彼らを魅了したロック・ミュージックの魅力とは──DYGL、待望の1stフル・アルバムをリリース

昨年4月にEP『Don't Know Where It Is』をリリースし、衝撃的なデビューを果たしたDYGL。ついに! 待望の! 1stフル・アルバム『Say Goodbye to Memory Den』をリリース! 今作は、The StrokesのギタリストAlbert Hammond Jr.、そしてThe Strokesの『Angles』以降の作品にプロデューサーとして関わるGus Obergの2人をプロデューサーに迎えた意欲作となっている。OTOTOYではメンバー4人にインタヴュー。彼らが何を考え、どのようにロック・ミュージックと向き合っているのか語ってくれた。今年度最注目アルバムと言っても過言ではない『Don't Know Where It Is』、チェック必須です!
待望の1stフル・アルバムを配信中!
DYGL / Say Goodbye to Memory Den
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/88.2kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?
【配信価格】
単曲 540円(税込) / アルバム 3,200円(税込)
【収録曲】
1. Come Together
2. Crazy
3. Let It Sway
4. Take It Away
5. Thousand Miles
6. Boys On TV
7. Don't Know Where It Is
8. Let It Out
9. Feel the Way
10. All I Want
11. Happy Life
12. A Matter of Time
13. Waste of Time
14. I've Got to Say It's True
DYGL/Let It OutDYGL/Let It Out
INTERVIEW : DYGL
DYGLの音源を初めて聴いた時、とにかく興奮した。それだけ、楽曲の中に20代のバンドとは思えないくらい音楽の情報量が多いし、ただ海外のサウンドをトレースしたのではなくて、しっかりと自分たちのロックとして昇華しているから…… というか、シンプルにカッコ良かった! 去年リリースされた全国流通盤EP『Don't Know Where It Is』は音楽関係者からの評価が高く、多くのメディアで注目された。そんなDYGLが4月19日に待望の1stアルバムをリリース。新譜についての感想はもちろんのこと、彼らが思う“ロック”とは何なのか訊いてみた。
インタヴュー&文 : 真貝聡
DYGLがどんなサウンドなのか考える機会が必要だった

──『Say Goodbye to Memory Den』リリースおめでとうございます! 何度も聴いてます!
Nobuki Akiyama (以下Akiyama) : ありがとうございます。
──早速なんですが、去年末にYkiki Beatが活動休止すると知って驚きました。あれは、DYGLの活動に専念したいって気持ちがあったから?
Akiyama : いえ、それぞれ別のバンドとしてとらえていたので、DYGLの活動が影響したことはないですね。続けられる可能性も模索していました。
──何が原因だったんですか?
Akiyama : 創りたいもののビジョンが合致していれば、続けていたかもしれません。ただあの当時、それぞれのメンバーがやりたいことや、目指しているビジョンなどを共有しきれなくなったことが大きかったと思います。無理に続けることもできたかもしれませんが、あのタイミングで終止符を打つというのもバンドにとって必要な決断では無いかと思い、メンバーで話し合って決めました。もちろん相当話し合いましたし簡単な決断ではありませんでしたが。
──じゃあ、円満に休止したと。
Akiyama : そう思います。
──では、1stアルバムについてお聞きしますね。いつからつくろうと思ってたんですか?
Akiyama : 出来るだけ早く録りたいと思っていたのですが、どの曲をアルバムに入れるか結構悩んで。
──なるほど。
Akiyama : 元々は3人でバンドを始めて、現在の4人体制になるまでに音楽的にも色々な変遷があったので、1stアルバムで何をしたいかがあまり定まっていなかったんです。そもそもDYGLがどんなサウンドなのか、考える機会が必要でした。その問題がまとまってからアルバムを出したいという思いがあったので、時間はだいぶかかりましたね。シングル(『Waste f Time』)を出したのはいつだっけ?
Yosuke Shimonaka(以下、Shimonaka) : リリースは去年の12月だったね。レコーディング自体は夏頃かな。
Akiyama : あの頃にはもうアルバムを作る話もしてたかな。
Kohei Kamoto : エンジニアをどうするかって話はあったね。メンバー内で「海外のエンジニアはどう?」みたいな案があって。

