじゃないですか。やっている方もそれを続けていたら耐えられないよね。そこだけじゃないから、人生ってさ。いまはライヴをやっているのが楽しいです。
オオヤ : いまは演奏しててお客さんと共存というか、共有できている気がします。一緒に楽しむ感じになっているかもしれないね。
柏原 : それはあるよね。当時『Family』や『Union』を聴いてくれていた方って家庭や子供ができて、ライヴに来れなくなってて。確実にお客さんの層も一回りして変わって感じがしてます。聴くっていうよりも参加する感覚に近いのかもしれない。
──振り返ると2017年のPolarisは怒涛な印象でしたが、来年もこのペースで進んでいきますか?
オオヤ : スケジュールが異常に偏ってるのは大変だけど、やっと走り出しているので。それこそタイトルも『走る』ですけど。自分たちでつくった波にちゃんと乗っかりたいな、って。長くバンドが続いているから止まってしまう瞬間もあったんですけど、その辺をスタッフを含めて良いチームになってきているので。やっと動き出したなって感じですね。
過去作もチェック!
OTOTOY独占配信のライヴ音源も配信中!
過去の特集ページも
>>> 〈Polaris Tour 2015 “Music”〉@赤坂BLITZ ライヴ・レポート
>>> 『Music』リリース記念インタヴュー
LIVE SCHEDULE
〈Polaris『走る』Release One Man Tour〉
2017年12月10日(日)@名古屋 TOKUZO
時間 : OPEN 17:30 / START 18:00
2017年12月16日(土)@東京 WWW
時間 : OPEN 17:15 / START 18:00
2017年12月17日(日)@大阪 梅田 Shangri-La 1
時間 : OPEN 17:30 / START 18:00
PROFILE
Polaris (ポラリス)
オオヤユウスケと柏原譲(Fishmans/So many tears)による唯一無二のロック・バンド。
2001年にデビュー。これまでに5枚のフル・アルバムをリリース。〈フジロック〉他、数々の野外フェスに出演。
強靱なリズム隊が生み出す圧倒的なグルーヴに、透明感あふれるオオヤのボーカルが溶け合うアンサンブル、その音響的なダイナミズム感に溢れたサウンドと、日常の中の喜怒哀楽を写実的に描き出す世界観は、Polarisにしか表現できないオリジナリティ。
結成16年目を迎え、前作『Music』から2年9ヶ月振りとなる待望の新作『走る』を11月22日にリリース。
公式HP : http://www.polaris-web.com/
公式ツイッターはこちらhttps://twitter.com/polarisjp