Akiyama : 何年か前に偶然下北沢のライブハウスで知り合ったオーストラリア人のエンジニアでAaron Dobosという方がいて。彼が日本に来るタイミングで、よかったら仕事したいっていうオファーをくれたのがきっかけで『Waste of Time』をレコーディングすることができたんです。アルバムのエンジニアも、自分たちのサウンドを理解してくれる人とやりたいという話は当時してた気がしますね。
バンドの流れとしてはEPを出して、シングルを出して、そろそろアルバムを出したいと思いはじめていた時期だった気がする…… からあの前後でアルバムの話はしてただろうね。
──アルバムには、いつ頃からの楽曲が入っているんですか?
Akiyama : 既にライブでやっていた曲もありますが、半分以上新曲なのでモードとしてはだいぶ新しい印象です。「Don't Know Where It Is」や「Let It Sway」はEPにも入っているし、その辺はわりと昔からライヴでやっていて。「All I Want」は僕らが学生だった頃からありました。
──KachiさんはDYGL加入前にお客さんとして、「All I Want」を聴いていたんですよね。
Yotaro Kachi(以下、Kachi) : 当時は「All The Time」という曲名だったのですが、僕は客として聴いてましたね。2014年頃だったと思います。

──お客さんとして聴いていた曲を、録音するって感慨深かったりします?
Kachi : 入ってからもう長いので、感慨深いみたいな感じは特に……(笑)。
Akiyama : 新しい曲でいうと「Let It Out」とか「A Matter of Time」はNYでレコーディングの準備をしながら出来上がった曲なので、それはライヴでも新鮮な気持ちで演奏してますね。
良さげなものは沢山あるんですけど、本当に良いものって少ない
──The StrokesのAlbert Hammond Jr.とGus Obergがプロデュースを務めることになったのは、どんな経緯が?
Akiyama : まず第1に曲のイメージをわかってくれる人と仕事をしたいと思ったんです。日本のエンジニアで腕がある人は沢山いると思うんですけど、僕らと音楽的な言語が合う人を考えた時に、そこを共有できることが大事だと感じて。まずは基本に立ち返って、自分たちが好きな作品を作っている人をリストアップして確認していきました。
──その候補の中にGus Obergがいたと。
Akiyama : そうですね。ただ僕らの間で、どのエンジニアにオファーしようかという話をしている時に、知り合い経由でAlbertとGusの2人も日本のバンドをプロデュースしたいと思っているという話をもらって。試しに音源を渡してみたら気に入ってもらえたのですが、元々はプロデューサーはつけずにエンジニアだけ探して、あとはセルフ・プロデュースでやりたいと考えていたので、これが正しい選択なのかバンド内で結構悩みました。Albertの作品もGusが関わっている作品も素晴らしいし、最終的にこれも縁だと信じて今回このチームと働くことを決めました。
──Shimonakaさんはインタビューで「(1stアルバムは)ボディブローを決められるアルバムになったらいい」と話してましたけど、ボディブローって?
Shimonaka : なんて言ったら良いんだろう…… ボディブローって言葉が僕にとって1番しっくりきたんですよね。横山健さんが「ギターを弾くのはスケートボードの感覚と似てる」って言っていたというのを最近友達から聞いたのですが、それは凄く分かるなって。サーフィンとかの大きな波を乗りこなすスリリングかつ豪快な瞬間を見ている感覚に近いです。
そういった“ギリギリの緊張感”を乗りこなしているアーティストを見ると腹の底から湧き上がるものがあるので、自分たちの作品もそういう快感を含んだアルバムにしたいとかそういったことは常々考えています。
──わかるような、わからないような……(笑)。話を聞く前は、ジワジワとダメージが効いてくる感じをボディブローって例えたのかと思ってました。スルメなアルバムって意味ではないんですね。
Shimonaka : 僕が言いたいのは、もっと直感的なことですね。

Akiyama : いまは音楽が簡単につくれる時代になっているから、コレをやったら何となくカッコイイっていう曲が氾濫しているように感じてて。良さげなものは沢山あるのですが、本当に良いものって少ないと思うんですよ。だからこそ、「これが自分たちのやりたいこと」っていう芯を持った音楽を聴くと、ワクワクしますね。
Shimonaka : 基本的には音楽を聴いたりライブを見たりするときにはこちらも身構えて鑑賞しているんですけど、それでもいいアーティストの作品やライブは不意に体に入ってくることがあるので、自分の想像を超えてくる快感といった意味合いもありますね。
──The SuzanのRieさんが「海外のモノをまんまパクってるようなバンドが多い中で、DYGLは世界の音を自分たちなりに噛み砕いてから、アウトプットしようっていう姿勢が凄い」なんて言ってました。
Akiyama : 知らなかった、それは嬉しいですね。
──言葉の通り、DYGLは海外のカルチャーをただ真似るんじゃなくて、ちゃんと自分達の音として表現しているのが魅力ですよね。
Akiyama : ありがとうございます。他人のバンドと比較はできませんが、見ているなかでおもしろいバンドとそうでないバンドとでは、やっぱり自分がやっていることを理解しているかどうかで結構違う気がします。借り物のオシャレとか良さげなものを集めているだけのものは、その場ではおもしろくても心に響かない。むしろ今風でも今風じゃなくても、その人の内面から生まれた作品には価値があると思います。
自分がなんでそれを表現しているのか、明確な意思があって表現されている作品は音にも言葉にも表れていると思います。そのうえで、自分が好きな作品の音や言葉をきちんと噛み砕いて自分のものにすることは、ものをつくる上で大切な過程だと思うんです。それは本当に時間がかかる。海外っぽいとか邦楽っぽいとかの話は短絡的すぎると思いますが、そのサウンドの意味を、時間をかけて理解することは大切な気がします。その場限りのオシャレではなくて。その上で、何より作品として深みのあるものをつくっていけたら良いですね。
Shimonaka : 自分に基準がないと難しいですよね。
誰かが何かを考えるきっかけを与えるものであったら良いな
──DYGLが音楽で表現したいことって何でしょうか?
Akiyama : 喜怒哀楽が入っているものが良いですね。実際に生きていれば嬉しいことも辛いこともあるわけですし、そういう人生の側面が満遍なく感じられる作品になったら嬉しいです。もちろん曲によってテーマはありますが、ただ単調にテーマが表現されているだけでなく、その背後に色々なカラーや雰囲気を包括しているような深みのある曲を作りたい。同じ感情でも状況によって色々な表情があるのと同じで、悲しい中にも希望があったり、感情がカラフルに織り合わさっていたりするものが良い音楽だと思ってます。

──織り合わさってるという意味では「Crazy」のライナーノーツに「ポジティヴなことを歌うにしても、悪い事からただ目を背けてあっけらかんとした曲をつくってもあまりリアルじゃ無い」って書いてましたね。
Akiyama : そうですね。悲しみがあるならそれを無視したくはない。ただそのうえで自分がどういう態度でその悲しみと向き合うのかを考えると、やはりポジティヴな態度でありたいなと。悲しみも辛さも受け入れる、でもその感情に溺れてしまわず、そこから前を向く気持ちを持っていたい。
それは「Crazy」に限らず「Come Together」でも同じテーマかもしれません。まずは受け入れて、そこから何を選ぶのかは自分で決める、その姿勢はどの曲にも共通してあるのかもしれません。
──Akiyamaさんは洋楽に対する知識だけじゃなくて、荒井由実やはっぴいえんどなど、邦楽も深く掘り下げて聴いてますよね。ちなみに日本語詞の魅力って何だと思いますか?
Akiyama : 日本語ってそもそもミニマルな言語だと思います。余白を残すことができるし、1つの単語で色々と想像させることができる。それは日本語詞の良さだと思います。
──いかに最小限の言葉で、曲の世界観を表現できるかってこと?
Akiyama : そうです。あとは、答えを1つに絞りすぎていない詞も好きです。尾崎放哉の「咳をしても一人」って有名な俳句がありますが、一見「だから何?」って感じですけど、人によって見え方が全く変わるからおもしろいですよね。
逆に答えを言いすぎる曲は、邦楽でも洋楽でもあまり好きじゃない。特に日本語はそれができる言語だから、なおさら使いまわされた言葉とか、「あなたが好きです」を「あなたが好きです」としか歌っていない歌詞とか、なかなか共感できないですね。もちろんその言葉でしかもう言えない、というところでシンプルにそのままを言うのは素敵だと思いますが。あと奇をてらい過ぎていたり、変にドロドロしい歌詞も好きじゃないですね。

──逆にDYGLが影響を受けてきた、ロックの魅力ってなんだと思いますか?
Akiyama : 興奮と喜びだと思います。悲しさも怒りもきちんと理解して、それを音楽としてエネルギーに変換する力というか。悲しいだけの世界が広がってるわけじゃなくて、きちんと楽しさも存在する。ザ・フーのピート・タウンゼントの「ロックは君の悩みは解決しない。悩んだまま躍らせるのだ」って言葉がすごい好きで。じゃあそれは現実逃避なのかと言えば、それはそれで違うと思って。悩んだまま踊ることも大事で、踊り終わった後に世界が違って見えるかもしれないですし。そういう意味でロックは、何かきっかけになるものを与えてくれるものだと思うし、俺はそういう風に聴いてきました。
──受け入れた上で、どんなアクションを起こすか。
Akiyama : 自分の音楽も何となく消費されるものじゃなく、誰かが何かを考えるきっかけを与えるものであったら良いなと思います。それでも、まずは何よりシンプルに楽しんでくれたら嬉しいですね。
RECOMMEND
The Strokes / Future Present Past
DYGL『Say Goodbye to Memory Den』にもプロデューサーとして参加しているGus Obergをプロデュースに迎えたThe Strokesの4曲入りEP。
神戸の4人組インディーロック・バンド The fin.のミニ・アルバム。チルウェーヴ、シンセポップ、エレクトロニカ色を強く出した新曲など5曲を収録しています。
関西を拠点に活動する4人組バンド、Seussのデビュー・ミニ・アルバム。匂い立つような色気を携えたヴォーカル、オールディーズ・マナーをずば抜けたセンスで消化したサウンドとなっています。
LIVE SCHEDULE
〈Say Goodbye to Memory Den Release Tour〉
2017年5月13日(土)@大阪府 Shangri-La
2017年5月14日(日)@東京都 WWW X
2017年5月15日(月)@東京都 WWW X(※追加公演)
2017年5月17日(水)@台湾 台北 THE WALL
2017年5月18日(木)@台湾 高雄市 高雄LIVEWARE HOUSE
2017年5月20日(土)@香港(※会場は後日発表)
2017年5月21日(日)@タイ バンコク Rockademy Thailand
2017年5月23日(火)@マレーシア クアラルンプール Live Fact
2017年5月24日(水)@インドネシア ジャカルタ(※会場は後日発表)
2017年5月26日(金)@韓国 ソウル(※会場は後日発表)
2017年6月8日(木)@新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2017年6月9日(金)@石川県 vanvanV4
2017年6月10日(土)@愛知県 池下CLUB UPSET
2017年6月17日(土)@長崎県 Studio Do!
2017年6月18日(日)@福岡県 INSA
2017年6月20日(火)@熊本県 NAVARO
2017年6月21日(水)@香川県 高松TOONICE
2017年6月22日(木)@愛媛県 Double-u studio
2017年6月23日(金)@広島県 HIROSHIMA 4.14
2017年6月24日(土)@岡山県 PEPPERLAND
2017年7月6日(木)@京都府 京都MOJO
2017年7月7日(金)@兵庫県 神戸VARIT.
2017年7月17日(月・祝)@埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
2017年7月30日(日)@FUJI ROCK FESTIVAL '17
2017年8月11日(金・祝)@中国 上海 MAO Livehouse
2017年8月12日(土)@中国 北京 YugongYishan
2017年8月13日(日)@中国 成都市 Little Bar Space
2017年8月15日(火)@中国 西安市 Midie Livehouse
2017年8月17日(木)@中国 武漢市 VOX LIVEHOUSE
2017年9月6日(水)@岩手県 the five morioka
2017年9月7日(木)@宮城県 enn 2nd
2017年9月8日(金)@福島県 郡山 CLUB #9
2017年9月10日(日)@北海道 DUCE SAPPORO
2017年9月29日(金)@長野県 ALECX
PROFILE
DYGL
DYGL(デイグロー)は2012年結成、Nobuki Akiyama(Vo,Gt)、Yosuke Shimonaka(Gt.)、Yotaro Kachi(Ba.)、Kohei Kamoto(Dr.)の4人組バンド。
日本とアメリカを行き来しながら活動し、結成5年にしてついに待望の1stフル・アルバム『Say Goodbye to Memory Den』を2017年4月19日にリリース。
今後、FUJI ROCK FESTIVAL'17への出演も決定しているなか、5月から日本、台湾、香港、韓国、マレーシア、インドネシア、中国を含む"Say Goodbye to Memory Den Release Tour"が開催される。